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ジェフリー・ディーヴァー『ブラック・スクリーム』その22

2021-12-16 11:38:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

 ルイージ・プロコピオ、この仕事では“ジャンニ”の名で通っている男は、プレビシート広場の片隅に駐めた車にもたれていた。(中略)
 プロコピオは、ここカンパニア州の南に位置するカラブリア州のカタンツァーロの出身だ。
 カラブリア州は(中略)保存食が豊富だ。(中略)
 ターゲットは、言うまでもなく、ルイージ。プロコピオだ。
 より正確には、ついさっきイブラヒムとの回線との通話に使用した携帯電話だ。(中略)国家警察の若い警察官が一人、くず入れを慎重に調べ(中略)携帯電話を発見して、高く掲げた。(中略)がっかりしたのは確かだ。(中略)
 プロコピオは煙草をもみ消した。(中略)

 通りは色であふれていた。(中略)
 しかしファティマ・ジャブリルにそれを楽しむ余裕はなかった。
 頭にあるのは任務のことだけだ。(中略)
 ファティマはバックパックのストラップをしっかりとかけ直して、また歩き出した。ゆっくり進む。
 人が多いから。
 人を殺したくないから。
 ベビーカーに爆弾を隠しているから。(中略)
 何週間か前のある日……
 トリポリの通りを歩いていると(中略)二人に腕をつかまれ、路地に引きこまれた。(中略)
 一時間後(中略)陰気な表情をした四十歳くらいの髭面の男が入ってきた。男はイブラヒムと名乗った。(中略)
 男は甲高い声で言った。(中略)「(中略)ある任務のためにお前をスカウトする。(中略)お前にはターゲットを割り当てる。お前は、攻撃の実行役を務めることになる。(中略)お前には、チュニジアとリビアに家族がいるな。(中略)我々が与える任務を遂行すれば━━(中略)家族はこれからも無事だろう。だが、やらなければ、六歳のモハメドから母親まで━━友人のソーニャの腕にすがって市場から帰宅する母親まで━━家族の命はないと思え(中略)この仕事を無事に終えたら、お前に━━お前の夫と娘にも━━新しい身分と多額の金を与える。イギリスかオランダのパスポートを持って、世界のどこでも好きなところへ移住するがいい。さあ、どうする?」(中略)「やります」ファティマは泣きながら言った。(中略)

 ナポリ王宮につながる手がかりは、おとりだった。ジャンニがトリポリのカフェに電話をかけたのは、警察の捜査がどこまで進んでいるか、(中略)それを探るためだったに違いない。(中略)
 マッケンジーは言った。「突破口が見つかったわ。またフォートミードからの電話だったの。さっきファティマの電話番号を伝えたでしょう。即座にNOIと自動照合したそうよ。NOIというのは、要注意電話番号リストとのこと。スーパーコンピューターを使った照合の結果、数日前の通話が抽出された。リビアとナポリのあいだの通話で、その二つの地名は少し前から要注意リストに登録されていたの。ボットは“ターゲット”というキーワードを聞いて、その通話を録音した。(中略)いま音声ファイルを送ってもらってる」(中略)
 スピーカーから音が流れ始めた。(中略)「俺は……」(中略)「いまナポリにいる。ターゲットが見える。理想的だよ。いまは人が少ないがな」
 またノイズが入った。スクーターのエンジン音。怒鳴り声。誰かを呼ぶ大きな声。(中略)「……いまはあまり人がいない。しかし月曜日には大勢が集まるだろう。見物人と記者連中も集まる。実行は1400時ちょうどだ。(中略)」
 ライムのとなりでスピロがささやいた。「いまから90分後だぞ。まいったな(クリスト)」
「手順を入ってみろ」ジャンニが言った。
「ちゃんと覚えてますから」
「覚えているなら、言えるだろう」
「あなたから聞いた場所に行く。(中略)できるだけ大勢の人がいる場所にそれを置く。それから私は大きな出入口に移動する」
「アーチだ」
「そうでした。アーチ形の出入口に移動する。石壁の陰にいれば安全だから。そこから電話をかけて、起爆する」
「電話番号は覚えているな?」
「はい」
 ライムとスピロ、ロッシは顔を見合わせた。頼む━━(中略)その電話番号を言ってくれ!(中略)
 しかしジャンニはこう言っただけだった。「ならいい」(中略)
 (ライムは言った。「背景の音が手掛かりになる」)

“コンポーザー”ことステファン・マークは、とらえどころのない人物だった。(中略)
「近づいてくる車がみなシフトダウンして、そのあとエンジンの音が大きくなってる。つまり、電話で話している人物は丘の頂上付近にいる。(中略)
「鳥の声。二種類。一つはハト。ハトはたくさんいる。ときどき一斉に飛び立つ音が聞こえる。(中略)ハトはいったん飛び立って、またすぐに戻ってくる。(中略)広場のような場所にいるからだ。(中略)」

(また明日へ続きます……)