“新人魔王の奮闘記”より。まだまだ続きます。
[09:45.闇の森南部 横田高明]
先般の党大会における大感動は未だ冷めやらぬものであります。さてさて、まもなく森の出口です。エルフどもの追っ手を振り切り、魔の森駅から荷物電車に飛び乗ってしまえばこっちのものです。正に、功徳ですね~。
「おっ、いい女!」
その時です。更なる功徳が現れました。何と、前方に赤い鎧が目立つ冒険者の姿が見えたのです。ショートカットの茶髪に、細身の剣を提げております。
私は彼女に飛び込みました。その刹那、目の前が真っ暗になったのです。
[同時刻。闇の森南部 赤い鎧の女剣士]
前方から殺気が迫ってくるのが分かる。ようやく、地元のエルフ達に見つかったか?ちょうどいい。彼らからハルの居場所を聞いてみよう。たまたま別の地方に行った時、知り合ったエルフから習ったこともあって、エルフ語も少しは分かる。
が、どうやら半分以上違ったようだ。
「そこのお嬢すゎーん!!」
エロ目が目立つオヤジ。その後ろを疲労困憊といったエルフ達が追いかけている。何だ?あのオヤジも森に入り込んで、エルフ達に追われているのか?でもそれにしちゃ、ちょっと様子が……。
「クフフフフ!一生ついていきます!おねーさま!!」
オヤジはいきなり私に抱きついてこようとした。
「わぁぁ!?な、何しやがる、このキモオヤジ!!」
私は咄嗟にレイピアではなく、右足でオヤジのみぞおちを蹴り上げた。
「うおっ!?」
オヤジは数メートルほど飛んだあと、地面に倒れた。よく見るとこのオヤジ、頭に女性ものの下着をかぶっている。モノホンの変態か!?
「お、追いついたぞ!」
「神妙にしろ!」
「お前は死刑だ!」
弓矢で武装したエルフの男女5人が私達を取り囲んだ。しかしまずは、オヤジを縛り上げた。
「ハァ……ハァ……!も……もっと、キツく縛ってください……!!」
「な、何だコイツ!?」
「本当に意識を失ってるのか!?」
そして、手の空いたエルフの男が1人、私に目を向ける。
「キサマ、何者だ?」
「見ての通り、ただの冒険者よ。大丈夫。このオヤジとは知り合いじゃないから。ついでに言うと、このオヤジに化けたと思われる幻魔獣なら、そこでブッ殺しておいたよ」
「なにっ!?」
「幻魔獣だと!?」
因みにこいつら、普通に人間の言葉で私に話しかけていやがる。何だ。せっかく、エルフ語で会話してやろうと思ったのに。
「幻魔獣が何で森の中に!?」
「そんなのこっちが聞きたいよ!」
「……で、アンタはこの森に何しに来たの?」
今度は2人いる女のうち、1人の女が話し掛けてきた。
「ここにアベ・ハルアキと何人かの人間達が視察で入って来たでしょ?私はアベ・ハルアキに会いに来たの?知ってる?」
エルフ達はエルフ語で、なにやら話し合っていた。うち1人は、私が指差した幻魔獣の死体が転がっている方に行く。で、すぐに戻ってきた。
「こんなのが落ちていた」
戻って来た男は眼鏡と、小さな袋みたいなものを持ってきた。この眼鏡、キモオヤジが掛けているものに似ている。幻魔獣は何者かに化ける時、その対象となる者の持ち物を盗んで依り代にすると聞いたことがある。多分その眼鏡は、このオヤジのだったのだろう。眼鏡は分かったが、これは……。
「シルカが持っていた飴玉の包み紙に似てるな……」
別の男が言った。
「ま、まさか……!!」
[11:00.闇の森“中央の村” 安倍春明]
何てこった……。このままではルーシーが魔王軍を率いて、この森に火を点けてでも私達を捜し出すことだろう。せっかくエルフ族と友好を築けたというのに……横田の大バカヤロー!
あー、もう!せめて、シルカの意識が戻ってくれればなぁーっ!
「アベさん、仲間達が囚人を捕まえて戻って来た」
サイラスが私達が滞在している家に入って来た。
「もういいよ。責任取らせて、死刑にしてやってくれ」
「……それは村で決めることだ。とにかくアベさん、すぐにこの村を離れてくれ。このままだと、みんな不幸になってしまう」
「ああ。そうだな」
「ただその前に、1つ確認してほしいことがあるんだ」
「確認?何だ?」
「アベさん、レナフィール・ハリシャルマンっていう名の人間を知ってるか?」
「ああ。レナね。懐かしいなぁ。昔、冒険やってた頃のパーティで紅一点の……」
サイラスは家のドアを開けた。
「そこにいるのだが……」
「はいーっ!?」
そこには間違いなく、何年も前とほとんど変わらぬ出で立ちの豪傑がいた。
「アンタ、何ダサく捕まってんのよ?」
「れ、レナ!?何でここに!?」
[12:00.闇の森“中央の村” 安倍春明]
どうやら私達の疑いは晴れそうだ。まさか、ピンチを助けてくれたのが、かつての冒険者仲間だったとは……。赤い鎧を好んで着用した彼女は1番最後に仲間になった女剣士で、スティーブンと同じく、この世界で生まれ育った人間だ。
ただ、彼女の生い立ちについて、明らかにされることがないままパーティは解散となってしまった。
「そうか。幻魔獣か……」
「総理、その幻魔獣とやらが横田に化けて、女の子に毒を飲ませたのでは?」
セバスチャンがエルフ達やレナにコーヒーを入れながら言った。こいつ、どんだけコーヒー豆のストックを持ってるんだ?
「だけど、まだ証拠が無い。確かに幻魔獣は横田に化けていた。それはレナの証言もあるから間違いない。でも、飴玉の包み紙を持っていたって、『途中で拾った』って言い張れば……」
「大丈夫ですよ。当の本人はもう死んでるんですから」
「責任をただのモンスターになすり付けるのは簡単だが、結局シルカの意識が戻らないままだと心苦しいな」
「お優しい首相様ですが、厳しい女王様を何とかしないと」
レナがコーヒーを啜りながら言った。
「あっ、そうだった。せめて、魔の森駅まで行って、そこから王宮に連絡を取らないと……」
突然、強風が吹いてきた。そして、空が急に暗くなる。中央の村のある場所は森の開けた場所にあるため、比較的明るい立地にある。
「な、何だ、あれは!?」
1人のエルフの村人が上空を指差した。
「ブッ!」
私は口にしたコーヒーを吹き出した。上空にいたのは……!?
「次回に続きます!以上!!」
「横田っ!!」
[09:45.闇の森南部 横田高明]
先般の党大会における大感動は未だ冷めやらぬものであります。さてさて、まもなく森の出口です。エルフどもの追っ手を振り切り、魔の森駅から荷物電車に飛び乗ってしまえばこっちのものです。正に、功徳ですね~。
「おっ、いい女!」
その時です。更なる功徳が現れました。何と、前方に赤い鎧が目立つ冒険者の姿が見えたのです。ショートカットの茶髪に、細身の剣を提げております。
私は彼女に飛び込みました。その刹那、目の前が真っ暗になったのです。
[同時刻。闇の森南部 赤い鎧の女剣士]
前方から殺気が迫ってくるのが分かる。ようやく、地元のエルフ達に見つかったか?ちょうどいい。彼らからハルの居場所を聞いてみよう。たまたま別の地方に行った時、知り合ったエルフから習ったこともあって、エルフ語も少しは分かる。
が、どうやら半分以上違ったようだ。
「そこのお嬢すゎーん!!」
エロ目が目立つオヤジ。その後ろを疲労困憊といったエルフ達が追いかけている。何だ?あのオヤジも森に入り込んで、エルフ達に追われているのか?でもそれにしちゃ、ちょっと様子が……。
「クフフフフ!一生ついていきます!おねーさま!!」
オヤジはいきなり私に抱きついてこようとした。
「わぁぁ!?な、何しやがる、このキモオヤジ!!」
私は咄嗟にレイピアではなく、右足でオヤジのみぞおちを蹴り上げた。
「うおっ!?」
オヤジは数メートルほど飛んだあと、地面に倒れた。よく見るとこのオヤジ、頭に女性ものの下着をかぶっている。モノホンの変態か!?
「お、追いついたぞ!」
「神妙にしろ!」
「お前は死刑だ!」
弓矢で武装したエルフの男女5人が私達を取り囲んだ。しかしまずは、オヤジを縛り上げた。
「ハァ……ハァ……!も……もっと、キツく縛ってください……!!」
「な、何だコイツ!?」
「本当に意識を失ってるのか!?」
そして、手の空いたエルフの男が1人、私に目を向ける。
「キサマ、何者だ?」
「見ての通り、ただの冒険者よ。大丈夫。このオヤジとは知り合いじゃないから。ついでに言うと、このオヤジに化けたと思われる幻魔獣なら、そこでブッ殺しておいたよ」
「なにっ!?」
「幻魔獣だと!?」
因みにこいつら、普通に人間の言葉で私に話しかけていやがる。何だ。せっかく、エルフ語で会話してやろうと思ったのに。
「幻魔獣が何で森の中に!?」
「そんなのこっちが聞きたいよ!」
「……で、アンタはこの森に何しに来たの?」
今度は2人いる女のうち、1人の女が話し掛けてきた。
「ここにアベ・ハルアキと何人かの人間達が視察で入って来たでしょ?私はアベ・ハルアキに会いに来たの?知ってる?」
エルフ達はエルフ語で、なにやら話し合っていた。うち1人は、私が指差した幻魔獣の死体が転がっている方に行く。で、すぐに戻ってきた。
「こんなのが落ちていた」
戻って来た男は眼鏡と、小さな袋みたいなものを持ってきた。この眼鏡、キモオヤジが掛けているものに似ている。幻魔獣は何者かに化ける時、その対象となる者の持ち物を盗んで依り代にすると聞いたことがある。多分その眼鏡は、このオヤジのだったのだろう。眼鏡は分かったが、これは……。
「シルカが持っていた飴玉の包み紙に似てるな……」
別の男が言った。
「ま、まさか……!!」
[11:00.闇の森“中央の村” 安倍春明]
何てこった……。このままではルーシーが魔王軍を率いて、この森に火を点けてでも私達を捜し出すことだろう。せっかくエルフ族と友好を築けたというのに……横田の大バカヤロー!
あー、もう!せめて、シルカの意識が戻ってくれればなぁーっ!
「アベさん、仲間達が囚人を捕まえて戻って来た」
サイラスが私達が滞在している家に入って来た。
「もういいよ。責任取らせて、死刑にしてやってくれ」
「……それは村で決めることだ。とにかくアベさん、すぐにこの村を離れてくれ。このままだと、みんな不幸になってしまう」
「ああ。そうだな」
「ただその前に、1つ確認してほしいことがあるんだ」
「確認?何だ?」
「アベさん、レナフィール・ハリシャルマンっていう名の人間を知ってるか?」
「ああ。レナね。懐かしいなぁ。昔、冒険やってた頃のパーティで紅一点の……」
サイラスは家のドアを開けた。
「そこにいるのだが……」
「はいーっ!?」
そこには間違いなく、何年も前とほとんど変わらぬ出で立ちの豪傑がいた。
「アンタ、何ダサく捕まってんのよ?」
「れ、レナ!?何でここに!?」
[12:00.闇の森“中央の村” 安倍春明]
どうやら私達の疑いは晴れそうだ。まさか、ピンチを助けてくれたのが、かつての冒険者仲間だったとは……。赤い鎧を好んで着用した彼女は1番最後に仲間になった女剣士で、スティーブンと同じく、この世界で生まれ育った人間だ。
ただ、彼女の生い立ちについて、明らかにされることがないままパーティは解散となってしまった。
「そうか。幻魔獣か……」
「総理、その幻魔獣とやらが横田に化けて、女の子に毒を飲ませたのでは?」
セバスチャンがエルフ達やレナにコーヒーを入れながら言った。こいつ、どんだけコーヒー豆のストックを持ってるんだ?
「だけど、まだ証拠が無い。確かに幻魔獣は横田に化けていた。それはレナの証言もあるから間違いない。でも、飴玉の包み紙を持っていたって、『途中で拾った』って言い張れば……」
「大丈夫ですよ。当の本人はもう死んでるんですから」
「責任をただのモンスターになすり付けるのは簡単だが、結局シルカの意識が戻らないままだと心苦しいな」
「お優しい首相様ですが、厳しい女王様を何とかしないと」
レナがコーヒーを啜りながら言った。
「あっ、そうだった。せめて、魔の森駅まで行って、そこから王宮に連絡を取らないと……」
突然、強風が吹いてきた。そして、空が急に暗くなる。中央の村のある場所は森の開けた場所にあるため、比較的明るい立地にある。
「な、何だ、あれは!?」
1人のエルフの村人が上空を指差した。
「ブッ!」
私は口にしたコーヒーを吹き出した。上空にいたのは……!?
「次回に続きます!以上!!」
「横田っ!!」
みなさんこんにちは。
ポテンヒットさん「レーサーの番手」って、カーレースで云うところの
スリップストリームのことですか・・・??!
ここにも私の知らない世界があるのですね。
バス旅をしていると、たまーにポテンヒットさんの御紹介されたと思われる場面を見ることができます。
バスが走るくらいの広さの道路での出来事なんですね。
レーサーという人種がいる。かっけ~チャリに乗り、スピードとテクニックを備え、華麗に風を切って疾走する奴らだ。競輪選手やチャリメダリストはもちろん、アマチュアでもただ者でないレーサーはいっぱいいる。そのレーサーの番手に入って風避けになって貰おうという生意気な技を、例によって自己満に語ろうw
俺はレーサーではない。脚力も技術もないが、それ以前に乗ってるチャリが中古で15000円ぽっちだ。酒に例えれば、レーサーがナポレオンだとすると、俺なんかチェイサーw
そうよ、チェイサーよ。追ってやるぜ!
街でも広野でも、とにかくレーサーを見かけたらすかさずマークだ。ソッコーで番手に入る。車間(着差ではない)は1輪くらいにまで詰めて良い。追突やケンカになる事はまず無い。レーサーもチェイサー同じチャリ仲間。そのへんは暗黙の了解。なんつ~か、先行レーサーからすれば「おっ?来んのかい」って感じw
むしろ、番手に入られるって事は光栄で嬉しい事だ。脚を認められ、走りを注目されるという事である。先行の心理は「おっ?俺を風避けにする気か?しゃ~ね~な。いいけどチギレんなよw」って感じ、だと思うw
これが意外とチギレないんだな~w
先行の受ける風圧を100とすると、番手の風圧は50。半分で済むのだ。これはデカイ!さすがに先行がプロ選手だとブッチギレてしまうが、たいていのチャリ好きアマチュアレーサーからはチギレる事はない。いや~、番手ってホント楽っ♪
なので、先行から「番手を代わってくれ」のサインを出される事もあるw
「ハイハイ、いいですよ。でも俺は脚ないから、あんまり引っ張れないけどねw」
「いいよ。ちょっと休んだら、また俺が先行すっからw」
「つ~か俺もうバテたw先行たのんますw」
「悪りぃ~、俺そこ左に曲がるから。あとはひとり旅ヨロシクw」
「サンキュー!アンタも気をつけてなw」
お互い会釈して別れる。チャリ旅には、こういったショートストーリーもあったりするのだw