海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「高齢者の世話は誰がするのか」と題する『ロサンゼルス・タイムズ』紙の論説。

2005年12月11日 | 社会問題
高齢化の波はひたひたと押し寄せている。65才以上のアメリカ人は、現在人口の12%を占めているが、2030年には20%に達するだろう。この増大する数の高齢者の面倒を見る若い人たちの数が減るという事実にわれわれはどう対処しようとしているか?これは日曜日に始まるホワイトハウスの「高齢化会議」で答えられるべき重大な問題である。だが、それが答えられる兆候は少ない。
1961年にケネディ大統領がこのような会議を始めて以来、組織者は、よい考えを求めて国中の活動家や専門家に意見を求めた。それ以来、10年に一度開かれるすべての会議で、老齢化法の言葉を借りると、このようなアイデアは、「収入、住宅、健康、雇用、定年退職、コミュニティ・サービスの領域」での改善に集中してきた。
だが、ブッシュ大統領によって会議の立案に任命されたドーカス・ハーディが私に語ったところでは、「今度の会議は違います。」一つは、その指導的哲学は、個人の責任を強調し、連邦政府の行動を余り強調しない。彼女が会議から何が結果すると期待しているのか私は尋ねた。
「健康なダイエットと運動です」と彼女は答えた。更に彼女は、「長期的なケア」に言及したが、すぐに「すべてが連邦政府や州政府の責任になるのではありません」と付け加えた。
今年の会議は他の点でも違っている。その組織化は今までで最も小さく、最も遅い。2004年の末まで、役人達は会議を開くかどうかで揺れていた。
「老齢化に関するカリフォルニア委員会」のメンバーであるマービン・シャクターによれば、「今回は、やり方は上意下達である。主催者は、「公聴会」を開いたが、彼らは話し手を選んでいて、われわれは聞き役だった。」
一つだけは確かである。つまり、テクノロジーに発言権があると言うことである。ワシントンのコンベンション・センターの1万平方フィートある「空想のパビリオン」には、33個のテクノロジーが展示され、その中でグランド・ケア・システムの「リラウエア」は、家庭の寝室にいる高齢者患者の日常の動きを報告することができる感知装置を展示している。
見学者は、人員が減らされた家庭看護のフロアーを歩き回る「パール」に出会うかもしれない。それは入居者に食事をし、飲み物を取り、薬を呑み、トイレに行くことを思い出させるロボットである。彼女は、テレビの天気予報やプログラムを教えてくれる。カーネギー・メロン大学とピッツバーグ大学の研究者によって開発された「パール」に資金を提供したのはインテル社である。カーネギー・メロン大学のロボット工学研究所によれば、「パール」のようなロボットは「社会的相互作用」を可能にする。
勿論、実生活では、ケアをするのは、人間である。高齢者が受けるケアの三分の一は、家族や友人によってただで提供される。その多くは、フルタイムの仕事を持つ40代から80代までの女性である。このような女性は、仕事を辞めることはできない。彼女たちが年を取っても、行政は、仕事を止めることを欲しない。ドーカス・ハーディがコメントした通り、「われわれは定年者がゴルフ・コースを歩くのを止めて仕事に戻ることを望んでいます。」だが、「お祖母さんの看護」と「政府から多くを期待するな」と「仕事をし続けよ」というレトリックの間に捕まって、これらの女性は、どこでもゴルフ・コースには近寄れない。
男性はどうか?彼らはもっと老人の世話をしている。ある研究によると、何らかの老人看護をしている男性の47%と女性の53%は、自分を第一次的な看護人であると述べている。
更に、女性は、より多く食事を与え、風呂に入れ、トイレに付き添うなどより長い時間を提供している。身体不自由な夫の看護をしている女性は、週に28時間、看護に従事している。身体障害の妻の看護をしている夫は、週に15時間を看護に当てている。身体が不自由な両親の面倒を見ている娘は、週に13時間を看護に当てている。息子は、10時間を当てている。
息子や娘、姪や甥達は彼らの愛の労働をしているのだ。だが、高齢者の多くは、ぎりぎりの生活をし、家庭のヘルス・ケアのための時間を州政府が短縮するのに直面している。ロサンゼルスのような都市では、輸送が問題である。看護の家庭に、看護者は、行ったり来たりしなければならない。ケア・ウアーカーの間の年間の転換率は、非利益の家庭看護では60%に達し、利益と引き替えの看護では100%に達している。これらの必要に対応する費用は、減税と戦費に消えている。だが、高齢者看護の第三シフトを会社における第一シフトや家庭における第二シフトと結びつけようとする戦っている人々にとっては、本当の英雄的な戦いは、家庭戦線にある。
「高齢者会議」で何が起こるか注目しよう。だが、これまでのところは、ブッシュ政府は、大波を乗り切るのに、小型ボートしか約束していない。確かにわれわれはボートをよく漕がねばならず、正しく食べ、体操をし、前もって計画しなければならない。だが、ボート漕ぐだけでは十分ではない。われわれは「空想のパビリオン」が老人と彼らを幸福にする無給にせよ有給にせよ、看護者のための公的政策を展示すること望んでいる。ロボット「パール」については、彼女をそれを作った工場に送り返そうではないか。
[訳者の感想]12月10日号に掲載されたアーリー・ホックシルドという人の論説記事です。
彼女はカリフォルニア大学バークレー校の社会学担当の教授です。小さい政府を目指して、社会保障を削減することに一生懸命なブッシュ政府に対する厳しい批判がなされています。恐らく小泉政府もおなじようなことを考えていると思います。私のような老人にとっては海の向こうの人ごとだとは思えません。
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