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短編集『嘘つき。 やさしい嘘 十話』

2008-10-06 18:54:30 | ノンジャンル
 '06年9月に出された、10人の作家による短編集「嘘つき。 やさしい嘘 十話」を読みました。
 西加奈子「おはよう」は、大学で知り合った日から同棲して30才を迎えた俺が諦めたようにプロポーズすると、朝子は自分の名前が生まれたオハイオ州から「おはよう」を経て名付けられたことから、自分の両親が血のつながってない両親であることを知り、またそれにも関わらず大きな愛情を注いでくれたことを知ったことを語るという話。
 豊島ミホ「この世のすべての不幸から」は、醜女で生まれたことにより母に逃げられ蔵で育てられた自分の妹が簡易トイレの自分の小便に写った顔を見て自分の醜さを知る話。
 竹内真「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」は、祖父から偽の月の土地登記簿をプレゼントとして贈られた男の子が宇宙を夢見て育っていく話。
 光原百合「木洩れ陽色の酒」は、飲むとあらゆる病気が治りますが、最も愛しているものの記憶がすべて失われる果実酒を飲んだ妻が、夫のことを忘れたふりをして、夫の親友が贈ってくれた首飾りのことを忘れていたという話。
 佐藤真由実「ダイヤモンドリリー」は、母の友人の同棲相手が別の女性を愛してしまったので、彼女を慰めるためにダイヤモンドの指輪を手にいれようとする話。
 三崎亜記「あの空の向こうに」は、爆弾のせいで各国で暴動が起きて国々が崩壊する中で、他国に占領されたふりをして民衆を弾圧している国では、爆弾の後遺症の人がいても皆それがないかのように振舞うという話。
 中島たい子「やさしい本音」は、嘘をつき続ける私と、嘘をつけない彼が、お互いに逆の立場になろうと努力し始める話。
 中上紀「象の回廊」は、旅先のミャンマーで知り合った女性2人と男性1人が、お互いの関係に対して嘘をついたまま、現在も付き合いを続けている話。
 井上荒野「きっとね。」は、恋人の男と同棲しているゲイバーのマスターは、恋人の不在中淋しくて浮気を重ね、もう帰る気のない恋人から帰ると嘘をつかれる話。
 華恵「やさしいうそ」は、母の遠い親戚で華やかな服装の高校教師が忘れ物をしたので届けに行くと、家は小屋のようで夫は貧乏ななりをして出て来るという話、です。

 私の好きな作家が3人も出てくるのですが、やはりその3人の作品が一番好きでした。西さんのはコミカルながらもちょっとせつなく、豊島さんのは異常な世界の中から感動的なラストが生まれ、三崎さんのは世紀末的な舞台における人間の姿が描かれていました。この3つの短編だけでも読む価値があると思います。オススメです。