インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

シャトゥーン ~ヒグマは神(カムイ)か悪魔か~

2010-09-07 20:36:17 | 映画や小説、テレビなど
シャトゥーン ヒグマの森

 内容はアニマルパニックな映画、ジョーズやらピラニアと同じで、登場人物が食われていくわけであるが、

 まあ、作者が北海道の極寒の山を歩いた経験が文章から伝わってくる。

 主人公の土佐薫(学者の昭と双子の姉弟)が「実はヒグマがこれだけの密度で残っているのは世界的には珍しいのよ」というほど、北海道は類まれな自然に囲まれているようだ。

 まさにハブが奄美の自然を守るがごとく、ヒグマは北海道の自然を守っている神(アイヌのカムイ)なのである。

 これは古代インディオのガラガラ蛇やらジャガー崇拝と同じであり、アイヌ=インディアンな人々だとしたら、何かしら別のことを考えさせられる。

 「日本は世界の雛形」であるとする出口オニ三郎からすれば、北海道はアメリカ大陸であり、アイヌはネイティブアメリカンである。

 薫(主人公)は語る。「北海道をアイヌモシリっていうのは知っているでしょう。これは人間の住む大地という意味よ。かつて北海道という広大な土地は全てアイヌ民族50万人とカムイたちのものだったの。それを、開拓の名を借りた私たちの祖先・和人(シャモ)が侵略し、土地も文化も奪ってしまった。北海道開拓の歴史は、そのままアイヌ文化と動物たちの滅亡の歴史なのよ。でも和人も結局全てを奪うことはできなかった。それはこの地に巨大なヒグマがいたから。そのヒグマに対する恐怖が、今でも北海道の深い森をギリギリの線で守っている」

… (パソコンの隣でポメラを叩いていてむなしくなったので、いつものようにパソコンをたたき出す)

 
シャトゥーン―ヒグマの森
増田 俊也
宝島社

このアイテムの詳細を見る


 実に生け贄的な、凄惨な小説であった。ライオンとかトラなら急所を狙って殺しておいて食べるのだろうが、ヒグマは巨体を乗っけて(顔や腕が最初に攻撃され、使えなくなる)ムシャムシャやられるようで、最悪な殺され方である(小説中で何人も)。

 シャトゥーンとは冬眠に失敗した「穴なし熊」のことで、銀世界に食べるものなど何処にもありやしない。しかも子供を守る子連れ(何か設定がおかしいような…)、手負いの獣(獰猛の極まり)というわけで、小説の登場人物(エサ候補)は小屋を壊され、白い空間で逃げ惑う…。

 多分、この小説を読んで、北海道の大自然を満喫する旅行をキャンセルした人もいるに違いない。何せ、北海道の隅から隅まで(根室から函館まで)棲息しているわけである。山に入ったら何が起こるかわからない。実家の裏山とは話が全然違うのである。

 何て、この臆病なインディオだ!(それでジャングルには入れるのか!)

 美味しい美味しいと食べられるのだけはご勘弁を(玄米や刺身ばかり食べているので本当に美味しかったり)