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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「エブリンの夢」

2020-12-03 15:40:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月28日07:00.天候:晴 福島県南会津郡南会津町 グリーンホテルミナト5F客室]

 リサ:「……はっ!」

 枕元に置いたスマホからアラームが鳴り、それでリサは目が覚めた。

 善場:「ううーん……」

 パッとリサがアラームを止めると、それで善場も起きた。
 善場は部屋備え付けの浴衣を着ている。

 善場:「おはよう、リサ」
 リサ:「お、おはよう……」
 善場:「どうしたの?汗びっしょりよ?悪い夢でも見た?」
 リサ:「うん。見た」
 善場:「とにかく、シャワー浴びて汗を流した方がいい。ただでさえBOWは体臭が強いからね」

 より多くの人間を捕食した者ほど体臭が強くなる傾向がある。

 リサ:「愛原先生、私の体臭好きだって言ってくれた」
 善場:「臭いフェチ?とにかく、洗って着替えた方がいいから。分かった?」
 リサ:「はい」

 リサはベッドから出ると、バスルームに向かった。
 リサは白いTシャツに黒いスパッツを穿いている。

 善場:(マスター認定した愛原所長と、上位BOWの言う事は聞く、か……)

 善場はリサの目を見て命令した。
 リサの目にはどのように見えたのかは不明だが、恐らく自分より上位のBOWに見えたとしたら聞くだろう。
 これは最近のBOWの傾向でもある。
 2010年代に入ってから、上級BOWが下級BOWやクリーチャーを使役する傾向が見られるようになった。
 最近話題になっているBOWエブリンもその1人。
 自身が保有している特異菌を感染させた人間を自由に使役できる。
 日本版リサ・トレヴァーは、早くからこの能力を開花させていた。

 リサ:(あの人に反発して、愛原先生に迷惑を掛けるのもアレだからね)

 ……というわけでもなく、リサの判断によるものだった。
 確かにリサは、学校では必ずしも優良生徒というわけではない。
 成績そのものは優秀であるが、素行に関しては下級生イジメを起こして停学になるほど。
 というか……もう既に『使役』する為の『種』は蒔いているのだが、あまり必要無いので発芽させていないだけだ。
 それはリサ自身が強いBOWである為、わざわざ配下を作る必要が無いというのもある。
 タイラントなど、力自慢のBOWを護衛に使うくらいはしていたことがあるが。
 わざわざ人間を使う必要は無いというのが現状だ。

[同日08:00.天候:晴 同ホテル2Fレストラン]

 レストランで朝食を取る。
 コロナ禍前は、ベタなホテル朝食の法則でバイキングだったらしいが、今はそれではなく、定食方式となっている。

 リサ:「えっ、お兄ちゃんも同じ夢を見たの!?」
 高橋:「ああ。どうやらそうらしいな」
 善場:「後で詳しく聞かせてもらえますか?」
 高橋:「姉ちゃんは見てねーのか?」
 善場:「私は見てないですねぇ……」

 リサと高橋は同じ夢を見たようだ。
 大まかな内容はこうだ。
 2人はとある廃屋の中で目が覚めた。
 その廃屋は日本の家というよりは、欧米にある一般の住宅といった感じであった。
 アメリカのホームドラマに出て来るくるような家を廃屋にした感じ。
 映画だと、“ホーム・アローン”とかに出て来るような家でもある。
 その家から脱出しなくてはならないのだが、リサと高橋が上手い事連携した。
 普通なら、家の玄関とか勝手口とか窓から脱出しようとするだろう。
 しかし窓には格子が取り付けてあったり、或いは板が打ち付けられていたりと、そこからの脱出は不可。
 玄関の鍵も、どういうわけだか内鍵ではなく、内側からも鍵が無いと開かないタイプ。
 高橋はどうにかその鍵を見つけるものの、そこから脱出しようとするとリサが止めた。
 変な臭いがするから、そこから出るのは止めた方がいいと。
 昔の高橋ならそんなリサの発言、戯言と意にも介さず無視していただろう。
 だが、今は違う。
 リサの発言を重要なヒントとし、他の出口を探すことにした。

 高橋:「地下室に現れた変な化け物は覚えているか?」
 リサ:「うん、知ってる!黒いオバケ!」
 善場:「特徴は?」
 リサ:「黒いオバケ!」
 善場:「もっと詳しくお願いします」
 高橋:「背丈は俺よりも高ェんだよ。で、すっげーカビ臭いんだよな」
 善場:「夢の中なのに、カビの臭いがしたんですか?」
 高橋:「何かな」

 高橋の身長は181cmである。
 それよりも高いというのだ。

 リサ:「何かしたよね、カビの臭い」
 高橋:「何かしたな」
 善場:「高橋助手より大きくて、カビの臭いのするオバケ……。黒いオバケ……黒カビのオバケ……クリーチャー」

 善場は頭の中でイメージ検索を行った。
 そして、何やらヒットしたらしい。
 今度はスマホを取り出して、それで検索したようだ。

 善場:「その黒いオバケというのは、こんな感じですか?」

 善場はスマホの画像を高橋とリサに見せた。

 https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%83%83%E3%83%89
(ピクシブ百科事典より、イメージ。具体的に動く画像はYouTubeに多数ある)

 但し、善場が実際に見せているのは本物の画像である。

 リサ:「そう、それ!」
 高橋:「そうだそうだ。そんな感じだ」
 善場:「これはモールデッドと言います」
 リサ:「もーるでっど?」
 善場:「カビを英語でモールドと言い、デッドは“死人”という意味ですね。その2つの単語を合わせて、モールデッドと言います。これは人間が特異菌に感染し、クリーチャー化したものです」
 高橋:「ゾンビみてーなモンか?」
 善場:「そうですね。立ち位置的にそうなります。特異菌に感染した人間の成れの果ては、3つあります。まずは特異菌がそもそも体に合わず、死亡するパターン。もう1つは、このようにモールデッドに転化するパターン。もう1つは人間の姿を保ったまま、BOWに転化するパターンです。アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードでは、舞台となった農家の住人達が最後のパターンでした」

 あくまでも普段は人間の姿を保っている状態という意味であり、思考や嗜好、人格などが大きく変わることが確認されている。
 また、敵と対戦する時、自身が不利になると、おぞましい化け物に変化する所は従来のBOWと変わらない。

 善場:「それが現れたのですね?」
 高橋:「一匹だけな。俺は家ん中でハンドガンを手に入れたんだが、それが効いてるのか効いてないのか分かんねー状態でよ。で、結局、リサがブッ殺してくれた」
 リサ:「取りあえず、触手を絡めて首をねじり切ったら動かなくなっちゃった」
 善場:「新型のクリーチャーであっても、旧型のBOWには勝てないようですね」
 高橋:「その地下室で3階の窓の鍵を手に入れて、そこから脱出したんだ。俺はそこで目が覚めた」
 リサ:「私は窓から出る時、後ろから、『あーあ。負けちゃった』って声が聞こえた」
 善場:「どんな声?」
 リサ:「私より年下の女の子っぽい声」
 善場:「それが恐らくエブリンでしょうね」
 高橋:「おいおい。まさか俺も感染してるんじゃねーだろーな?」
 リサ:「お兄ちゃんからは、そういう変な臭いはしないけどね」
 善場:「でも万が一ということもあります。幸いBSAAのアメリカ支部には、特異菌のサンプルがありますので、それで抗体検査ができます。私から極東支部に依頼して、取り寄せてもらいましょう」
 高橋:「そんな簡単にできるのか?」
 善場:「日本国内にエブリンの存在の恐れありと報告はしていますので、それを理由に依頼することは可能です。もちろん、今回お2人が見た夢のことも報告させて頂きます」
 高橋:「そうなのか。夢の中の話が本当だとすると、リサの方が強いっぽいな」
 善場:「まだ分かりませんね。日本国内にもし本当にエブリンがいると仮定して、彼女はまだ何の命令も受けていないのかもしれません。しかし、私達……特にリサに興味を持って、色々調べているのかもしれません。もしかしたら、お友達になりたいのかも」
 リサ:「BOWのライバルなら要らないねぇ」

 BOWには仲間意識を持って群れる種類もあるが、多くは単独プレーである。
 特に、ラスボスを張れるほどの強さを持つ者は。
 それは強い独占意識の表れであるが故。
 なので自分より弱い人間を『友人』にすることはあっても、自分と同等或いはそれ以上の強さBOWと『友人』になることはできないのである。
 リサをして、他のリサ・トレヴァー達を『仲間でも何でもない』と言い放つほど。

 善場:「9時半にはホテルを出ますので、それまではゆっくりしててください」
 高橋:「分かった」
 リサ:「早く愛原先生に会いたい」
 高橋:「ああ、全くだ」

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