ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日本経済新聞紙「私の履歴書」にテンプスタッフの篠原さんが登場した話の続きです

2013年06月29日 | 日記
 2013年6月1日から日本経済新聞紙朝刊の最終面のコラム「私の履歴書」に登場した、人材派遣業のテンプスタッフ創業者の篠原欣子(よしこ)さんの話の続きです。

 篠原さんが事務系人材派遣業というベンチャー企業のテンプスタッフを創業し、同業界で成功した理由は、ある企業規模になった時点で、経営のプロを入社させて経営を高度化させたことです。

 米国ではベンチャー企業の創業時の経営者と、企業規模が大きくなってからの経営者は異なることは珍しくありません。テンプスタッフもある時点から売上げが増えなくなり、ある種の事業の壁にぶつかった時に、「事業計画に計数管理を導入し、各部門の責任者を明確にし、経営方針を明確にするように」と、スカウトした水田正道さんらの男性陣に要求されます。

 篠原さんは「仲間意識による経営に幕引きをし」、社内に実力主義を導入し、仕事の成果を客観化・透明化するという、ある意味で当たり前の経営の仕組みを導入します。

 興味深いのは、気の合う女性陣だけで運営してきた会社を、経営のプロの訓練を受けた男性陣が、経営の中枢に入って、テンプスタッフの近代化を実施した点です。男性中心社会に風穴を開けた、能力ある女性に仕事を確保する役目を果たしたテンプスタッフが、皮肉にも男性陣によって経営のガバナンスを再構築するという結果に達したことになります。

 実は企業規模の点では、主にIT系のベンチャー企業などに多い現象ですが、創業して企業規模が社員数10人規模になり、事業黒字が定着し、仕事が安定して取れるようになると、親しい仲間と楽しく仕事ができるので、企業規模を拡大させないベンチャー企業が存在します。

 創業時の経営陣がそのまま経営の中核を続けます。事業黒字が定着しているので、一般的には、IPO(新株上場)をせず、“工房”的な仕事環境で、仲間意識で楽しく仕事を続けます。日本の会社とは何かに関係する現象です。ある意味では、創業時の経営陣が会社を公器化せずに“私物化”しているともいえます。でも、日本では非上場の中小企業に多い形態です。

 テンプスタッフは経営手法に事業計画・戦略を前提としたやり方を導入し、社内に定着させた1990年に4月から新卒採用を始めます。20人の男女の新卒が入社し、社内の企業文化を変えていきます。この第二の創業に成功したテンプスタッフは、会長兼社長だった篠原さんは、水田さんに社長の座を譲り、第二の創業を完成させます。

 テンプスタッフは1990年に株式公開を図りますが、店頭公開準備の直前に株式公開を中止します。



 この辺の経緯は、私の履歴書の文章からでは実はよく分かりません。現時点で考えれば、この時の株式上場回避が良かったのではないかとの感じの文章になっています。

 興味深いのは、突然「店頭公開準備の直前に株式公開を中止する」と、「だから女はだめなんだ」と関係者から罵倒されることです。日本では現時点でも、女性の取締役が少ない会社文化のままです。経営者能力に男女の違いがあるのかどうか、よく分かりません。

 一般に、日本の一部上場企業では、若手の男性が幹部候補生として育成される企業文化です。少なくとも、一部上場企業ではまだ女性登用の道が少ないようです。女性を幹部としてどう育成するかというやり方が未完成なようです。

 会社員として、仕事の基礎が分かる30歳前後で、女性は結婚していると、ちょうど第一子を出産し、産休と育児休暇を取らざるをえない時期です。ここで、幹部候補生から外れます。

 最近話題の“子育て支援策”の拡充は、少子高齢化社会に突入し始めた日本では、優秀な労働力を確保するには、急いで整備すべき施策です。企業の中で、男女差別が無くなることが、日本の企業の競争力を高めるように感じています。ただし、その具体策となると、まだよく分かりません。

 人材派遣業のテンプスタッフ創業者の篠原さんの約32年間の“履歴書”の話は、日本の企業のあり方とは何か、企業経営で男女の差はあるのかなどを考えさせる好材料になっています。

最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
外資系企業 (EGGMAN)
2013-06-29 07:55:23
能力が高い女性は、日本企業には就職せずに、男女平等の外資系企業に入社し、実力で転職していくケースが多いと思います。女性を活用できない日本企業には興味がないのです。
返信する
男性経営者 (ビオラ)
2013-06-29 20:58:43
テンプスタップは第二の創業時に、男性陣よる経営陣に頼らざるをえなかったのは、当時の日本企業は幹部社員候補として、男性しか育成してこなかったからです。
当時の日本企業の体質が分かります。
返信する
男性の技術系人材派遣業 (ももたろう)
2013-06-30 06:36:43
人材派遣業も女性は事務系の方の派遣が多く、男性の人材派遣業は技術系などの専門性の高い派遣が多い印象をもっています。
男性の方たちは非正規雇用者には入らないと思えています。人材派遣業の会社に雇用されているかたちになっているからです。
返信する

コメントを投稿