ナディアはイラク北西部の山岳地帯に生まれ、少数民族ヤジディ教を信ずる民族の一人だった。そのヤジディ教がイスラム教の過激派組織ISIS(イスラム国)の標的となった。そこからナディアは過酷な運命を辿る…。
11月30日(土)午後、エルプラザホールにおいて国連UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)協会主催による映画「ナディアの誓い」の上映会があり参加した。
ナディア(ナディア・ムラド)は2018年のノーベル平和賞を受賞して一躍時の人となった方である。ナディアは写真で見るとおりまだ若く(当時23歳)清楚な美人であるが、その実はヤジディ教徒であったために過酷な運命に翻弄された。
※ ナディアの両側にいる二人の男性はナディアの活動をサポートする重要な二人である。
2014年夏、当時シリア、イラクなどを席巻していたISISはイスラム教と教義を異にするヤジディ教を殲滅しようと分け入り、虐殺によって母親と6人の兄弟を殺されてしまう。少女や女性は戦利品として扱われ、ナディアも性奴隷として3ヵ月間扱われたが、なんとかそこからの脱出に成功しドイツに逃れた。2015年12月の国際連合安全保障理事会の場で、ISISの虐殺や性暴力に関する証言を行ったナディアは、ヤジディ教徒の希望の存在となった。普通の生活に戻ることを望みながらも、まだ捕らえられている同胞や世界中の性暴力被害者のため、表舞台に立ち続けることを決意したナディアの揺るぎのない決意をカメラが追っていくドキュメンタリーフィルムである。
※ 国連の会議で参加者の発言に耳を傾けるナディアです。
ナディアの活動は多くの共感を呼び2016年には国連親善大使に指名され、やがてそれは国連総会でスピーチする場を与えられた。そうした活動がノーベル賞委員会からも認められ、2018年のノーベル平和賞受賞にも繋がったものと考えられる。
ISISの残酷さについては、私もメディアの報道などで多少は知っていたが、そこで知る以上に残酷無比の実態であることをナディアは訴えている。我が国においては○○ハラスメントという言葉が流行のように唱えられ、一人一人の人権を尊重する雰囲気が高まっている中、世界ではまだまだ人権などを虫けらのごとく軽んじられている国や地域があることに愕然としてしまう。
※ 国連総会の開会式で各国代表に訴えるナディアです。
ナディアはけっして声高に叫ぶのではなく、むしろ切々と訴えるところに、彼女の訴求力のようなものを感じる。彼女を清楚な美人と称したが、映画の中で彼女をアップした時に、彼女の肌や表情からは年齢以上に疲労し、苦労されてきたことをうかがわせるものだった。ナディアが年齢同様に若々しい肌と表情を一日も早く取り戻すことができる日がやってくることを願いたい。