みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

読書記録2006-21

2006-08-16 | book
47「踊るナマズ」高瀬ちひろ 充実度★★★★☆
デビュー作ということだが、すごくしっかりした文体で、貫禄がある。
書き出しもすばらしい。
おなかにいる胎児に向かって語りかけるという形で、
自分が14歳のころに聞いたナマズ伝説について描かれている。
水口さんという男性が語るナマズ伝説が途切れ途切れに入っていて、
それを読みたくてどんどんページをめくった。
高瀬さんは本当に文章が整っている。
気になっている男の子に、剣道の胴衣を後ろから着せてもらうところ、
緊張感とドキドキがよく伝わってきた。
ただ、ちょっと残念だったのが、最後までいくと
「なんで胎児にこの話をしたんだ?」という疑問が残ること。
理由はなんとなく書いてあるんだけど説得力がないというか、こじつけっぽい。
あれーっ、これって結局性教育の話だったの??と、肩すかしな気にも。
もう一作「上海テレイド」という作品が入っていたのだが、
(デビュー作だけでは原稿のボリュームが足りなくて、本にするために2週間で書いたらしい)
これも性のモチーフが色濃い。そして、「純情な男の子の恋心をからかって楽しむ」
という場面が「踊るナマズ」にも「上海テレイド」にも出てきて、
せっかくならもうちょっと違うタイプの女の人について読みたかった。
もっといろんなことが書ける人だと思うので、以降に期待したい。

48「太宰治の女房」芦田晋作 充実度★★★★☆
おもしろかった!
自費出版っぽい感じの本なのだが(違ったらごめんなさい)読みやすくてすいすい進んだ。
太宰治の妻、石原美知子よりに書かれた本。
ちょっと前に、太宰治と彼を取り巻く女性たちのドラマがやっていて、
そのときの主演が豊川悦司、妻美知子が寺島しのぶだった。
私のいけないクセなのかもしれないが、読んでいてどうしても太宰がトヨエツに……。
そして美知子が寺島しのぶに……。
ついでに浮気相手の静子は菅野美穂に……。
でもそう思い浮かべながら読むと、ますますおもしろかった。
美知子はいわゆる「糟糠の妻」。
苦労に苦労を重ねて、太宰治を作家として成功させたひとだけど、
太宰は外に女を作り、子供まで作り、またぜんぜん別の女と心中してしまう。
この手の男がすごいなあと思うのは、複数の女の影をあかるみにしながも、
関係している女全員に「でも私が一番なんでしょ」と思わせてしまうところだ。
客観的に見れば蹴飛ばしたくなるくらい頭にくる男だが、
こういうダメ男に尽くしてしまう女の気持ちもわからなくもない……。
美知子は平成9年に心不全で亡くなっているが、平成9年っていうと
けっこう最近だよね。夫としても作家としても愛しぬいた太宰治の作品が、
あちこちの高校で課題図書になったり、試験問題になったりしているこの時代を、
どんな気持ちで見ていたのかな、と思った。

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