海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ビン・ラディン、新しいビデオで同調者を募る」と題する『シュピーゲル』誌の記事。

2007年09月08日 | テロリズム
ベルリン発:ビン・ラディンの最新のビデオは、約30分の長さがあるとのことである。最初の英訳版は、金曜日遅くから出回り始めた。その翻訳によると、一年来沈黙してきたアルカイダの首領の語りかけには、具体的なテロの脅しは含まれていない。比較的最近職務に就いたフランス大統領サルコジやゴードン・ブラウン英国首相に言及しているから、演説は数週間以内に行われた可能性が高い。このビデオが本物だと仮定すると、彼はまだ生きている。
 演説は、いくつかの理由で普通でない。このことは、一方ではその内容に関わる。これまで、彼は一度も自分を一種のグローバルな反対政治家として演出したことはなかった。語りかけの大部分は、資本主義批判とグローバル化批判に向けられている。「おまえたちが、以前は僧職者・国王・封建領主の奴隷から解放されたように、今度はおまえたちは、資本主義的システムの誤りから解放されるべきだ」とある箇所でアルカイダの首領は述べている。
 他方では、演説の内容が告知された仕方が普通でない。木曜日の夜、アルカイダに近いアル・サハブ社が、首領の演説がまもなく放映されるだろうと予告した。だが、このテロ宣伝社がビデオを公開する前に、米国のメディアがビン・ラディンの話の中核部分を報道した。
 金曜日午後、米国政府が演説の予告編をもっていると報道された。政府がどうやってそのテープを入手したかは明らかではない。二つの経路が考えられる。秘密情報機関がテープを入手したか、テロについて研究している機関が入手したかどちらかである。
 以前の場合とは違って、オリジナルのテープを『シュピーゲル』誌は持っていない。この記事の引用は、米国のABCテレビが放映した英語版に基づいている。
 演説の中で、ビン・ラディンは、「米国の体面は、傷つけられた。われわれの間の戦争を終わらせるには、二つの可能性がある。一つは、聖戦士の戦闘行為を停止することであるが、これは彼らが義務を遂行している限り、実現しない。あるいは、アメリカ人たちが自分たちはイラクで負けたということを認めることだ。しかし、彼らはベトナム戦争での失敗やズガニスタンでのソビエトの失敗を繰り返したているかのよう見える」と述べている。
 もう一つの出口がある。アメリカ人たちは、「もう一つの正しい道を求めるべきだ。それは彼らがイスラム教に改宗することである。」ビン・ラディンは、イエスとマリアに言及しているコーランの箇所を引用する努力をしている。
 2006年に公開されたビデオと違って、今回は、彼はテロ攻撃をするぞと脅していない。その代わり、このテロリストの親玉は、左翼知識人のノアム・チョムスキーの著書について、考えを巡らしている。レバノン戦争やハマスとファタハの抗争や英国とドイツにおけるテロの試みについては一言も言及していない。
 興味のある箇所は、米国がイラクにおけるスンニー派とシーア派の対立を煽っていると述べている箇所である。この点では、彼は、このイラクの内戦を指導していて、2006年に死んだ「イラクにおけるアルカイダ」の指導者アブ・ムサブ・ザルカウイの路線に同調していない。
 この演説の目標は、自己の陣営に属しているが、イスラムの民間人に向けられたテロがあまりに過激であると考えているイスラム教徒である。彼は、聖戦士のモラルを強調して、これらの動揺している同調者を取り戻そうとしている。特に2005年秋にヨルダンでザルカウイの指揮下で起こった50人のモスレム殺害は、アルカイダの名声を大いに傷つけた。
 他方、この演説は、アメリカとグローバル化を批判している人々に向けられている。イスラム教のチェ・ゲヴァラのように、ビン・ラディンは、すべてを飲み込み、コントロール不可能な資本主義の反対モデルとして、政治的イスラム主義を置いている。これは、イスラム主義的過激派と非イスラム的過激派との将来の連盟を作り出そうとする試みである。
彼の演説で、ビン・ラディンは、彼が特にアルカイダのイデオロギー的指導者であるというイメージを固定しようとしている。彼はまるで自分が知識人であって、決して軍事的司令官ではないかのように語っている。(後略)
[訳者の感想]ビン・ラディンの新しいビデオから、彼の人物像や思想傾向に迫る試みだと言えます。筆者は、ヤシン・ムシャルバシュという人です。果たしてこれでイスラム教徒の間でアルカイダの同調者が増えるでしょうか?
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