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高橋秀実『TOKYO外国人裁判』

2008-10-12 15:33:33 | ノンジャンル
 本日、横浜自然観察の森にバードウォッチングに行ってきました。森というよりも原生林のようで、自然を満喫してきました。はっきりと見られたのは、コゲラ、キジバト、モズ、キビタキのメス、カワラヒワでした。冬は葉が落ちるので、バードウォッチングには一番いい季節とのこと。また行きたいと思います。

 さて、高野秀行さんがエンタメ・ノンフの横綱と言う、高橋秀実さんの'92年作品「TOKYO外国人裁判」を読みました。
 外国人、特にアジア系の人が被告人となる裁判では、日本人が被告人となる裁判と比べて、逮捕後の起訴率が高く、執行猶予率が低いことが統計から分かります。これは、外国人が日本の司法制度に詳しくなく、起訴猶予や略式起訴を知らずに、犯行の否認を続けて実刑を喰らったり、重い量刑になったりすることが一つの原因です。また、取り調べと裁判に共通の通訳がついたり、ひどい時には通訳がつかなかったりして、検察ペースで裁判が進むということもあります。公正な通訳をつけることについては、アメリカには法律がありますが、日本にはなく、それどころか、裁判の判例で、裁判所が独自に通訳に関する公正さを判断してもよいことになっています。
 著者はモデルケースとしてフィリピン人2人がフィリピンパブの日本人店長を刺殺した事件を傍聴し、関係者に取材し、一審において、被告人たちの主張がほとんど容れられず、弁護人も明らかに手抜きをしていたことを明らかにさせます。そして二審においては、やる気のある弁護人と組んで被告人側の証人喚問を行ない、一人の被告人の減刑を勝ち取りますが、もう一人は減刑叶わず、その後拘置所で月2回の神父の慰問の時以外は口を聞いていないということを知ります。

 「はい、泳げません」と同じ著者が書いたとは思えないような、真面目な本です。こういう地点から出発して「はい、泳げません」や「ゴングまであと30秒」まで至ったというのは、とても興味深いことです。アメリカの音楽業界で、ロックで出発したバンドがポップミュージックでランクインするようになると、一人前と認められるというのと似ているように思いました。
 今まで裁判の傍聴記は、北尾トロさんの本や阿曽山大噴火さんの本など、いろいろ読んできましたが、当事者にインタビューするところまで突っ込んで取材すると、様々なことが見えてくることが分かりました。実際、高橋さんの取材のおかげで一人の容疑者の減刑が実現したのかもしれません。そういったことを考えても貴重な本だと思いました。なお、巻末には日本に「輸入」されるフィリピン人ボクサーの話も載っています。この本の詳細に関しては、「Favorite Books」の「高橋秀実『はい、泳げません』」にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。