北海道銀行本店ロビーにおけるクラシックコンサートが最終回を迎えた昨日、一昨日と連続でコンサートが開かれたが、二日ともに通い最後のコンサートを楽しませてもらった。
北海道銀行本店ロビーを飾る巨大レリーフを背にクラシック音楽を楽しむ「道銀本店ロビーコンサート」はクラシックファンのみならず札幌市民の楽しみの一つだった。しかし、北海道銀行本店は建て替えによる改築のために、ロビーコンサートも残念ながら今回で最終回となった。3月14日、15日と連夜の開催となったが、私は二日ともに駆け付けてコンサートを楽しませてもらった。
本店ロビーを飾る巨大レリーフだが、1964(昭和39)年に現在の北海道銀行本店の営業開始に合わせて、当時北海道を代表する彫刻家だった佐藤忠良、本郷新、山内壮夫の合作によって「大地」と題する巨大なレリーフがポリエステル樹脂板によって制作された。その大きさは横41メートル、縦3.3メートルの巨大なもので、北海道の歴史風土や産業発展への熱い思いが込められた作品として、札幌市民には「隠れたアート」として親しまれてきたという。
そのレリーフを背景にして本店ロビーでは折に触れて「道銀文化財団 CLASSIC♪FAN」という名称でロビーコンサートが開催されてきた。私も過去に何度か通い拙ブログにも投稿したことがあった。
その第9回、第10回のコンサートがこのほど連続して開催されたのだ。
まず第9回は、「花鳥風月~人の心、自然の心~」と題して、バリトンの三輪主恭さんとピアノの三輪栞さんによる演奏だった。当夜のプログラムを紹介すると…、
◇R.シューマン/『ミルテの花』より“献呈”
◇C.グァスタヴィーノ/『アルゼンチンの花々』より
ススキと羽ぼうし
白いクラベル・デル・テイレ
◇G.ランゲ/花の歌(Piano Solo)
◇千原英喜/『みやこわすれ』より“はっか草”
◇C.ドビュッシー/月の光(Piano Solo)
◇中田喜直/木兎
◇新井満/千の風になって
《アンコール》◇上田知華/私の好きな月
三輪主恭さんはけっして体格に恵まれた方ではないが、声量豊かでさすがにオペラで活躍されていることを彷彿とさせるような素晴らしい歌声だった。三輪さんは長崎出身とのことだが、現在は三輪栞さんと結婚され、札幌を中心に活動されているとのこと。今後も北海道のオペラ界で、あるいは三輪栞さんとのデュオでの活躍が期待される方である。
翌15日(金)は「クラリネットとピアノ~ブラームスへのオマージュ」と題してクラリネットの河野泰幸さんとピアノの岡本孝慈さんのベテランデュオの演奏だった。
お二人はベテランということもあり本格的なクラリネット曲を用意してきた。その曲とは…、
◇M.レーガー/クラリネット・ソナタ第3番 変ロ長調 Op.107 第1楽章
◇M.エリザベート/ロマンス
◇J.ブラームス/クラリネット・ソナタ第1番 ヘ短調 Op.120-1
第1楽章 Allegro appassionato
第2楽章 Andante un poco adagio
第3楽章 Allegretto grazioso
第4楽章 Vivace
《アンコール》◇作者不詳(数説あり)/クラリネット・ポルカ
◇A.シュライナー/だんだん小さく
私は最初の2曲を聴いて思わず次のようにメモした。「難しすぎて曲の良さを感得できない」と…。しかし、3曲目のブラームスのクラリネット・ソナタはピアノとの相性も良く、クラリネットの良さが感ずることができた一曲だった。
しかし、私が本当に楽しめたのはアンコールの2曲だった。「クラリネット・ポルカ」はクラリネットが軽快な音を出して軽やかに演奏する曲で、お馴染みの曲だったので楽しめた。それにも増して「だんだん小さく」は、クラリネット本体を切り離してだんだん小さくしていくという見た目にも楽しい曲だった。クラリネットはマウスピースも含めると全体を5つに分解できるようだ。曲を演奏しながらクラリネット本体を徐々に短くしながら演奏する姿は見ていても楽しい一曲だった。
ところでお二人は共に東京芸術大出身の方で、北海道生まれではない。それが河野氏は在札幌10年、岡本氏にいたっては在札幌30年だという。お二人ともに後進の指導にも当たっておられるということだが、札幌はそうしたプロの演奏家を抱えるだけのキャパシティがあるということのようだ。前日の三輪氏も長崎出身でやはり在札幌が10年を経過したと言っていた。こうした素晴らしい音楽家たちが活躍する札幌に住んでいることに感謝しながら、これからもそうした札幌の文化の香りを少しだけお裾分けしていただこうと思っている。