masumiノート

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請負人 越後屋 №13

2010年05月11日 | 作り話
石崎雅夫が大木明子に出会ったとき、正志(まさし)は5才だった。
1970年頃の話だ。
日本が高度成長期に突入してモータリゼーションの波が来ていた。

当時、明子の実家は山のふもとで薪炭業を営んでいた。
未だ公にはされていなかったが、ニュータウン開発の計画があり、明子の家の前の道路は拡張されることが決まっていたのである。
その情報を政治家から入手した上司と共に、販路拡大のため、キラキラダイヤのサインポールを掲げたGSを開業してくれるよう説得に行っていたのだ。

2、3回は上司と一緒だったが、後は27才の石崎に任されたのである。
しかし、いつも小一時間待たされたあげくに断られていた。

「人口何百人の村で、車なんぞ持っているのは村長さんくらいじゃ。そんな所にGSなんか作って商売になるわけが無かろう」というのが明子の父親の言い分だった。

土地開発の計画を話すことが出来れば説得は容易だったかも知れないが、政治家の土地買収の企てもあり、上司からもきつく口止めされていたのである。

また「ワシはネクタイ締めて仕事しとるヤツは信用せん」と言うのも彼の口癖だった。

通い出してから3ヶ月くらい経った頃だったろうか・・・
いつもは事務の中年女性がお茶を運んできて「少々お待ちください」と言われて小一時間待たされるのだが、その日はお茶が出て来なかった。

応接セットのテーブルの上に帳簿が無造作に置いてあるのを見て、一旦は躊躇したが、暇を持て余しつい手を伸ばした瞬間

「これ!マー君ダメでしょ!」と声がした。

ビクッとして、思わず「ごめんなさい」と言いながら後ろを振り向くと、戸棚からクッキーの缶を取ろうとしていた正志と、お茶を乗せたお盆を手にした明子の姿が・・・

二人がきょとんとこちらを見つめ、明子が私の顔を見ながら「マー君?」と小首を傾げる。
コクンと頷く私を見て
「やーい、マー君、叱られたぁ~」とはしゃぐ正志につられて私と明子も顔を見合わせて笑った。

つづく




※この物語はmasumiさんの被害妄想に基づくフィクションです(^^;
実在の人物及び団体とは一切関係ございません。

尚、加筆修正及びキャラの変更等もあるやも知れませぬことをお断り申しておきまする(^^;



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