また昨日の続きです。
(中略)農家の玄関ドアに何度も体当たりした。しかし、(中略)そう簡単に侵入を許さない。
エルコレはまたロッシに電話をかけた。(中略)
ようやく屋内に入れそうなところが見つかった。(中略)
サックスは小型だが高輝度の懐中電灯を取り出した。(中略)
ふたたび突入の準備を整える。前回とは手順を変えた。二人同時に発砲する間口があるからだ。エルコレが南京錠を壊し、引き戸を開ける。(中略)
息を吐き出す。二人は銃をしまって母屋に戻った。
「証拠物件の捜索をしましょう」(中略)
サイレンが聞こえていた。
ライムが続ける。「時間切れが迫っているぞ。やつが動画をアップロードした。(中略)」
「ここをもう少し調べてみるわ、ライム」
サックスは電話を切り、捜索を再開する前にエルコレに言った。「電話をチェックして」
エルコレが画面を見せた。「これですね」
ハーリド・ジャブリルが映っていた。意識のない状態で椅子に座っている。口をふさがれ、首には首吊り縄がかけられていた。(中略)」
サックスは言った。「この曲、聞いたことがある気がするけど。知ってる?」
「知ってますよ。『死の舞踏』です」(中略)
まさか。ありえない。
サックスはリダイヤルボタンをタップした。
「サックス? 何か見つかったか」
「にわかには信じられない話だけど、ライム、これが唯一の希望かもしれない。(中略)」
「ロッシです。サックス刑事」
「いまから番地を言います。ナポリの住所みたい」サックスは読み上げた。(中略)」
「ハーリド・ジャブリルの監禁場所はそこだと思うの。問題は、まだ生きててくれてるかどうかだけ」
(中略)
二人は廃工場に入った。(中略)
地下室は、工場の建坪そのままではなく、奥の半分程度の広さしかないようだった。(中略)中世風の印象を醸し出していた。
中世の拷問部屋のような。(中略)
ハーリド・ジャブリルは救急車の後部に座っていた。(中略)
有機肥料製造工場近くの農家にあったコンポーザーのテーブルで偶然見つけたメモには、被害者の名前(中略)と、動画撮影のためにそれぞれを監禁する先の番地が書かれていた。(中略)
(中略)
「ところで、別件で一つ発見がありました。ガリー・ソームズ事件関連です。エルコレから分析を頼まれていたワインボトルです」(中略)
ベアトリーチェは分厚い報告書をダンテ・スピロに渡した。(中略)
「ベアトリーチェの分析によると、シクロメチコン、ポリジメチルシロキサン、シリコーン、セチルジメチコンコポリオール」
「なるほど」ライムは言った。
スピロがライムを見やる。「有益な情報か?」
「ああ、有益だよ、ダンテ。ひじょうに有益な情報だ」
驚くほど美しい女性だった。(中略)
「一点だけ、お尋ねしたいことがある。パーティ当日、ボーイフレンドとインド料理を食べたというお話でしたね」
一瞬の間。「ええ、そうです。夕飯に」(中略)
「午後から洗濯をしましたね」
「しました。(中略)」
「パーティの夜、あなたのボーイフレンド、デヴは、被害者のフリーダ・ショレルとどのくらいの時間、親密な様子で話していましたか」(中略)
緑色の目が一瞬だけ見開かれた。(中略)
「冗談を言い合ってただけです。デヴとフリーダは。それだけのことよ。(中略)」
「デヴが過去にコンフォート・シュアのコンドームを購入したことがあるかどうか、ご存知ですか」(中略)
しばしためらったあと、ナターリアは答えた。「どのメーカーのものを買ってるなんて、知りません」(中略)
「答えなくてもかまいませんよ。ここに来るのにあなたが家を出たのと入れ違いに、警察の者が入って、室内を検めさせてもらいました。コンフォート・シュアのコンドームはなかったとの報告がありました」
「え? そんなこと許されるの?」
「あなたのアパートは犯罪の現場ですからね、シニョリーナ。(中略)ボーイフレンドのデヴは三日前にコンフォート・シュアのコンドームを一箱購入しています。(中略)」
「レイプ事件の犯人は私のボーイフレンドだと言いたいの? デヴはそんなことをするような人じゃありません」
「違いますよ。フリーダ・ショレルに性的暴行を加えたのはあなたではないかと言っているんです」
「“私”? どうかしてる!」(中略)
「喫煙エリアにあったワインボトルの飲み口と首の部分から、コンドームの潤滑剤が微量ながら検出された。その成分がコンフォート・シュアのものと一致した。(中略)はっきり言おう━━フリーダから検出された潤滑剤と、“一致した”。
きみのアパートを捜索した際、私の同僚は、洗濯洗剤とインド料理に使うスパイスを見つけた。(中略)それらの微細証拠は、喫煙エリアとレイプの現場の両方から検出された」(中略)
(また明日へ続きます……)
(中略)農家の玄関ドアに何度も体当たりした。しかし、(中略)そう簡単に侵入を許さない。
エルコレはまたロッシに電話をかけた。(中略)
ようやく屋内に入れそうなところが見つかった。(中略)
サックスは小型だが高輝度の懐中電灯を取り出した。(中略)
ふたたび突入の準備を整える。前回とは手順を変えた。二人同時に発砲する間口があるからだ。エルコレが南京錠を壊し、引き戸を開ける。(中略)
息を吐き出す。二人は銃をしまって母屋に戻った。
「証拠物件の捜索をしましょう」(中略)
サイレンが聞こえていた。
ライムが続ける。「時間切れが迫っているぞ。やつが動画をアップロードした。(中略)」
「ここをもう少し調べてみるわ、ライム」
サックスは電話を切り、捜索を再開する前にエルコレに言った。「電話をチェックして」
エルコレが画面を見せた。「これですね」
ハーリド・ジャブリルが映っていた。意識のない状態で椅子に座っている。口をふさがれ、首には首吊り縄がかけられていた。(中略)」
サックスは言った。「この曲、聞いたことがある気がするけど。知ってる?」
「知ってますよ。『死の舞踏』です」(中略)
まさか。ありえない。
サックスはリダイヤルボタンをタップした。
「サックス? 何か見つかったか」
「にわかには信じられない話だけど、ライム、これが唯一の希望かもしれない。(中略)」
「ロッシです。サックス刑事」
「いまから番地を言います。ナポリの住所みたい」サックスは読み上げた。(中略)」
「ハーリド・ジャブリルの監禁場所はそこだと思うの。問題は、まだ生きててくれてるかどうかだけ」
(中略)
二人は廃工場に入った。(中略)
地下室は、工場の建坪そのままではなく、奥の半分程度の広さしかないようだった。(中略)中世風の印象を醸し出していた。
中世の拷問部屋のような。(中略)
ハーリド・ジャブリルは救急車の後部に座っていた。(中略)
有機肥料製造工場近くの農家にあったコンポーザーのテーブルで偶然見つけたメモには、被害者の名前(中略)と、動画撮影のためにそれぞれを監禁する先の番地が書かれていた。(中略)
(中略)
「ところで、別件で一つ発見がありました。ガリー・ソームズ事件関連です。エルコレから分析を頼まれていたワインボトルです」(中略)
ベアトリーチェは分厚い報告書をダンテ・スピロに渡した。(中略)
「ベアトリーチェの分析によると、シクロメチコン、ポリジメチルシロキサン、シリコーン、セチルジメチコンコポリオール」
「なるほど」ライムは言った。
スピロがライムを見やる。「有益な情報か?」
「ああ、有益だよ、ダンテ。ひじょうに有益な情報だ」
驚くほど美しい女性だった。(中略)
「一点だけ、お尋ねしたいことがある。パーティ当日、ボーイフレンドとインド料理を食べたというお話でしたね」
一瞬の間。「ええ、そうです。夕飯に」(中略)
「午後から洗濯をしましたね」
「しました。(中略)」
「パーティの夜、あなたのボーイフレンド、デヴは、被害者のフリーダ・ショレルとどのくらいの時間、親密な様子で話していましたか」(中略)
緑色の目が一瞬だけ見開かれた。(中略)
「冗談を言い合ってただけです。デヴとフリーダは。それだけのことよ。(中略)」
「デヴが過去にコンフォート・シュアのコンドームを購入したことがあるかどうか、ご存知ですか」(中略)
しばしためらったあと、ナターリアは答えた。「どのメーカーのものを買ってるなんて、知りません」(中略)
「答えなくてもかまいませんよ。ここに来るのにあなたが家を出たのと入れ違いに、警察の者が入って、室内を検めさせてもらいました。コンフォート・シュアのコンドームはなかったとの報告がありました」
「え? そんなこと許されるの?」
「あなたのアパートは犯罪の現場ですからね、シニョリーナ。(中略)ボーイフレンドのデヴは三日前にコンフォート・シュアのコンドームを一箱購入しています。(中略)」
「レイプ事件の犯人は私のボーイフレンドだと言いたいの? デヴはそんなことをするような人じゃありません」
「違いますよ。フリーダ・ショレルに性的暴行を加えたのはあなたではないかと言っているんです」
「“私”? どうかしてる!」(中略)
「喫煙エリアにあったワインボトルの飲み口と首の部分から、コンドームの潤滑剤が微量ながら検出された。その成分がコンフォート・シュアのものと一致した。(中略)はっきり言おう━━フリーダから検出された潤滑剤と、“一致した”。
きみのアパートを捜索した際、私の同僚は、洗濯洗剤とインド料理に使うスパイスを見つけた。(中略)それらの微細証拠は、喫煙エリアとレイプの現場の両方から検出された」(中略)
(また明日へ続きます……)