徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:島田荘司著、『斜め屋敷の犯罪 改訂完全版』(講談社文庫)

2018年09月23日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『斜め屋敷の犯罪』は御手洗シリーズの第2作目。北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館、通称「斜め屋敷」で開かれたクリスマスパーティ。招待されたお客の運転手がその日の夜に殺されます。密室殺人で、被害者はなぜかベッドの端に右手をひもで縛られており、妙に体をひねって万歳しているような体勢で発見されます。雪の上に足跡は残されておらず、なぜか屋敷の主人のコレクションの1つであるゴーレムと言う人形がバラバラにされて雪の上に落ちていました。その日から警察官が屋敷に泊まり込んだにもかかわらず、第2の殺人事件が起こってしまいます。第2の事件はさらに頑丈な密室となり、刑事たちは何か細工はないかと必死に屋敷内を調査しますが徒労に終わり、途方に暮れていると、東京から中村という刑事(『火刑都市』で出てきた刑事さんですね)の推薦で現場に送り込まれた御手洗潔が事件のトリックを解決し、犯人が自白せざるを得ないような状況に持ち込む、と言うのが大まかなストーリーです。

御手洗が現場に到着して、「犯人はこのゴーレムだ!」と人形に服を着せたりし出す突拍子もない登場の仕方にかなり面喰いました。付き添いで来た石岡君は御手洗の行動の意図などさっぱりわからないという蚊帳の外状態で、ある意味気の毒な気がしないでもないですが。。。

動機の線から言うと犯人らしき人は屋敷の中にい合わせている人間の中には全くいないように見え、特に3件目の殺人(未遂)では怪しいと思われていた各室の20センチ四方の通気口が塞がれたばかりのところで起こり、またそれが、被害者を除く全員が一か所に集まっている時に起きたために余計に混乱を深めます。3人目の犠牲者は病院で亡くなります。

身動きの取れない屋敷の中で次々と起こる殺人事件と言う設定は、閉ざされた雪山の山荘的な、または『そして誰もいなくなった』的な展開に通じるものがあります。

犯人の目星もおおよそつきましたし、傾いて建てられた家自体に何か意味があるのだろうと見当はつきましたが、具体的なトリックまでは分かりませんでしたし、動機の方は自白でしか分からない類のものでした。御手洗の素っ頓狂なふるまいにかなり攪乱された感じはしますが、謎解きは、なるほどと納得はしたものの、『占星術殺人事件』ほどの衝撃はなかったです。

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