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高橋秀実『にせニッポン人探訪記』

2008-10-16 15:31:20 | ノンジャンル
 高野秀行さんが「エンタメ界の横綱」と呼ぶ、高橋秀実さんの'95年作品「にせニッポン人探訪記」を読みました。平成2年に入国管理法が改正され、日本にやってきた日系ペルー人たちに関するルポルタージュです。
 工場で働く石井は交通事故で最近までの記憶を無くしたと言って、日本人の父のことを知りません。知念は祖父の名前を聞かれると、戸籍謄本を見せるので、「トヨキチか?」と聞くと「そう、トヨキチカ」と答えます。ペルーで大学教授をしていたという怪しい男、通称ドクトルは、日本が戦後短期間に急速に発展した理由を調べるために日本に来たと言い、調査の結果、それは霊であると言い、「霊とは何か?」と聞くと「それは神秘だ」と答え、「では、神秘とは何か?」と聞くと「それは霊だ」と、禅問答のようなことを言います。池田という男に言わせると、日本から取り寄せられた戸籍謄本はコピーされて転売され、それを元に地元の役所がそれ以外の書類を作り、ニセの日系人が日本に入って来れるようになるとのことです。しかしニセ日系人がいるかどうかの結論が出る前に、著者が潜入取材していた工場が不景気のあおりで閉鎖され、ペルー人たちは散り散りバラバラになるのでした。
 著者はいろんな人に話を聞き、ニセ者の日系ペルー人をつきとめようとしますが、結局分からずじまいです。しかし、この本の一番すごいところは、著者が記事を書くために、労働者として工場に入り込むことで、そこにドキュメンタリスト根性のようなものを感じました。仕事はめちゃくちゃハードで、仕事後は人に話を聞くどころではないと言いながらも、こうした本を作ってしまうのですから、高橋さんはやはりタダモノではないと思いました。なお、内容の詳細は「Farorite Books」の「高橋秀実『はい、泳げません』」のコーナーにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。