話題の韓国映画である。なるほど話題になる映画だと思った。コメディ、ヒューマン、サスペンス、ホラー、アクション…、あらゆる要素が詰まっていて、最後まで緊張感を持続させてくれた韓国の巨匠ポン・ジュノ監督の手腕に驚いた。
私が映画館に足を運ぶ際の動機の一つは、他からの評価が高い場合がある。今回の映画もNHK・TVで日本の巨匠・是枝裕和監督と本作の監督であるポン・ジュノ氏が対談をしていて、是枝監督が絶賛しているのを聞いて「これは観なければ!」と思い立った。
昨日(1月15日)午後、ユナイテッドシネマに行くと、平日にもかかわらず客席がほとんど埋まるほど、やはり多くの人たちが関心を持っている映画のようだった。
※ 貧民街の半地下の家に暮らす主人公一家の4人です。ピザの箱の組み立ての内職をしている図です。
映画は韓国のみならず、世界に広がる格差社会の現状を鋭く炙り出しながらも、あくまでフィクションに徹する形で映画として完成させているものである。
パラサイト…私は「寄生」と訳するが、韓国の都会(ソウル?)の貧民街の半地下の一室に暮らす一家の息子があることから超高級住宅地に住む会社社長の家庭教師に採用されたことから、一家の妹、父親、母親と次から次にその社長宅に採用されることになるというとんでも話なのである。しかし、そこからの展開が凄い!もう私たちの予想を覆すような展開が次から次へと巻き起こる。観て損はないと断言できるほど面白い映画だった。
※ 主人公たちがパラサイトした豪邸の一部です。
題材が格差社会を炙り出すことから監督のポン・ジュノ氏を“社会派”監督とカテゴライズする向きもあるようだが、ポン氏ご自身はそういう呼称をヨシとしないようだ。是枝監督との対談で、「私はむしろ“映画派”だ」と語ったことが印象的だった。それはまた是枝氏とも通ずるところであるように思われる。
確かに格差社会に焦点は当てているものの、その矛盾をストレートに表現するのではなく、あくまで映画的なエンターテイメント性を損なうことなく描き切ったところにこの映画の素晴らしさがあるように思う。映画は昨年末のカンヌ映画祭の最高賞を受賞し、今春のアカデミー賞の作品賞にもノミネートされたという。映画の素晴らしさを表現していたことからそうした評価も納得である。映画好きの方なら必見である。