みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

読書記録

2012-10-08 | book

「さがしもの」角田光代
「この本が、世界に存在することに」を改題して文庫化されたもの。
読み終えたときに最初に思ったのが「どうして改題してしまったのだろう?」ということ。
9話から成る短編集だが、どの作品も、このタイトルがばっちりとハマる。
表題作の「さがしもの」と、「ミツザワ書店」がとてもよかった。
図書館で借りた本だけど、これはあらためて購入しようかなと思う。
しかし最後にエッセイがついていて、私はどうしてもエッセイの角田さんが
好きになれないと再認識する。
小説はこんなにおもしろいと思うのになんでだろう? 不思議だなあ。


「ドラママチ」角田光代
続いてまた角田光代。
おもしろかった。特に、表題作の「ドラママチ」には
圧倒的なリアル感があって、ラストで思いがけず涙した。(感動して)
まさか泣くような話ではないと思っていたのでびっくりした。
これも私の好きな短編集。
あー、角田さんのこんな小説、ずっと読み続けたい。
たくさん書いてください。


「株式会社家族」山田かおり
ファッションブランド「QFD」のデザイナー、山田かおりさんのブログを集めたものだが、
山田さん、デザイナーなのにこんなに文章がうまくてすごい。
幼いころからの日常、家族について、周囲のおかしな人たちについて
たんたんと、でもどこか鋭い観察眼で描かれている。
思わずぷっと笑ってしまうものが多い中、亀を助けるお母さんの話は泣けた。
イラストレーターをしている妹の山田まきさんのイラストも相乗効果で、
編集サイドの「作り手の愛情」が感じられる。すごくいい本だと思う。


「すべて真夜中の恋人たち」川上未映子
ゆるやかに物語は始まっていき、なんだかちょっとたいくつだな、と思った頃に
深みが帯びて、心をとらわれて、じんわりとしあわせな気持ちになったあと、
がたんとさびしくなった。読み終わってからも、なんだかずっとさびしい。
ラストのラストは、たぶん、ポジティブな終わり方なんだと思うけれど、
うーん、やっぱりさびしい。いろいろ考えたらまたさらにさびしい。
私は川上未映子さんのエッセイが好きで好きで、たぶん本人のことが好きなんだと思う。
でも私、彼女の描く小説はダメかも…。
ダメというのは、「つまらない」ということでは決してなく、悲しくなっちゃうのだ。
川上さんはとても才能のある作家だと思う。
こんな小説が書ける人は現代にはほとんどいないと思う。
でも私はやっぱり、角田さんとは真逆で、エッセイの川上さんが好き。


「アムリタ」吉本ばなな
事情があって20年ぶりに再読。
内容をまったく覚えていなかったことに驚き(笑)。
当時の本好きの女の子たちにとって、吉本ばななは「通過儀礼」だったんだなと思う。
彼女の作品はあるときまでほとんど買って揃えていたが、
「バナタイム」(2002年)を最後に、私は「よしもとばなな」を読まなくなった。
「アムリタ」を読んで、なつかしい先輩に会ったみたいな気持ち。
でも、たぶんもう私がこの本を開くことはないだろう。
再読の機会を与えてくださったKさんに感謝。



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