徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『ギリシャ棺の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

2019年04月29日 | 書評ー小説:作者カ行

処女作『ローマ帽子の秘密』に始まる国名シリーズの第4弾『ギリシャ棺の秘密』(1932)は、文藝春と秋の2012年版『東西ミステリーベスト100』の23位にランクインしている評価の高い推理小説で、フレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニングトン・リーが最も脂の乗っていた時期に書かれた作品です。1932年にはこの作品のほか、『エジプト十字架の秘密』とバーナビー・ロス名義で『Xの悲劇』および『Yの悲劇』が発表されています。

さて、この『ギリシャ棺の秘密』は盲目の老富豪ハルキスの死から始まります。ハルキス氏の埋葬式が終わって参列者が教区教会からハルキス邸に揃って戻った後、保管済みの遺言状が消失していることを顧問弁護士が発見し、警察を呼んでの捜索も空しく何の手掛りも得られなかった。大学出たてのエラリイがハルキスの棺の発掘を主張したが、そこから出たのは遺書ではなく、第二の死体だった!緻密な推理が二転三転し、謎の犯人との息づまる頭脳戦が展開します。

この事件で、偽装された証拠によって組み立てた推理を得意げに開陳して恥をかいた若きエラリイは、それ以来どんな推理も確信が得られるまで他人に知らせない誓いを立てることになります。

この作品の醍醐味はやはり謎の犯人との騙し合いの頭脳戦ですね。素晴らしいエンターテイメントで、満足の行く面白さでした。

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国名シリーズ

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悲劇シリーズ

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