寺島実郎氏は云う。「平成の30年間、我々日本人は“そこそこうまくいっているんじゃないかシンドローム”に陥ってはいなかったか」と…。しかし現実を見ると世界経済の中でも日本の落ち込みはかなり深刻だと指摘した。そこで寺島氏は…。
11月18日(月)午後、札幌グランドホテルにおいて「北ガスフォーラム」が開催され参加した。フォーラムは、基調講演とパネルディスカッションの二部構成だった。
基調講演は日本総合研究所会長など数々の肩書を持ちテレビなどでも活躍されている寺島実郎氏が、パネルディスカッションはその寺島氏に加えて、(株)カネカ会長の菅原公一氏と衆議院議員で元農林大臣の齋藤健氏が登壇するという錚々たる顔ぶれだった。
基調講演は寺島氏が「世界の構造変化と日本、そして北海道の進路」と題して話された。寺島氏の講演会においていつも寺島氏の姿勢には敬服の念を抱きながら拝聴している。それは寺島氏の講演では必ず氏が様々な場で発表した論文とか、講演内容とかをまとめた100頁を超えようとする冊子を受講者に配布することだ。今回もその例に漏れず137頁に及ぶ「寺島実郎の時代認識」と題する2020年新年号速報版なるものが配布された。講演は当然その冊子を資料として用いながらのものとなった。
話の初めは寺島氏が学長を務める多摩大学がある多摩地区と北海道との意外な関りについてから始まった。多摩地区に誕生した「八王子千人同心」が歴史の変転の中で北海道とも関りがあったということだが、この部分については深追いしすぎるとまとまりがつかなくなりそうなので割愛したい。
そして本題に入った。平成の30年間の中で日本は世界の中で埋没していったという。寺島氏の言葉を借りると“転がり落ちる日本”だったという。それなのに日本全体では“そこそこうまくいっているんじゃないかシンドローム”に陥っていたと指摘した。寺島氏はその事実を用意された資料を基に説明した。それによると世界のGDPのシェアの変遷を見ると一目瞭然である。1988(平成の始まり)年には16%であったものが2000(平成20)年には14%となり、2018(平成30)年には6%まで割り込んでいる。さらに10年後には3%にまで落ち込むのではないかと専門家は予想しているそうだ。その間に台頭してきたのが言わずもがなの中国である。2018年には16%となりまったく日本と立場が反対となった。その間、アメリカやヨーロッパ(EU)はあまりシェアの変化は見られない。(このあたりは先日の野村證券の池上氏の話とも合致する)
そうした実状にある日本が目を向けるべきは“アジアダイナミズム”であるという。世界の経済の動向はいまや中国一国だけでなく、アジア全体が勢いを増していることは誰もが指摘するところである。「日本復活の鍵はアジアにあり」と寺島氏は示唆したのだ。
寺島氏は非常に印象的な言葉を使用した。それは地球を“メルカトール図法”で見るな、ということだ。つまり地球を地球儀的に見ると、中国の船舶が日本海を経由するとロシア、アメリカに意外に近いという事実に目を向けろ!と…。これからは日本海物流が盛んとなることに注目すべきだと強調された。また、“ジェントロジー”という言葉も使われた。この言葉を寺島氏は「高齢者社会工学」と訳した。つまりこれから少子高齢化がますます顕著となる日本において、高齢者の活用がやはり日本復活の鍵を握ると示唆したのだと理解したい。
寺島氏のお話は残念ながら1時間という限られた時間だった。日本復活、そして北海道の進路について具体的に論及するだけの時間はなかった。その時間は次のパネルディスカッションに委ねたようだ。事実、パネルディスカッションでは登壇したお二人から具体的な提案をお聞きすることができた。そのことについては明日のブログでアップしたい。
※ あれこれと試みていたところ、偶然にも旧状に復帰することができました。まだ安心はできない状態ですが、ともかく復帰第一信を投稿します!