[8月27日21:00.天候:雷雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fロビー]
〔「……関東地方全域で大気の状態が非常に不安定となっており、東京都心では夜半過ぎに掛けて雨が非常に強く降る所があります。道路冠水などには十分注意してください。また、東京都全域で雷、強風注意報が発令されており、落雷や突風にも注意が必要です。続きまして……」〕
エレーナ:「ここにいないで、さっさと部屋に戻りなよ」
鈴木:「エレーナこそ、宅急便行かないの?」
エレーナ:「こんなゲリラ豪雨の中、行けるわけないじゃない」
ロビーのテレビで気象情報を見ていた鈴木。
因みに今日、エレーナは夜勤ではない。
オーナー:「ハハハハ。それじゃ、2人で鈴木さんの部屋かエレーナの部屋に行ったら?」
フロントにいるオーナーが笑い掛ける。
エレーナ:「冗談でしょう?男と2人きりでいたりしたら、襲われるじゃないですか!」
鈴木:「襲って良かったの?」
エレーナ:「アホか!ダンテ一門の魔女全員敵に回すよ!?」
鈴木:「マリアさんだけは許してくれそうだけどね」
エレーナ:「くっ……」
(マリア:「え?鈴木なんかに襲われて処女喪失したの?……憐憫!」)
エレーナ:「……てなこと言いそう」
鈴木:「まあまあ。俺はしばらくここにいるよ」
エレーナ:「全く」
鈴木:「せっかくだから飲み物買って来よう。エレーナ、何飲む?」
エレーナ:「コーヒーでいい。ブラックで」
鈴木:「了解」
鈴木はロビー片隅にある自販機コーナーへ向かった。
そこには缶ジュースや缶ビールの他、紙コップのコーヒー自販機もある。
ドトールのマークが目立つスリムなタイプ。
鈴木:「お待たせ」
エレーナ:「どーも。せっかくだから、何か面白い話でもして」
鈴木:「面白い話?そうだなぁ……」
エレーナ:「あ、日蓮正宗とか顕正会の話はツマンネーからナシな?」
鈴木:「じゃあそんなに面白いネタ無いや」
エレーナ:「あ、そ。じゃ、私もう寝るから」
鈴木:「ああ、うそうそ!怖い話で良かったら、一応あるよ!」
エレーナ:「おっ、マジで?それなら聞きたい!」
鈴木:「そうかそうか。実はこれは俺が高校生だった頃に体験した話なんだ。実は俺の高校に『飴玉婆さん』という、いかにも魔法使いといった感じの恰好をした婆さんが……」
エレーナ:「その婆さんなら若返りの魔法使って、今そこのレストランで働いてるよ?」
鈴木:「は!?」
エレーナ:「稲生氏の高校にも行ってたらしいけど、魔法薬としてゴルフボール大のキャンディーを配ってたら、無礼なアホ男が現れたもんで、そいつを痛い目に遭わせたって話じゃない?」
鈴木:「稲生先輩の高校でもやってたのか!……じゃあ終わり」
エレーナ:「他には無いの?」
鈴木:「えーと……。それじゃ、サンブラ茶って言う名の不思議なお茶の話……」
エレーナ:「うちの先生が開発した薬だね。お茶のようにして飲むんだけど、すっごくマズいらしいね。飲むとサンブラの木に体が寄生されて、もちろん自我や理性は保ったままなんだけど、老廃物は根こそぎ養分として食べてくれるから、寄生されたらもう一生トイレに行かなくて済むようになるってよ」
鈴木:「これもエレーナ絡みだったのか……。じゃあ、これも終わり」
エレーナ:「他には?」
鈴木:「俺の高校、合宿所を1つ持ってるんだけど、これがまた出るわ出るわの怪談話。特に多いのが妖怪『逆さ女』の話で……」
エレーナ:「稲生氏の高校にいたヤツかな?稲生氏も含めて、霊力や腕っぷしの強い有志の連中がボコボコにしたらしいよ。なに?その後、鈴木の高校に逃げ込んでたのか。今は魔界に逃げたらしいけどね」
鈴木:「……稲生先輩、何者!?」
エレーナ:「アタシと同門だよ。まあ、組は違うけど。他には?」
鈴木:「えーと……。あ、そうだ。『七不思議を全て知ると、悪いことが起こる』という話は?」
エレーナ:「内容的にはベタな法則だね。鈴木の母校では、何があった?」
鈴木:「俺の時は何も起こらなかったな。ただ……」
エレーナ:「ただ?」
鈴木:「7人来るはずだったのに、6人しか来なくて拍子抜けしただけだった。しかも下校時刻とっくに過ぎても残ってたんで、後で先生に怒られたっけな」
エレーナ:「それは随分と平和的というか、呆気無く終わったね」
鈴木:「そうなんだ。あれ以来、七不思議の会はやってない。俺も顕正会に入って、それどころじゃなくなったしな」
エレーナ:「その、来なかった7人目はどうなったの?」
鈴木:「だから知らねーよ。集まりに誰が来るか、集まってみるまで分からないシステムだったからな。その集まったメンバーも、まるで他校から来たかのように、全く名前も顔も知らない連中ばかりだったよ」
エレーナ:「そういうことは重要じゃないけどね」
鈴木:「ん?」
エレーナ:「私の見立てでは、その7人目は殺されたと思う」
鈴木:「何だって!?」
エレーナ:「私の見立てだけどね。ま、あなたは無事で良かったね」
鈴木:「それもダンテ一門が関わってるのか?」
エレーナ:「日本では関わってないと思うね。ただ、外国では関わることもある」
鈴木:「どういうことだ?」
エレーナ:「外国でも降霊会みたいなことが流行っている地域はあってね。それを目ざとく見つけるヤツがいるわけよ。で、恐怖を演出してやるってなことをすることはある。私は無いけどね。ま、私らはアンタ達に怪談ネタを提供する側だってことよ」
鈴木:「それは稲生先輩からも聞いたけど……。でも、幽霊とかの類は無いだろう?」
エレーナ:「それは無いね。悪魔とかの類は別だけど」
鈴木:「顕正会を体験して、日蓮正宗にいたりすると、幽霊の出て来る怪談話は信じられなくなるんだよなぁ……」
エレーナ:「でも実際、稲生氏は体験してるよ?」
鈴木:「ああ。何か、初恋の人が悪霊になって襲って来たってヤツ?本当かなぁ……?」
エレーナ:「ウソだったら、仙台まで行ったりしないよ」
鈴木:「何だか逆に羨ましくなっちゃうな」
鈴木はコーヒーを啜りながら言った。
エレーナ:「恐怖体験したいの?」
鈴木:「じゃなくて。稲生先輩には、そういう初恋の経験があるんだ。だけど、俺には無かった。特盛ですら、初恋の相手はいたのになぁ……」
エレーナ:「後で悪霊になって襲われるよりはマシだよ」
鈴木:「ま、そうなんだけどさ。で、実質的に初恋の相手はエレーナだってことさ」
エレーナ:「そりゃどーも。だけど魔女ってのは、基本的に恋活も婚活もしないもんでねぇ……」
鈴木:「もっとも、最近の恐怖体験は、キミやキミの後輩に襲われる悪夢を見させられたことだけどね」
エレーナ:「ちゃんと支払い期限は守れよ?今度は命の保証は無いからな?」
鈴木:「はい」
ダンテ一門の魔道師の前では、ちょっとやそっとの怪談話や都市伝説はただの戯れ言なのであった。
〔「……関東地方全域で大気の状態が非常に不安定となっており、東京都心では夜半過ぎに掛けて雨が非常に強く降る所があります。道路冠水などには十分注意してください。また、東京都全域で雷、強風注意報が発令されており、落雷や突風にも注意が必要です。続きまして……」〕
エレーナ:「ここにいないで、さっさと部屋に戻りなよ」
鈴木:「エレーナこそ、宅急便行かないの?」
エレーナ:「こんなゲリラ豪雨の中、行けるわけないじゃない」
ロビーのテレビで気象情報を見ていた鈴木。
因みに今日、エレーナは夜勤ではない。
オーナー:「ハハハハ。それじゃ、2人で鈴木さんの部屋かエレーナの部屋に行ったら?」
フロントにいるオーナーが笑い掛ける。
エレーナ:「冗談でしょう?男と2人きりでいたりしたら、襲われるじゃないですか!」
鈴木:「襲って良かったの?」
エレーナ:「アホか!ダンテ一門の魔女全員敵に回すよ!?」
鈴木:「マリアさんだけは許してくれそうだけどね」
エレーナ:「くっ……」
(マリア:「え?鈴木なんかに襲われて処女喪失したの?……憐憫!」)
エレーナ:「……てなこと言いそう」
鈴木:「まあまあ。俺はしばらくここにいるよ」
エレーナ:「全く」
鈴木:「せっかくだから飲み物買って来よう。エレーナ、何飲む?」
エレーナ:「コーヒーでいい。ブラックで」
鈴木:「了解」
鈴木はロビー片隅にある自販機コーナーへ向かった。
そこには缶ジュースや缶ビールの他、紙コップのコーヒー自販機もある。
ドトールのマークが目立つスリムなタイプ。
鈴木:「お待たせ」
エレーナ:「どーも。せっかくだから、何か面白い話でもして」
鈴木:「面白い話?そうだなぁ……」
エレーナ:「あ、日蓮正宗とか顕正会の話はツマンネーからナシな?」
鈴木:「じゃあそんなに面白いネタ無いや」
エレーナ:「あ、そ。じゃ、私もう寝るから」
鈴木:「ああ、うそうそ!怖い話で良かったら、一応あるよ!」
エレーナ:「おっ、マジで?それなら聞きたい!」
鈴木:「そうかそうか。実はこれは俺が高校生だった頃に体験した話なんだ。実は俺の高校に『飴玉婆さん』という、いかにも魔法使いといった感じの恰好をした婆さんが……」
エレーナ:「その婆さんなら若返りの魔法使って、今そこのレストランで働いてるよ?」
鈴木:「は!?」
エレーナ:「稲生氏の高校にも行ってたらしいけど、魔法薬としてゴルフボール大のキャンディーを配ってたら、無礼なアホ男が現れたもんで、そいつを痛い目に遭わせたって話じゃない?」
鈴木:「稲生先輩の高校でもやってたのか!……じゃあ終わり」
エレーナ:「他には無いの?」
鈴木:「えーと……。それじゃ、サンブラ茶って言う名の不思議なお茶の話……」
エレーナ:「うちの先生が開発した薬だね。お茶のようにして飲むんだけど、すっごくマズいらしいね。飲むとサンブラの木に体が寄生されて、もちろん自我や理性は保ったままなんだけど、老廃物は根こそぎ養分として食べてくれるから、寄生されたらもう一生トイレに行かなくて済むようになるってよ」
鈴木:「これもエレーナ絡みだったのか……。じゃあ、これも終わり」
エレーナ:「他には?」
鈴木:「俺の高校、合宿所を1つ持ってるんだけど、これがまた出るわ出るわの怪談話。特に多いのが妖怪『逆さ女』の話で……」
エレーナ:「稲生氏の高校にいたヤツかな?稲生氏も含めて、霊力や腕っぷしの強い有志の連中がボコボコにしたらしいよ。なに?その後、鈴木の高校に逃げ込んでたのか。今は魔界に逃げたらしいけどね」
鈴木:「……稲生先輩、何者!?」
エレーナ:「アタシと同門だよ。まあ、組は違うけど。他には?」
鈴木:「えーと……。あ、そうだ。『七不思議を全て知ると、悪いことが起こる』という話は?」
エレーナ:「内容的にはベタな法則だね。鈴木の母校では、何があった?」
鈴木:「俺の時は何も起こらなかったな。ただ……」
エレーナ:「ただ?」
鈴木:「7人来るはずだったのに、6人しか来なくて拍子抜けしただけだった。しかも下校時刻とっくに過ぎても残ってたんで、後で先生に怒られたっけな」
エレーナ:「それは随分と平和的というか、呆気無く終わったね」
鈴木:「そうなんだ。あれ以来、七不思議の会はやってない。俺も顕正会に入って、それどころじゃなくなったしな」
エレーナ:「その、来なかった7人目はどうなったの?」
鈴木:「だから知らねーよ。集まりに誰が来るか、集まってみるまで分からないシステムだったからな。その集まったメンバーも、まるで他校から来たかのように、全く名前も顔も知らない連中ばかりだったよ」
エレーナ:「そういうことは重要じゃないけどね」
鈴木:「ん?」
エレーナ:「私の見立てでは、その7人目は殺されたと思う」
鈴木:「何だって!?」
エレーナ:「私の見立てだけどね。ま、あなたは無事で良かったね」
鈴木:「それもダンテ一門が関わってるのか?」
エレーナ:「日本では関わってないと思うね。ただ、外国では関わることもある」
鈴木:「どういうことだ?」
エレーナ:「外国でも降霊会みたいなことが流行っている地域はあってね。それを目ざとく見つけるヤツがいるわけよ。で、恐怖を演出してやるってなことをすることはある。私は無いけどね。ま、私らはアンタ達に怪談ネタを提供する側だってことよ」
鈴木:「それは稲生先輩からも聞いたけど……。でも、幽霊とかの類は無いだろう?」
エレーナ:「それは無いね。悪魔とかの類は別だけど」
鈴木:「顕正会を体験して、日蓮正宗にいたりすると、幽霊の出て来る怪談話は信じられなくなるんだよなぁ……」
エレーナ:「でも実際、稲生氏は体験してるよ?」
鈴木:「ああ。何か、初恋の人が悪霊になって襲って来たってヤツ?本当かなぁ……?」
エレーナ:「ウソだったら、仙台まで行ったりしないよ」
鈴木:「何だか逆に羨ましくなっちゃうな」
鈴木はコーヒーを啜りながら言った。
エレーナ:「恐怖体験したいの?」
鈴木:「じゃなくて。稲生先輩には、そういう初恋の経験があるんだ。だけど、俺には無かった。特盛ですら、初恋の相手はいたのになぁ……」
エレーナ:「後で悪霊になって襲われるよりはマシだよ」
鈴木:「ま、そうなんだけどさ。で、実質的に初恋の相手はエレーナだってことさ」
エレーナ:「そりゃどーも。だけど魔女ってのは、基本的に恋活も婚活もしないもんでねぇ……」
鈴木:「もっとも、最近の恐怖体験は、キミやキミの後輩に襲われる悪夢を見させられたことだけどね」
エレーナ:「ちゃんと支払い期限は守れよ?今度は命の保証は無いからな?」
鈴木:「はい」
ダンテ一門の魔道師の前では、ちょっとやそっとの怪談話や都市伝説はただの戯れ言なのであった。
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