徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:エラリイ・クリーン著、大庭忠男 訳、『スペイン岬の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

2019年08月12日 | 書評ー小説:作者カ行

『スペイン岬の秘密』(1935)は国名シリーズの第9弾。舞台は大富豪ウォルター・ゴッドフリー氏が所有する大西洋に突き出したスペイン岬。主人の妻であるステラ・ゴッドフリーに招かれた客の一人として滞在していた悪名高きジゴロのジョン・マーコが屋夜中に敷のテラスで殺され、帽子とマントと杖以外は裸で発見されます。

エラリイ・クリーンは親しい引退したマクリン判事の誘いでスペイン岬にある貸別荘に向かい、現地に着いた早々縛り上げられた若い女性を別荘の中で発見することになります。彼女はゴッドフリーの娘のローザで、前夜に叔父のでしたデーヴィッド・クマーと散歩中に誘拐されていたのでした。叔父はジョン・マーコと間違われて誘拐者キャプテン・キッドにモーターボートで連れ去られてしまい、そのまま行方知れずになります。

休暇先でこのような事件に遭遇してしまったエラリイ・クリーンとマクリン判事は休暇どころではなくなり、ゴッドフリー家に滞在して現地の警察・モーリ警視に協力することになります。

なぜマーコはマントと帽子を除いて裸だったのか、犯人はなぜ彼の服や靴など一式を持ち去る必要があったのか。この問いが事件を解くカギとなります。

マーコはかなりの悪党で女性関係を多数持っていただけでなくその女性たちを恐喝していたらしいので、殺人の動機は怨恨と考えられるという意味では割と普通の殺人事件と言えるかもしれません。『チャイナオレンジの秘密』の時のような大掛かりな仕掛けが使われたわけでなく単純な針金による絞殺なので、トリック解明のようなものはなく、関係者らのウソを暴き、真の関係性を追究する方に主眼が置かれています。凝り過ぎたトリックはいまいち理解できないことが多いので、このような人間関係の絡みやウソの解明がメインの推理小説の方が私の好みです。

 

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