徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:エラリイ・クイーン著、青田勝訳『災厄の町』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

2019年04月28日 | 書評ー小説:作者カ行

『災厄の町』(原題:Calamity Town、1941)は架空の田舎町ライツヴィルを舞台としたライツヴィルシリーズの第1弾で、町の設立者の子孫であるライト家で起こるスキャンダルと殺人事件を扱います。結婚直前に失踪して3年して、突然戻ってきたジム・ハイトと、許婚のライト家次女のノーラは何事もなかったように結婚。しかし、ハネムーンから帰ってきて、鉄道駅留めになっていた荷物を整理していた際にジムの筆跡で殺人計画の詳述された手紙が発見され、ノーラは卒倒。やがて、ジムの妹ローズマリーがライツヴィルに来て、ジムとノーラの家に住み着き、ジムは酔っぱらってやたらと金をせびるようになり、夫婦関係がぎすぎすしだします。そして1941年を迎える元旦のパーティのさなかにノーラからカクテルのグラスを奪って飲み干したローズマリーが死亡し、ノーラもヒ素中毒で倒れてしまいます。カクテルを作り、みんなに配ったのはジムだったので、ノーラの相続財産を狙っていた動機も推定されるので、ジムは殺人犯として起訴されますが、黙秘を続けます。

ノーラは早産した後に亡くなり、彼女の葬式の時に出席を許されたジムが逃亡を図り、奪った車で事故死。関係者がすべて死んだ後に、ライト家の泊り客だったエラリイ・クイーンがライト家の末娘パットと彼女の恋人で検察官としてジムを追い詰めたカーター・ブラッドフォードに真相を明かします。その真相とは公にせずに墓場まで持って行った方がいい類のものでした。

この作品は鮮やかな探偵の推理力よりも人間ドラマの方に重点が置かれているミステリーなので、悲劇シリーズの延長のような感覚で読むと期待外れになりますね。

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