ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

紅梅と白梅がともに東工大の大岡山キャンパスで咲いています

2011年01月21日 | 季節の移ろい
 東京工業大学の大岡山キャンパスでは紅梅と白梅がそろって咲き誇っています。東京都目黒区にある大岡山キャンパスは、由緒ある時計台である本館正面に広がる桜並木が有名です。

(この画像は1966年当時、まだサクラの木は成長盛りのころです)

 この桜並木の西側にはなだらかな斜面があり、その片隅に紅梅と白梅が数本ずつ植えられていてます。この紅梅と白梅がほぼ満開なのです。




 なだらかな斜面なので陽当たりが良いためでしょうか、紅梅はやや盛りを過ぎた感じです。白梅はちょうど満開になりつつあります。2011年1月21日は午後はおだやかな晴天で、日だまりといった感じでした。

 白梅のいい薫りが漂っていました。すると、メジロが1羽飛んできて、さえずりながら、白梅の枝をあちこちと飛び回りました。落ち着かない感じで、一カ所に留まりません。このため、残念ながら、メジロを撮影することはできませんでした。




 この斜面にはたしかハナモモも1本植えられていたと思います。こちらはサクラが咲き始めるころには、毎年同時に咲きます。

 時計台正面に広がる桜並木のサクラの木は、だいぶ老齢化してしまい、お花見の時に見物客が根元を踏んでサクラの木の根を痛めないように、数年前からウッドデッキを桜並木には設けています。この桜並木の世代交代はなかなかの難問のようです。日本企業での世代交代と同じぐらいの難問と思います。 

ナノサイズの薬のカプセルとなるドラッグ・デリバリー・システムDDSの話です

2011年01月19日 | イノベーション
 独立行政法人の科学技術振興機構(JST)が開催した「21世紀の医療イノベーション ナノバイオテクノロジーが切り拓く最先端医療への挑戦」という国際シンポジウムを拝聴した話の続きです。

 この国際シンポジウムの中心テーマは、細胞シートを用いた再生医療とDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を用いた治療や医療の二つの基盤技術です。細胞シートを用いる再生医療は、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の所長・教授の岡野光夫さんの研究グループが、薬を患部に直接送るDDSを用いた治療や医療は、東京大学大学院工学系研究科・医学系研究科の教授の片岡一則さんの研究グループが担当しています。

 この二つの基盤技術の研究開発はともに、内閣府の「最先端研究開発支援プログラム」に選ばれた30件の大型研究開発プログラムの一つです。岡野さんの研究グループには1年当たり約34億円の予算が、片岡さんの研究グループには同約34億円の予算が割り振られています(執行額ではありません)。二つともに、中心研究者が研究支援担当機関として科学技術振興機構を指名しています。

 1月18日午後の後半の講演は、片岡さんの研究グループが講演されました。




 一番手は国立がん研究センター東病院部長の村松保広さんです。DDSがガン治療をパラダイムシフトさせるという趣旨の講演でした。

 胃ガンやすい臓ガンは難治がんと呼ばれる治療が難しいガンです。その理由は、抗ガン剤を投入すると副作用が大きいなどの課題があり、有効な化学療法がないからだそうです。このため、DDSと呼ばれるミクロのカプセル(高分子ミセルで作成します。直径は20~100ナノメートル)に抗ガン剤を入れ、ガン患部の近くでDDSから抗ガン剤を徐々に放出する治療法の研究開発を進めています。


 例えば、「NK105」という抗ガン剤をDDSの中に入れて治療する研究開発が進んでいます。DDSはその事業化は、大学発ベンチャー企業のナノキャリア(千葉県柏市)が担当し、日本化薬と実施権のライセンス契約を締結し、日本化薬が製造しています。現在、「第Ⅱ相臨床試験」まで研究開発は進んでいるそうです。

 「難治ガンは間質(血管、神経、膠原繊維、繊維芽細胞などの結合組織を指す)が豊富という病態生理学を利用して、ガン関連間質抗体を開発し、ミセル製剤とのハイブリッド製品をつくって、難治ガン治療を目指した非臨床と臨床開発を進める」とのことです。「間質」という医学の専門用語が説明無く、いきなり出てくるので、とても難解な講演でした。

 二番手は東京大学大学院医学系研究科の准教授の西山伸宏さんでした。DDSの中に光応答性の物質を含ませ、ガンの患部付近で放出し、ガン患部と光応答性の物質を結合させ、ガン患部を光らせるなどの画像をつくるイメージングを研究開発しているそうです。光応答性物質と結合したガン患部に対して、レーザーなどの強力な光を照射する治療法を研究開発しているそうです。例えば、光が当たると、細胞内のミトコンデリアが活性酸素を放出し、アポトーシス (apoptosis) によって細胞が死ぬ現象を利用するガン治療法を追究しているそうです。講演内容の光応答性ナノデバイスの研究開発はかなり先端的なものと感じました。

 三番手は東京医科歯科大学の生体材料工学研究所教授の宮原裕二さんです。「生体分子認識検出用マイクロバイオチップの創製」というタイトルでお話しされました。半導体ではお馴染みのFET(電界効果トランジスタ)の部分の表面に1本鎖のDNAを“核酸プローブ”として植え付けます。1本鎖のDNAは、2本の遺伝子が二重らせんをつくることで安定化します。この際のマイナスイオンの増加量を、FETによって精密測定するバイオ・トランジスタ・チップを試作されています。最近研究開発が活発化している“マイクロRNA”(mRNA)の塩基配列の解析を進めるそうです。こうしたバイオチップを追究し、簡便な臨床検査システムを実用化したいと語ります。

 三つの講演ともに、同じ研究分野の研究者向けに語る講演で、異分野・他分野の聴講者向けの言葉の配慮が感じられませんでした。異分野融合が重要との発言はあるのですが。とにかく内容が難解なために、集中力を必要とする講演会でした。

最先端医療の未来像を語る超難解な国際会議に参加しました

2011年01月18日 | イノベーション
 独立行政法人の科学技術振興機構(JST)が開催した「21世紀の医療イノベーション ナノバイオテクノロジーが切り拓く最先端医療への挑戦」という国際シンポジウムを拝聴しました。なかなか難解なタイトルの国際会議です。

 1月17日と18日の2日間にわたって、東京都千代田区一ツ橋の学術総合センタービルの一橋記念講堂で開催されました。参加したのは、18日の午後の講演部分だけです。17日は、残念ながら参加できませんでした。

 講演の中心テーマは、細胞シートを用いた再生医療とDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を用いた治療や医療の基盤技術です。「臓器ファクトリー」「ピンポイント治療」などと、かなり魅力的な言葉を用いた講演が続きます。細胞シートを用いた再生医療は、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の所長・教授の岡野光夫さんの研究グループが、患部に薬を直接送るDDSを用いた治療や医療は、東京大学大学院工学系研究科・医学系研究科の教授の片岡一則さんの研究グループがそれぞれ講演されました。



 国際会議であっても、日本人講演者は日本語で話すのですが、説明用に映し出されるパワーポイントの画面は国際会議向けに英語で書かれています。専門用語は日本語と英語が飛び交い、話の半分ぐらいしか理解できませんでした。例えば、endoscopic submucosal dissection=ESD、内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)という内視鏡を用いた食道ガン治療の話がいきなり出てきたため、話の流れを追うだけで疲れました。このため、以下は講演会の各講演で理解できた部分のつまみ食い的な印象です。

 細胞シート工学を解説されたのは、東京女子医科大学教授の大和雅之さんです。細胞シートとは、患者自身の生体組織の幹細胞を少量採取し、特殊な細胞培養皿で、採取した幹細胞を培養してつくったシート状の細胞組織です。再生医療は、患者自身の幹細胞を用いて自分向けの細胞シートをつくり、機能障害・機能欠損に陥った組織や臓器に移植し、組織や臓器の再生を図るものです。

 大和さんは、マウスやイヌ、ブタなどで細胞シートを用いた再生医療の基盤技術づくりに励んでいます。食道ガンの初期は、内視鏡とITナイフ(電気メス)を組み合わせた除去手術によって簡単にガン部分を摘出できます。食道の上皮を削除すると、食道が細くなって食べ物や飲み物が通りにくくなる狭窄(きょうさく)が起こります。このため、ガンを除去して筋肉が露出している食道の部分に、再生シートを数枚貼って、粘膜部分を再生させます。もし、手術後に食道の狭窄が起こると、バルーンと呼ばれる風船を食道の患部で膨らませて、狭窄を直す処置が必要になります。このバルーン処置は数10回も必要でかなりつらいそうです。細胞シートを用いると、この狭窄がほとんど起こらないそうです。

 大和さんは、歯周病によって失われた歯周組織の再生についても解説されました。歯をかなり失った患者の親知らず歯を採取し、歯根膜の再生シートをつくり、当該の歯の根元に歯根膜由来の再生シートを貼ると、歯が再生する再生医療です。臨床研究開始へ向けた準備が進められているそうです。また、人の眼の角膜再生上皮の細胞シートは研究開発が先行し、現在、フランスで治験を実施中だそうです。大学発ベンチャー企業のセルシード(東京都新宿区)が事業化を図っています。

 大阪大学大学院教授の紀ノ岡正博さんは、細胞シートなどの組織ファクトリーについて講演されました。再生医療用の組織ファクトリーは、原料が患者の幹細胞などなので、つくる量が毎回異なり、しかも採取中などに滅菌処理ができないため、通常の工場ような原料の品質管理ができず、品質管理が限定的になり、変動要因があるそうです。患者ごとに、再生用の皮膚、軟骨、骨などとターゲットが異なるため、培養操作をある程度までしか規格化できず、工業的な品質管理はできないと解説します。その一方で、人による誤操作を防ぐために、できるだけ自動化する必要もあります。将来、再生治療が普及し始めたら、組織ファクトリーの品質管理手法が大きな課題になりそうです。

 東京女子医科大学教授の清水達也さんは、臓器ファクトリーについて解説しました。細胞シートを3枚重ねたものを患部に貼って再生医療を行う際に、細胞シート内に血管網を付与するなどの研究成果を解説されました。たぶん、マウスの心臓の心筋組織を再生する研究成果では、肉眼レベルで自立拍動する心筋組織の構築の動画に驚きました。この研究成果は、再生治療分野では有名だそうです。

 岡野教授の研究グループの成果は10年ぐらいで実用化される見通しだそうです。大学などの最先端の研究現場では、驚くべき成果が得られていることを知らされた国際会議でした。

安中市のろうばいの郷では、ロウバイは八分咲きでした

2011年01月16日 | 季節の移ろい
 安中市松井田町にある「ろうばいの郷」ではロウバイの花が八分咲きでした。ロウバイの花は、昨年12月下旬から咲き始めたそうです。


 訪れた1月16日は、日本列島が強い冬型の気圧配置となり、各地で雪が降り、冷え込みました。群馬県の安中市松井田町は碓氷峠を通して長野県側に接しているため、気温が低く、体感温度はかなり低かったです。浅間山などがある長野県側は雪雲がかかっていて、寒風が吹き降りてきます。安中市松井田町にも数日前に雪が少し降ったようで、北斜面の陰には残雪が少しありました。

 安中市の郊外の陽当たりのいい丘陵に設けられた「ろうばいの郷」に入園すると、入り口付近からロウバイ独特のいい薫りが漂っていました。ここには1200株のロウバイの木が植えられているそうです。




 ロウバイと呼ばれるように、花は蝋細工のような不思議な透明感を感じる黄色です。

 ここのロウバイは「満月」(まんげつ)という品種が中心だそうです。このほかには「素芯」(そしん)という品種と、原木である基本種と、合計三種類が植えられています。基本種は花の黄色が淡い半面、薫りが強いそうです。逆に、満月と素芯は花の黄色が濃い半面、薫りは弱いそうです。満月は花弁の先が丸い一方、素芯は先がとんがっているとのことです。でも、満月と素芯の違いはあまりよく分かりませんでした。

 ロウバイが開花する木に野鳥が何羽か来ています。ロウバイの木の根元をひたすら掘っていたのはツグミでした。根元の暗い場所にいるため、落ち葉の褐色に、ツグミの羽根の褐色が溶け込んでいます。


 ロウバイの木の根元の日陰にツグミがいるため、美しい羽根の細部が見えません。

 このろうばいの郷の近くには、松井田町が誇る梅林がいくつもあります。2月下旬になれば、有名な秋間梅林(あきまばいりん)で梅が咲き始めます。群馬県を代表する梅林である榛名梅林と箕郷梅林も、秋間梅林の近くにあります(榛名梅林と箕郷梅林は高崎市にあります)。今度は、梅林の梅の花を見に行きたいと思っています。やはり春よ来いです。

バイオ企業の“横綱”である中外製薬が求める博士人財とはという講演を拝聴しました

2011年01月15日 | イノベーション
 医薬品産業は科学・技術の革新を推進力として事業を進める知識集約型産業です。この分野で活躍するには「リーダーシップとマネジメント能力の基になる素養を身につけてほしい」と、博士人財に対して語ったのは、スイスのロッシュ傘下に入った中外製薬の取締役副社長執行役員の山崎達美さんです。要は、問題発見能力と問題解決能力の下地を博士課程で身につけてほしいと伝えます。

 山崎さんは、東北大学が開催した「高度イノベーション博士人財育成シンポジウム」で「グローバルネットワーク活用による研究開発戦略と博士人財の役割」というタイトルで講演されました。


 講演会場は片平キャンパスの萩ホールです。空は晴れていながら、時々粉雪が舞う寒い日でした。


 山崎さんご自身が東北大大学院農学部研究科の博士課程を修了後に、米国のハーバード大学の研究員などを経て、中外製薬に入社されます。「研究開発ターゲットは、当時は医薬品にはならないといわれた抗体医薬品と指示され、米国で、一から学んだ」そうです。抗体医薬品は、生体が持つ免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品で、一つの抗体が一つの標的(抗原)だけを認識する特異性を利用する理想的な医薬品ですが、当時は副作用も大きく、多くの企業が研究開発から撤退した経緯があります(現在は、治療効果が高く、副作用は少ないといわれています)。

 中外製薬は抗体医薬品の「Actemra」(アクトムラ)と呼ばれる関節リウマチの製品化に成功しています。1986年に大阪大学の岸本忠三教授(元学長、現名誉教授)のグループと共同研究を始め、苦労して2008年に日本で関節リウマチの医薬品として承認されます。こうした研究開発成果から、日経バイオテク誌は「中外製薬を日本のバイオ企業の番付で、東の横綱」と評価しました。

 山崎さんは「日本の医薬品企業は頑張ってきた」といいます。その証拠として、データが少し古いのですが、2005年に世界中で販売された医薬品の売上高上位100品目の中での国別のランキングでは、米国39品目、英国20品目、日本13品目、スイス9品目、フランス6品目という数字を上げます。「日本は第3位で、世界有数の新薬創出国の一つ」と、胸を張っていいます。ところが、医薬品には2010年問題がありました。「売上高上位100品目の1/4に当たる医薬品の特許が切れ、特許切れを待って後発品が市場に参入する」と見られていた年が2010年でした。事実、各社は医薬品事業の有力な収益源を失い始めています。

 このためには、特許が切れた医薬品に代わる新薬を事業化しなければ、企業は存続できません。ところが、医薬品の新薬の成功確率は1/2万5482と非常に低く、しかも研究開発から新薬を発売するまでに9年~17年と長くかかります(2008年の調査データから)。最近は、成功確率が下がり、研究開発費が高騰する事態を招いています。売上高に占める研究開発費の比率は、全産業が3.11、製造業全体が3.92であるのに対して、医薬品産業は11.74と群を抜いて高いのです。研究開発費が高騰し、成功確率が低下している現状では、優れた研究開発者による独創的な成果に期待するしか手はありません。

 博士人財に対して「自分の専門分野での基本的な論理分析能力や他分野の理解能力、事業化シナリオ能力を持ち、チームプレーができる人を求めている」といいます。今後は海外での研究開発・事業化プロジェクトで連携できる語学力も重要といいます。こつこつと身につけるしか、道は無いようです。

 スイスの巨大製薬企業であるロッシュ(Roche)が、2002年に中外製薬の株をTOB(株式公開買い付け)によって過半数以上を取得したため、中外製薬はロッシュグループに入りましたが、同社とは戦略的アライアンスを締結し、「中外製薬としての独自経営と研究開発戦略を確保し、強い連携の下に製薬事業の効率性と生産性を高める努力を続けている」と力説されました。