海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「サダムよ、帰ってこい」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年11月28日 | イラク問題
ベルリン発:コラムニストとして、ジョナサン・チェイトは、分極化し、政治的に正しくない意見を表明することで報酬を得ている。だが、有名な『ロサンジェルス・タイムズ』の今日の論説欄におけるほど、このリベラルな世論指導者が極端な意見を述べたことはなかった。
 「サダムを連れ戻せ」という見出しの下で、彼は死刑宣告を受けた独裁者を再び大統領の地位と尊厳につけることを要求しているのだ。勿論、フセインは、「残虐な独裁者」であり、「精神異常の大量殺掠者」である。だが、彼はひょっとしたら、イラクを解放するのに「最善の選択」であるかもしれないと言うのだ。
 悪い冗談のように聞こえることが、米国の最大で最も影響力の強い新聞に「解説」として現れた。それはアメリカのエリート達が途方に暮れていることの印しである。
 「全体主義よりもっと悪いものがあるということが明らかになった。つまり、果てしのない混乱と内戦である」とチェイトは書いている。秩序を再び作り出すためには、イラク国民は、「大きな心理的ショック」を必要とする。「すべてのイラク人が知っている男」であるフセインの復帰こそ、まさに正しいことだとチェイトは空想する。彼の確信によれば、人間がある社会秩序を期待しているなら、彼らは自ら「文明化された」振る舞いをするだろう。(今のイラクには社会秩序がないから、野蛮な行為が横行しているのだという意味だろう。訳者注)
 フセインの復帰の持つ欠点は、明らかであるとチェイトは認める。「だが、肯定的なことも考えてみたまえ。彼はイラクをイランの影響から守るだろう。独裁者は、今度は前よりはましに振る舞うだろう。なぜならば、彼は別の選択は絞首刑だということを知っているからだ」とチェイトは言う。
 チェイトの論説が示しているのは、どれほど速やかに理想主義が、一見現実主義的なシニシズムに転換するかということである。チェイトの職業は、『ニュー・リパブリック』誌の影響力のある主筆である。イラク問題におけるその経過は、米国における議論の経過にとって特徴的である。最初は、イラク戦争に対する無条件の賛成から始まり、主筆は、その支持を次第に弱め、とうとう、最後に「ニュー・リパブリック誌は、この戦争に対する早すぎた賛成を遺憾とする」と言うまでになった。
 チェイトと『ニュー・リパブリック』誌だけではない。保守的な放送局である「フォックス・ニュース」で、ある元国防省の協力者は、イラクについての彼の処方箋を「必要なのは強力な男である。民主主義は失敗した」と述べた。
 アメリカの公共圏では、「民主主義は、まだ輸出できない」という確信が支配的である。「アメリカは、いかなる国にも民主主義を処方できない。それが苦い教訓だ」とチャック・ヘーゲル共和党議員は総括した。
 楽観主義の母国であるアメリカでの予測はますます悲観的になっている。「イラク侵攻は、歴史の中で、叙事詩的な規模をもった国家的罪だと記録されるだろう」と『ロサンジェルス・タイムズ』紙でローザ・ブルックスは予言した。「われわれがなし得ることは、イラクへ行って、われわれが与えた酷い損害に対して謝罪することだけだ。」
[訳者の感想]イラク戦争が米国の犯した全くの愚行あるいは国家的な犯罪であったことを識者達が認め始めたようです。
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