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ジェフリー・ディーヴァー『ブラック・スクリーム』その17

2021-12-11 11:30:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

「あなたのボーイフレンドは、パーティでフリーダといちゃついていたのではないか。大学の年度が始まったときから━━あなたたち三人が最初の授業の際に知り合って以降ずっと、ときおり会っていたのではないか。(中略)フリーダのワインに薬物を混入したのは、あなただ。そのあと、フリーダとガリーを追って屋上に行った。フリーダが意識を失い、それをいいことにガリーがレイプするのではないかと期待していた。(中略)ところが、ガリーは手を出さなかった。何もせずに階下に戻った。あなたはしかたなく自ら行動を起こしたわけだ。自分のボーイフレンドのコンドームを拝借し、屋上に人がいなくなるのを待ってフリーダを引きずって仕切りの壁を越え、隣の建物の屋上に行き、ワインボトルで凌辱(りょうじょく)した。ことがすむと、残りの分と一緒に翌日にでも処分するつもりで使用済みのコンドームをとりあえずどこかへ隠し、何食わぬ顔でパーティのホスト役を続けた」(中略)
「嘘よ!」ナターリアがわめいた。(中略)
 ナターリアは立ち上がった。「こんなことにいつまでもつきあっていられません。帰ります」
「いや、そういうわけにはいかない」(中略)ダニエラ・カントンが現れ、ベルトから手錠を取ってナターリアの手首にかけた。(中略)

 もう絶望しかない。
 自分の人生は終わった。
 刑務所の取調室を出て、(中略)ガリー・ソームズは、いまにも泣き出しそうだった。(中略)
 エレナからは、別の事件の捜査でたまたまナポリを訪れていたアメリカの超一流科学捜査官二名に協力を要請したと聞いている。(中略)
 不安な時間。
 ほかの収容者がこちらに向ける視線も怖い。(中略)
 だが、何よりもみじめなのは何だ?(中略)
 勃(た)たなかったからだ。このガリー・ソームズが。ミスター“いつだってすぐに戦闘態勢”のこの自分が。(中略)
(刑務所のサイコパスの二人に襲われそうになっていた時)どこか遠くから声が聞こえた。「シニョール・ソームズ! どこだ(ドヴェ・セイ)?」(中略)
「く(ムート)」(サイコパスの一人が)アルバニア語で吐き捨てた。(中略)
「シニョール・ソームズ、うれしいニュースがあるぞ。たったいま担当検事から電話があって、真犯人が特定された。きみの釈放の手続きを始めているそうだよ」(中略)

 国家警察ナポリ本部(クエストウーラ)の一階、科学捜査ラボの隣に設けられた捜査指令室に、捜査チームのメンバーが集結していた。
 サックスと“遊撃隊”のダニエラ・カントンが有機肥料製造工場近くの農家から持ち帰った証拠物件の分析を、ベアトリーチェ・レンツァがそろそろ終えるところだった。(中略)
 電話中だったロッシが通話を終え、農家の所有者と連絡が取れたと報告した。農家をコンポーザーに賃貸していた人物だ。(中略)
 家主はたまたま町はずれのレストランに寄ろうとして幹線道路から脇道にそれたため、古い紺色のメルセデスを目撃した。検索をかけると、タイヤ痕から割り出したサイズのミシュラン・タイヤは、確かにメルセデスの古いモデルに装着されていた。ロッシは国内のすべての警察機関に対し、車の情報を流して手配をかけた。(中略)
(一覧表を見ていたライムは)「指紋がまったく検出されないのは、私たちにとって好都合だ。そうだろう、サックス」(中略)
「好都合ね」(中略)
 ライムは説明した。「数年前にこんな事件があった。プロの殺し屋が関わった事件だ。(中略)犯人は朝から晩までずっと手袋を着けていた(中略)。当然のことながら、手袋の“内側”に指紋が付着する(中略)。その殺し屋は、本人にとっては不運なことに、隠れ家から二ブロックほど先のくず入れに手袋を捨てた。私たちはそれを発見し、指紋から犯人を突き止め、逮捕した。(中略)」
「そうですそうです、ライム警部」エルコレは緑色のビニール袋を持ち上げた。「カイアーツォとナポリのあいだの幹線道路沿いにあるIPステーション━━ガソリンスタンドからもらってきました。(中略)」
 エルコレは金属の塗料缶を三つビニール袋から取り出し、テーブルにそっと並べた。(中略)「メチルイソブチルケトン」
「それは何です?」ロッシが尋ねる。
ベアトリーチェが英語でゆっくり答えた。「溶剤です。とくにラテックスゴムを溶かすのに有効です」(中略)
「(中略)この缶が捨ててあったくず入れには蓋がありました。その蓋には(中略)指紋は付着していました。(中略)
 まもなく、くず入れの蓋から採取した指紋の画像の隣に別のウィンドウが開いて、指紋の画像が表示された。バス停留所でアリ・マジークが拉致された夜、郊外のダイナ―でマジークの様子をうかがったときかき分けた木の葉から採取したコンポーザーの指紋だ。(中略)

(また明日へ続きます……)