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にっぽん男優列伝(257)長門裕之

2014-12-18 00:31:33 | コラム
34年1月10日生まれ、2011年5月21日死去。享年77歳。
京都出身。

弟の津川雅彦より、兄の長門裕之(ながと・ひろゆき)さんのほうが好きです。
ついでにいえば、津川雅彦夫人(朝丘雪路)より、長門裕之夫人(南田洋子)のほうが好きです。

長門さんは、イマヘイ今村昌平の映画に数多く出演しているから。
南田洋子は、『幕末太陽伝』(57)で最高に美しかったから。かなぁ。

それでも若手のころは弟のほうが「はるかに」人気がありましたし、それはキャリアにおける主演作の数にも表れています。
長門さんって、もちろん主演も務めるけれど、意外と助演級の配役が多いのですよね。

兄弟の確執。そして和解。
いわゆる暴露本の出版。
夫人の認知症を明かした経緯。

などなど、その生涯がひじょうに映画的ですから、いつか伝記映画でも創られるのではないでしょうか。
私生活のイメージで「嫌いだ」というひとが居ますが、まぁそういうこともあるでしょう。
どれだけろくでなしでも、主演したいくつかの作品は映画史に燦然と輝いています。やっぱりそこで評価していきたいですよね。


※キャリアの頂点は、なんといってもこれ。
『太陽の季節』も捨て難いけれど、「横須賀が豚で埋め尽くされる」というイマヘイの発想力に一票を入れたい。




<経歴>

父は俳優・沢村国太郎、母は牧野省三の四女・マキノ智子、つまり祖父は牧野省三という芸能一家に育つ。

立命館大学中退。

芸能一家の宿命でしょうか、幼少期より子役として活躍、映画の初出演は40年の『続清水港』でした。
このころはまだ芸名を沢村アキヲとして活躍していました。

戦前の作品は、ほかに『無法松の一生』(43)など。

戦後、日活に入社。

54年
『濡れ髪権八』『お役者変化』

55年
『恋天狗』『未成年』

転機は56年に訪れます。

『銀心中』『愛情』『暁の逃亡』を経て、
石原慎太郎の原作を映画化した『太陽の季節』で主演に抜擢、太陽族のアンちゃんを格好よく演じました。

「石原裕次郎のデビュー作」としてのほうが有名だったりしますが、長門さんの演技はフレッシュで悪くないですし、それに、この映画で共演したことにより南田洋子と結婚することになるのですから、かなり大きな転機だったといえるでしょう。

同年、弟が『狂った果実』に出演。
太陽族ブームが到来し、兄弟そろって波に乗ったかと思いきや、スターになったのは弟のほうでした。

それでも長門さんは地道にキャリアを築き続けていきます。
その理由のひとつに、「南田洋子と結婚する」というのがありました。
彼女の年収を超えなければ、結婚はない―そんな風に決めていたようです。

そんなギラギラした青年を見初めたのが、イマヘイだったのです―。

57年
『月下の若武者』『唄祭り喧嘩旅』『十七才の抵抗』『危険な関係』

58年
『銀座の沙漠』『悪魔の爪痕』『俺は情婦を殺す』『地獄の罠』

『盗まれた欲情』でイマヘイ映画に初参加、この年は『果しなき欲望』にも起用されイマヘイ組の常連に。

どっちを観てほしいかといえば、『果しなき欲望』でしょうか。
画面を分割し、地上と地下を同時進行で描く演出にハッとするでしょうから。

59年
『絞首台の下』『逃亡者』『不道徳教育講座』『才女気質』『にあんちゃん』

60年
『けものの眠り』『十六歳』『傷だらけの掟』

61年
『天に代わりて不義を討つ』『助っ人稼業』『ろくでなし野郎』『夜の挑戦者』

そして、トップ画像&リンク動画の『豚と軍艦』に主演。
イマヘイがいう重喜劇が完成した歴史的傑作ですよ、ほんとうに。

62年
『秋津温泉』『憎いあンちくしょう』『裸体』『破戒』

63年
『秘剣』『危い橋は渡りたい』『古都』『無宿人別帳』

イマヘイもうひとつの傑作『にっぽん昆虫記』にも出演し、女優陣のサポートをこなす。


【日本侠客伝シリーズ 64~67】

『日本侠客伝』『日本侠客伝 関東篇』『日本侠客伝 浪花篇』『日本侠客伝 血斗神田祭』『日本侠客伝 雷門の決斗』『日本侠客伝 斬り込み』『日本侠客伝 白刃の盃』


64年
『無頼無法の徒 さぶ』『図々しい奴』『にっぽんぱらだいす』『駈け出し刑事』

65年
『暖春』『関東果し状』『無頼漢仁義』『大根と人参』

66年
『とべない沈黙』『男の勝負』『日本一のマジメ人間』

68年
『侠客列伝』『新網走番外地』

69年
『博徒無情』『残酷おんな私刑』『日本残侠伝』

70年
『女の警察 国際線待合室』『昭和残侠伝 死んで貰います』

71年
『任侠列伝 男』『緋牡丹博徒 仁義通します』

・・・ね、主演作も多いですが、それを上回る数なんですよね助演級が。


70年以降は完全に主演級を退き、脇をしめるといったポジションに。
作品解説をしたいところですが、ひじょうに多いのでタイトルだけを列挙します。


『日本暴力団 殺しの盃』(72)、『バージンブルース』(74)、『赤ちょうちん』(74)、『どんぐりッ子』(76)、
『人間の証明』(77)、『仁義と抗争』(77)、『九月の空』(78)、『茗荷村見聞記』(79)。
『五番町夕霧楼』(80)、『典子は、今』(81)、『連合艦隊』(81)、『泪橋』(83)、『テイク・イット・イージー』(86)、『南へ走れ、海の道を!』(86)、『ハチ公物語』(87)、『スケバン刑事』(87)、『TOMORROW 明日』(88)、『リボルバー』(88)、『砂の上のロビンソン』(89)、『将軍家光の乱心 激突』(89)、『226』(89)。

『リメインズ 美しき勇者たち』(90)、『浪人街』(90)、『遠き落日』(92)、『女殺油地獄』(92)、『夢の女』(93)、『眠れる美女』(95)。
『シベリア超特急2』(2000)、『弱虫(チンピラ)』(2000)、『手紙』(2002)、『おにぎり』(2004)。

2006年、弟がマキノ雅彦名義で撮った『寝ずの番』に出演。
死の間際にある噺家をユーモアたっぷりに演じ、おおいに笑わせてくれました。

『夢のまにまに』(2008)、『次郎長三国志』(2008)、『プライド』(2009)、『新宿インシデント』(2009)、『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』(2009)。


2011年5月21日―。
肺炎による合併症で死去、享年77歳。

夫人が亡くなって、1年と7ヶ月が過ぎていました。

遺作は、『青い青い空』(2010)。

あぁ、また『豚と軍艦』が観たくなってきたなぁ。。。

…………………………………………

本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『にっぽん男優列伝(258)中村嘉葎雄』

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3 コメント

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主役としてより (夢見)
2014-12-18 09:20:23
脇に回った演技の方が好きな俳優さん


おしどり夫婦としての長年の司会の仕事

そうしたものも思い出されてきました


南田洋子さんの落ち着いた話し方 好きでした


日活のスターもみんな鬼籍に入ってまいりますね
返信する
こんばんわ~(^o^)丿 (ゆみ)
2014-12-18 20:08:09
知っている人が、亡くなるとさびしくなります。77歳~有名な方でも亡くなるんだなぁ~有名なら死なない思い込んでいるバカな私です。

若いときは津川雅彦さんが好きで、なんて~ハンサムな人だっとファンでしたが、後年にはだんだんいやになり長門裕之さんのほうが良くなりました~(^^
南田洋子さんも素敵でした。
返信する
今晩は (oyajisann)
2014-12-18 23:10:56
母が南田洋子さんのファンだった
のでその旦那さんてイメージがと
ても強くありました。
夫婦で司会してましたね。
テレビでの印象が強いです。
映画観てない証拠かな?
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