また昨日の続きです。
「加えて、イタリアに来たステファンが隠れ家にした農家にきみもいたことを裏づける証拠がある。靴だ」（中略）「農家で採取された靴痕と一致するようだね。溝にたまった土を分析すれば、農家にいたことを示す微細証拠が検出されるだろう」（中略）
「もう少しいいかね？ まずは最後まで聞いてくれ。きみにかけられているもう一つの容疑について話そう。ガリー・ソームズに対する性的暴行罪の虚偽告訴。そして、司法手続妨害」（中略）
「決め手はやはり靴だ。ガリーの部屋の窓の外に残っていた靴痕と一致するだろう。エルコレが現場の土のサンプルを採取している……これも靴底の溝に入っている土と比較することになる。
次はタイヤ痕だ。コンチネンタルの195／65Ｒ15というサイズのタイヤを履いた車が、ガリーのアパートの裏に駐まっていた。加えて、コンチネンタルの195／65Ｒ15というサイズのタイヤを履いた車が、農家にも駐まっていた。アメリカの外交官ナンバーをつけたニッサンのマキシマだ。ニッサン・マキシマは、ステファンの車━━は2700ccのメルセデス4ＭＡＴＩＣと並んで駐まっている。このメルセデスは、すべての現場で痕跡が見つかったミシュランのタイヤを履いていた。
どういうことか。コンポーザーの事件とガリー・ソームズの事件はつながっているということだ。両方の事件にきみが関係している。なぜだ？ ニューヨークから私たちが来てイタリア警察の捜査に協力することになったと聞いて、手を引かせる必要があると考えたからだ。（中略）」
ライムはここで顔をしかめた。痛恨の思いだった。
「もう少し早く気づこうと思えば気づけたのだがね。ハーリド・ジャブリルの妻と争った現場で脱げたステファンの靴にも、デートレイプ・ドラッグが付着していると判明したときに。（中略）
さて、私が真相に気づいたきっかけは何だったか。それが知りたいだろう？」（中略）「名前だよ、シャーロット。リストにあった名前だ」（中略）「農家を検証した際、ステファンが狙った被害者の名前が書かれたリストをサックス刑事が発見した。アリ・マジーク、マレク・ダディ、ハーリド・ジャブリル。三人の氏名と携帯電話番号、首吊りビデオの撮影場所の番地が書かれていた。連続殺人犯がそのようなことをするわけがない。きみはその三名の被害者を拉致することを目的として、ステファンを雇った。では、それはなぜか」（中略）「なぜなら、きみはスパイだからだ」（中略）
（中略）ライムの脳裏に捕虜になった兵士のイメージがふたたび浮かんだ。ただし、今度はそこに一つ条件が加わった━━任務をすでに完了した兵士。
ライムは言った。「一時間ほど前、ニューヨークにいるＦＢＩ捜査官に連絡して、事実確認を依頼した。まず確認したかったのは、国務省に籍を置くシャーロット・マッケンジーという名の法務官が実在するか否かだ。その人物は確かに存在した。しかしもう少しよく調べようとしたところで、行き止まりに突き当たった。（中略）一般的な履歴書に書くような経歴しか出てこなかった。（中略）
もう一つ、現在イタリアでアメリカの諜報機関による何らかの作戦が進行しているかどうかを調べてもらった。これも空振りだったが、ナポリとのあいだで大量の暗号通信が行なわれていることは突き止めてくれた。（中略）
私の推理はこうだ。きみはこのＡＩＳ（代替諜報サービス）に所属する工作員で、亡命希望者を装ってリビアからイタリアに入国したテロ容疑者三名をイタリアで尋問する任務に就いていた。過去にも似た事例があった。つい昨年、プーリア州バーリの難民キャンプで、ＩＳＩＳのメンバーがイタリア警察に逮捕されている」（中略）
「きみが所属する組織の名称にある“代替”が何を意味するか。ふつうとは異なる方法で容疑者を拘束し、尋問することを指しているのだろう。（中略）
最初の誘拐事件━━ニューヨークで発生した事件（中略）は、何から何まで作り物だった。被害者は同僚の工作員だった。ステファンを正真正銘のサイコパス、難民にはとくに関心を持たない人物に見せる必要があった。（中略）フレッド・デルレイとＦＢＩを捜査から排除しようとしたのはきみか？（中略）」
「（中略）そこでだ（アッローラ）、シニョリーナ・マッケンジー、きみの同僚の氏名を知りたい。加えて、いま説明したとおりのことが実際に起きたと認めてもらいたい。死者は一人も出ていないし、誘拐事件の被害者はテロ容疑者であることから、きみや同僚に厳罰が下ることはないだろう。しかし、当然のことながら、何らかの処罰は下されるだろうね。というわけで、きみはどうする？」（中略）
（また明日へ続きます……）
「加えて、イタリアに来たステファンが隠れ家にした農家にきみもいたことを裏づける証拠がある。靴だ」（中略）「農家で採取された靴痕と一致するようだね。溝にたまった土を分析すれば、農家にいたことを示す微細証拠が検出されるだろう」（中略）
「もう少しいいかね？ まずは最後まで聞いてくれ。きみにかけられているもう一つの容疑について話そう。ガリー・ソームズに対する性的暴行罪の虚偽告訴。そして、司法手続妨害」（中略）
「決め手はやはり靴だ。ガリーの部屋の窓の外に残っていた靴痕と一致するだろう。エルコレが現場の土のサンプルを採取している……これも靴底の溝に入っている土と比較することになる。
次はタイヤ痕だ。コンチネンタルの195／65Ｒ15というサイズのタイヤを履いた車が、ガリーのアパートの裏に駐まっていた。加えて、コンチネンタルの195／65Ｒ15というサイズのタイヤを履いた車が、農家にも駐まっていた。アメリカの外交官ナンバーをつけたニッサンのマキシマだ。ニッサン・マキシマは、ステファンの車━━は2700ccのメルセデス4ＭＡＴＩＣと並んで駐まっている。このメルセデスは、すべての現場で痕跡が見つかったミシュランのタイヤを履いていた。
どういうことか。コンポーザーの事件とガリー・ソームズの事件はつながっているということだ。両方の事件にきみが関係している。なぜだ？ ニューヨークから私たちが来てイタリア警察の捜査に協力することになったと聞いて、手を引かせる必要があると考えたからだ。（中略）」
ライムはここで顔をしかめた。痛恨の思いだった。
「もう少し早く気づこうと思えば気づけたのだがね。ハーリド・ジャブリルの妻と争った現場で脱げたステファンの靴にも、デートレイプ・ドラッグが付着していると判明したときに。（中略）
さて、私が真相に気づいたきっかけは何だったか。それが知りたいだろう？」（中略）「名前だよ、シャーロット。リストにあった名前だ」（中略）「農家を検証した際、ステファンが狙った被害者の名前が書かれたリストをサックス刑事が発見した。アリ・マジーク、マレク・ダディ、ハーリド・ジャブリル。三人の氏名と携帯電話番号、首吊りビデオの撮影場所の番地が書かれていた。連続殺人犯がそのようなことをするわけがない。きみはその三名の被害者を拉致することを目的として、ステファンを雇った。では、それはなぜか」（中略）「なぜなら、きみはスパイだからだ」（中略）
（中略）ライムの脳裏に捕虜になった兵士のイメージがふたたび浮かんだ。ただし、今度はそこに一つ条件が加わった━━任務をすでに完了した兵士。
ライムは言った。「一時間ほど前、ニューヨークにいるＦＢＩ捜査官に連絡して、事実確認を依頼した。まず確認したかったのは、国務省に籍を置くシャーロット・マッケンジーという名の法務官が実在するか否かだ。その人物は確かに存在した。しかしもう少しよく調べようとしたところで、行き止まりに突き当たった。（中略）一般的な履歴書に書くような経歴しか出てこなかった。（中略）
もう一つ、現在イタリアでアメリカの諜報機関による何らかの作戦が進行しているかどうかを調べてもらった。これも空振りだったが、ナポリとのあいだで大量の暗号通信が行なわれていることは突き止めてくれた。（中略）
私の推理はこうだ。きみはこのＡＩＳ（代替諜報サービス）に所属する工作員で、亡命希望者を装ってリビアからイタリアに入国したテロ容疑者三名をイタリアで尋問する任務に就いていた。過去にも似た事例があった。つい昨年、プーリア州バーリの難民キャンプで、ＩＳＩＳのメンバーがイタリア警察に逮捕されている」（中略）
「きみが所属する組織の名称にある“代替”が何を意味するか。ふつうとは異なる方法で容疑者を拘束し、尋問することを指しているのだろう。（中略）
最初の誘拐事件━━ニューヨークで発生した事件（中略）は、何から何まで作り物だった。被害者は同僚の工作員だった。ステファンを正真正銘のサイコパス、難民にはとくに関心を持たない人物に見せる必要があった。（中略）フレッド・デルレイとＦＢＩを捜査から排除しようとしたのはきみか？（中略）」
「（中略）そこでだ（アッローラ）、シニョリーナ・マッケンジー、きみの同僚の氏名を知りたい。加えて、いま説明したとおりのことが実際に起きたと認めてもらいたい。死者は一人も出ていないし、誘拐事件の被害者はテロ容疑者であることから、きみや同僚に厳罰が下ることはないだろう。しかし、当然のことながら、何らかの処罰は下されるだろうね。というわけで、きみはどうする？」（中略）
（また明日へ続きます……）