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「サルマン・ラシュディー、自分の最新作の小説について語る」と題する『ハーバード大学新聞』の記事。

2005年11月16日 | 政治と文化
サルマン・ラシュディーは、11月7日(月曜日)マサチューセッツ州ケンブリッジのファースト・パリッシュ教会に来て、彼の新しい小説『道化のシャリマール』から朗読し、政治的に混乱し道徳的に困窮している世界で作家が直面する挑戦について議論した。
このイベントは、人文学センターとハーバード・ブック・センターのスポンサーで行われた。それは将来、優れた著者や知識人をケンブリッッジに招く予定である。英米文学教授でヒューマニティー・センターの所長であるホミ・バーバは、ラシュディーを紹介し、それに続く対話の司会をした。
後のインタービューで、バーバは、「これらの議論は本当の会話で、単なる広報活動ではない」と言った。「二人の人が著者の作品にとって中心的な問題について真剣に語る場合には、彼らには知的な核心がある。」このシリーズの次の著述家は、経済学者のアマルティア・センになるだろう。
月曜日のイベントでは、ラシュディーは、彼の小説の中から、いくつかの箇所を朗読した。その小説は、若い綱渡り師シャリマールと美しい踊り子ブーニの間の恋愛から始まる。シャリマールとブーニは、カシミール地方に住んでいる。ラシュディーは、カシミールを自然美とヒンヅー教徒とイスラム教徒が慈悲と寛容の生活を送るように定められている点で楽園であると述べている。だが、「この楽園にはヘビがいる。」
不和の一つの源は、インド軍の存在である。彼らはヒンヅー教徒を保護するためにこの地域に派遣されている。もう一つの不和の源泉は、「鉄の説教者」と呼ばれるミステリアスな宗教者である。彼は最後の戦争で置き去りにされたさびた武器の山から生まれ、イスラム教徒の村人に「不信仰と不道徳と悪」に対する聖戦に参加せよと説教する。
ブーニーは、シャリマールと結婚するが、後に彼を捨てて、金持ちのアメリカ人のインド駐在大使の愛人になり、彼との間に娘を儲ける。彼女の裏切りは、シャリマールを激怒させ、彼は無慈悲なジハディストになり、彼の仇をロサンジェルスまで追いかけて、殺してしまう。
朗読に続いて、バーバは、ラシュディーに対して、彼のフィクションの中で、寓話やたとえ話のような非現実的な形式をどうして用いるのかと尋ねることから議論を始めた。
「あなたや私は、たとえ話がインド病だということを知っています。インドではすべての者がアレゴリカルなのです。昼食だって寓意です。」
ボンベイで生まれて、イギリスで教育を受けたラシュディーは、彼がなぜ写実的なフィクションの実践家のアプローチを採用することが不可能な理由を説明しようとする。
「リアリズムは、著者と読者がこの世界がどうであるかについての記述を共有していることに基づいています。でも、今日、現実が何かについては、非常に議論の的になっています。事実であるものの単純な本性について本当の議論があり、その文脈で、19世紀のリアリズムは、うまく行かないのです。それはフィクションのようです。」
ラシュディーは、ストレートなリアリズムから離れたストーリー・テリングの方法は、自然主義的なフィクションよりも真実にもっと近いと言った。「アレゴリーや寓話のほうがこの奇妙な時代には適しているのです。」(以下省略)
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