ガソリンスタンド(GS)の減少が地方の衰退に拍車をかけるとの懸念が広がっている。経済産業省の調べでは、20年前と比べて全国のGS数は半減しており、日常の移動手段となっている乗用車や暖房用の燃料の調達がむずかしくなっているためだ。車も暖房も電化が進んでいるが、燃料方式がなくなるわけではない。事態を重視する同省が初めて対策に乗り出した群馬県下仁田町を取材した。【山本有紀】

 「70〜80代のドライバーが多く、販売量も減る一方です」

 山あいを走る国道254号沿いに集落が並ぶ下仁田町東野牧。1992年からGSを経営している佐藤公夫さん(74)がため息をついた。車を運転できない高齢者宅などへは暖房用の灯油も配達している。町内のGS減少で配達範囲が拡大し、負担は増える一方だ。

 生活インフラとなったGSがなくなることに、町民の間にも「冬場の暮らしが立ちゆかなくなる」「災害などで孤立した場合に困る」といった不安が広がっていた。

 経産省の統計によると、全国のGS数は94年度末の6万421カ所をピークに減少へと転じ、2016年度末には3万1467カ所と半数にまで落ち込んだ。下仁田町も約20年前には約10カ所あったが、人口減少などで撤退が相次ぎ、現在は佐藤さんのGSを含め計2カ所しかない。

 全国的な減少の背景には、電気自動車や低燃費車の普及、少子高齢化に伴うガソリンの需要減に加え、施設の老朽化や経営者の高齢化などに伴う廃業の増加がある。

 同省はGSが3カ所以下の市町村を「GS過疎地」に指定し、対策に乗り出している。17年3月現在、全国自治体の2割近くに当たる302自治体が指定され、下仁田町は対策作りへの支援を同省に要請した。

 GS過疎地の中には、地域住民や地元企業が設置した会社が廃業GSを買い取るなどして生き残りを図る地域もある。同省や石油商業組合などが対策を検討するため15年に作った協議会は、先進事例を紹介するハンドブックを作成し、行政主導で取り組むよう促しているが、市町村からは「実際に何をしていいか分からない」といった声が少なくない。

 下仁田町も「最低2カ所のGS」を残す方針を立て、維持費などを抑える方法などを考案中だが、特効策は見いだせていない。町人口は17年10月現在の7661人が、40年には半数の3847人となり、高齢化率は60%に達すると見込まれる。町の担当者は、車や農機具のガソリンや暖房用灯油を供給するGSのさらなる減少が町の衰退に拍車をかけると危機感を抱く。

 佐藤さんも後継者がいないこともあり、廃業が頭をよぎることもある。だが、佐藤さんと一緒に給油作業をしていた妻の美智子さん(70)が言った。「地元の人が困るから、やめたくてもやめられないんです」


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SS過疎地@支援の条件は町民の利用率
http://blog.goo.ne.jp/m128-i/e/da728c4f6b18de53ef0d4365e0d0bb56


※ここでも「卸格差」「業転」には触れていない。