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アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』

2008-12-03 18:09:23 | ノンジャンル
 今日は、'83年に映画監督のロバート・オルドリッチが65才で亡くなり、'26年に画家のクロード・モネが86才で亡くなった日です。どちらも私の大好きな人ですが、50年代作家とも言われるオルドリッチの短命さと、モネのものすごい長生きぶりが対照的です。素晴らしい作品を残してくれたことに対し、改めてお二人に感謝の気持ちを捧げたいと思います。

 さて、傑作の誉れ高い、アフルレッド・ベスターの'56年作品「虎よ、虎よ!」を読みました。
 内惑星連合軍と外衛星同盟軍が戦い、瞬間移動であるジョウントを広く人間が行なうようになった近未来に、火星から木星までパイアという物質を20ポンド運んでいた移動船が、外衛星同盟軍に攻撃され、乗組員のフォイルは移動船とともに宇宙を漂います。その近くを通った宇宙船ヴォーガは彼を助けようとせず、フォイルは復讐を誓います。外衛星同盟軍に助けられたフォイルは、虎の刺青を顔に施され、一旦はヴォーガの持ち主であり財閥の総裁であるプレスタインのプレスタインの手に落ちますが、収容施設から脱出し、隠してあったパイアとともに地球に向かいます。
 フォイルは自分の体をサイボーグに改造し、大金持ちのサーカス団長フォーマイルに姿を変えて、ヴォーガの乗組員を探し当て、ヴォーガが当時船長の命令で600人の避難民を輸送中に、避難民から金品を奪って、避難民を宇宙空間に捨てていたことを知ります。そして火星の植民地に向かい、テレパシーを使える子を連れて、全ての感覚を信者から奪う宗教施設にいた、当時の船長を訪ねますが、船長は、フォイルが一目惚れした、プレスタインのプレスタインの娘で、生まれながらに盲目で白子であるオリヴィアであることを知り、彼女がフォイルを見捨てたのは、生まれながらに目が見える者への復讐であったことを知ると、フォイルは良心に目覚め、プレスタインのプレスタイン側に自首しますが、意思と思惟によってパイアが巨大な爆発を起こし、フォイルは過去にいた場所に時を超えて次々とジョウントし、残りのパイアを人々に分け与えた後、最後には宇宙空間をもジョウントし、永遠からの目覚めに備えるのでした。

 最後の方は、あらすじからも分かるように、錯綜していて読んでいても何だかちっとも理解できません。過去の場所を次々とジョウントするところでは、大小の様々な活字が踊っていて、普通の小説の態をなしていません。さながら映画「2001年宇宙の旅」のラスト近くの場面のようです。
 この小説の画期的な点は、これが1956年に書かれているという点でしょう。今であれば不思議でもなんでもありませんが、第二次世界大戦が終わって10年ほどしか経っていない時点で書かれた小説と考えると、その先進性には脱帽するしかありません。ただ、それだから優れた小説かというと、人間が描けていないという点で私は否定的にならざるを得ません。
 皆さんはこの小説、どうお感じになるでしょうか?