人気作家の三浦しをんさんの大ベストセラー作品の文庫版として発行された文庫本「舟を編む」を読み終えました。
この親本となった単行本「舟を編む」は、2011年9月17日に光文社から発行され、2012年の本屋大賞を受賞するなど、ベストセラーになりました(文庫本の帯には“100万部突破”と書かれています)。
その文庫本が2015年3月12日に光文社から発行されました。

この文庫本の表紙は、明るい色調の“オトメチック”な雰囲気になっていて、驚きました。単行本では、一見、辞書風のかなり地味なものでした。
今回、何となく再読してみようと、文庫本版を購入しました。自宅の中から、その単行本を見つけ出す自信がないからです。
この「舟を編む」は、“言語”という大海を渡っていく「大渡海」(だいとかい)という舟に相当する辞書を編纂する話です。その主人公は、馬締光也(まじめみつや)です。作者の三浦さんは主人公を務める堅物のイメージの若手編集者の名前を“まじめ”とつけました。辞書編集というあまり派手ではない、地道な仕事をこつこつと真面目にするからでしょう。
出版界“冬の時代”に入り始めたころに、大手総合出版社の玄武書房(げんぶしょぼう)には、「大渡海」という辞書を“良心的な出版社の辞書編集部”の使命として、出したいと考える辞書編集部員がいました。そのベテラン編集部員は、地味な根気がいる辞書編集作業に適した人材を社内で探し回り、見つけます。それが馬締さんでした。
出版界“冬の時代”に、時間と手間がかなりかかる辞書編集は本当に事業回収できるかどうか読めないプロジェクトです。この事業投資は実際に時間がかかるので、話題の流行分野の雑誌の方が事業投資は早く回収できるので、出版社経営陣は好みがちです。
実際に、この小説では、「大渡海」の編集作業に15年もかかりました。辞書編集部のベテラン編集者(辞書づくり37年?)の後釜として、入社3年目の馬締さんが人事異動で辞書編集部に異動し、その中心編集者を務めます。同編集部の別の中堅社員も別の部に異動し、その穴埋めとして辞書編集は初めての編集者が異動してきます。
この「大渡海」の改訂作業中に、経営陣は事業収益性が読めないとして、同辞書編集部にアニメキャラクターの“辞典”編集などを課します。ただでさえ、編集部員が足りない中で、辞書編集部はいろいろと課される難題をなんとかこなします。このあたりは、三浦さんは実際に起こりそうなことを物語に組み込んでいます。
この小説は、主人公の馬締が天性を生かせる仕事に偶然就き、その仕事が楽しくてたまらないことを自覚せずに続ける、好きな仕事をする夢のような話です。仕事に真面目に取り組む先にある“楽園”を感じさせる小説です。
15年かかって、辞書「大渡海」が完成した時には、その監修者として編集作業の要を務めた松本先生は直前に亡くなります。こうした“犠牲”を乗り越えて、言語の海を渡る辞書「大渡海」が発行されます。編集者冥利(みょうり)に尽きる話です。
長くなったので続きは次回に。
この親本となった単行本「舟を編む」は、2011年9月17日に光文社から発行され、2012年の本屋大賞を受賞するなど、ベストセラーになりました(文庫本の帯には“100万部突破”と書かれています)。
その文庫本が2015年3月12日に光文社から発行されました。

この文庫本の表紙は、明るい色調の“オトメチック”な雰囲気になっていて、驚きました。単行本では、一見、辞書風のかなり地味なものでした。
今回、何となく再読してみようと、文庫本版を購入しました。自宅の中から、その単行本を見つけ出す自信がないからです。
この「舟を編む」は、“言語”という大海を渡っていく「大渡海」(だいとかい)という舟に相当する辞書を編纂する話です。その主人公は、馬締光也(まじめみつや)です。作者の三浦さんは主人公を務める堅物のイメージの若手編集者の名前を“まじめ”とつけました。辞書編集というあまり派手ではない、地道な仕事をこつこつと真面目にするからでしょう。
出版界“冬の時代”に入り始めたころに、大手総合出版社の玄武書房(げんぶしょぼう)には、「大渡海」という辞書を“良心的な出版社の辞書編集部”の使命として、出したいと考える辞書編集部員がいました。そのベテラン編集部員は、地味な根気がいる辞書編集作業に適した人材を社内で探し回り、見つけます。それが馬締さんでした。
出版界“冬の時代”に、時間と手間がかなりかかる辞書編集は本当に事業回収できるかどうか読めないプロジェクトです。この事業投資は実際に時間がかかるので、話題の流行分野の雑誌の方が事業投資は早く回収できるので、出版社経営陣は好みがちです。
実際に、この小説では、「大渡海」の編集作業に15年もかかりました。辞書編集部のベテラン編集者(辞書づくり37年?)の後釜として、入社3年目の馬締さんが人事異動で辞書編集部に異動し、その中心編集者を務めます。同編集部の別の中堅社員も別の部に異動し、その穴埋めとして辞書編集は初めての編集者が異動してきます。
この「大渡海」の改訂作業中に、経営陣は事業収益性が読めないとして、同辞書編集部にアニメキャラクターの“辞典”編集などを課します。ただでさえ、編集部員が足りない中で、辞書編集部はいろいろと課される難題をなんとかこなします。このあたりは、三浦さんは実際に起こりそうなことを物語に組み込んでいます。
この小説は、主人公の馬締が天性を生かせる仕事に偶然就き、その仕事が楽しくてたまらないことを自覚せずに続ける、好きな仕事をする夢のような話です。仕事に真面目に取り組む先にある“楽園”を感じさせる小説です。
15年かかって、辞書「大渡海」が完成した時には、その監修者として編集作業の要を務めた松本先生は直前に亡くなります。こうした“犠牲”を乗り越えて、言語の海を渡る辞書「大渡海」が発行されます。編集者冥利(みょうり)に尽きる話です。
長くなったので続きは次回に。