みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

主の答えとは

2007-01-18 | totsuka
私の住んでいる街で、たまに、ある男性を見かけることがあった。

髪の毛が腰あたりまで長くて、素足にくたびれたサンダルを履いている。
いわゆる「ホームレス」だと思われたが、
なんだかよくわからない、畏怖の念のようなものを抱かせる人なのだ。

最初、彼に会った時はどきりとした。
道の暗がりで立っていて、何か小さなものを片手に持ち、うつむいていた。
一見、携帯電話でメールを打っているふうだったけど、
いまどきの携帯電話にしてはちょっとサイズが大きい。
一心不乱に、それをピコピコやっている。
怖かったので、その道を通らずに遠回りした。

それから何度か彼に遭遇したが、いつ見ても彼は何かを片手にピコピコやっている。
私はひそかに「戸塚の主(ぬし)」と名づけていた。
そんな折、出産前だったK子と義兄と3人でいたときに
カラオケボックスの脇で見かけた。
私が義兄に「彼はいつも何かピコピコやっている」という話をしたら、
義兄がこっそりと見に行ってくれた。
結果、主が持っていたのは携帯電話ではなく、計算機らしいと判明。

冬に入るころから、主を見なくなった。
どこでどうしているのだろう。
いったい何の計算をしていたのかなあ、と今でも不思議に思う。
そして、実は誰だったんだろう、とちょっと疑問に感じる今日このごろだ。
ホームレスのふりをした、なにやらすごい力を持った人だったのかもしれない。