報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「女川の町」

2021-01-24 18:57:05 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日11:01.天候:晴 宮城県牡鹿郡女川町 JR女川駅→女川港]

〔ピンポーン♪ まもなく終点、女川です。女川では後ろの車両のドアは開きませんので、前の車両の運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。乗車券、運賃、整理券は運賃箱にお入れください。定期券は運転士にお見せください。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 私達を乗せた列車は、終点の駅に近づいた。
 ホームに入る直前、進行方向右側にトレーラーハウスが多く見られたが、後にそれはホテルであることが分かった。

 愛原:「やっと着いた。ここで何か情報でも入るといいがな」

 女川駅は一面一線の頭端式。
 つまり1番線しかなく、改札口は列車の更に進行方向にあるというものだ。
 この駅は無人駅なのだろうか。

 運転士:「はい、ありがとうございました」

 女川駅はSuicaのエリア外である。
 なので小牛田駅から私達は紙の乗車券を買って乗った。
 そのキップを路線バスにあるような運賃箱の中に入れる。
 それから降りて、駅舎内に向かった。
 駅事務室はあって、窓口らしきものもある。
 しかし、改札口のブースは無い。
 駅員はいるが、子会社に出札業務を委託しているだけで、改札業務までは行っていないのだろう。
 券売機も1台だけある。

(BGM:“FFⅦリメイク”より、“からっぽの空”https://www.youtube.com/watch?v=sbPSde4pYL4)

 愛原:「きれいな駅舎だ。きっと震災で全てを破壊されたんで、全部新しくしたんだろう」

 駅前もきれいに纏められている。
 また、駅舎の中には温泉施設もあった。
 調査が終わって余裕があるなら、是非立ち寄ってみたいものだ。
 駅前のこれまた新しい商店街を抜け、女川港に向かう。
 ここからは金華山に向かう定期船が出ており、その案内所に行ってみた。
 驚くことに定期船は土日祝日しか運航されておらず、それ以外に島に渡るには海上タクシーを利用するしかないのだという。
 そして便数も定期ダイヤの時は、1往復しか運航されていない。
 今日は運航日ではあるが、島行きはもう出航してしまったという。

 愛原:「このカードを御存知ですか?」

 私はタイラントが落とした日本アンブレラのカードを見せた。

 係員:「何ですか、それは?」
 愛原:「分かりませんが、金華山に何か関係があるのではないかと思うのですが……」
 係員:「ちょっと見たことないですねぇ……」

 係員のオバさんは事務所に行って、他の係員にも聞いてくれた。
 ロゴマークから日本アンブレラだと分かってくれた人はいたが、このカード自体は知らないという。

 愛原:「このカードで定期船に乗れたり、海上タクシーに乗れたりはしますか?」
 係員:「そんなことないですよ」

 とのこと。
 アテが外れたか?
 やはり金華山というのは島そのものではなく、何かの例えなのだろうか。

 愛原:「因みに、ここ以外で金華山に行く船はありますか?」

 私が船に限定しているのは、定期的な交通手段が船しかないからである。
 離島だとヘリコプターの便もあるが、金華山は島全体が黄金山神社の神域とされており、島の住民は神社の関係者しかいないという。
 そんな島にヘリの便など、あるはずがない。

 係員:「石巻の鮎川港からも出ていますけど、あそこも午前中に1つしか無いので、今から行っても無いですよ」
 愛原:「石巻の鮎川港ねぇ……」

 だとしたら、このカードを解析して出てきた『Onagawa』という単語に意味が無くなってしまう。
 このカードは、金華山内で使えるものなのだろうか?

 高橋:「先生、どうしますか?」
 愛原:「うーん……。この港から、金華山以外へ行く便は無いですか?」
 係員:「定期便では金華山だけです」
 愛原:「定期便以外だと?」
 係員:「貨物便ですか?えーと……」

 やはりアテが外れたのだろうか。
 私達は定期船乗り場を出た。
 港には漁船も多く留まっている。
 中には釣り客を乗せて沖合に向かう遊漁船もあるだろう。

 愛原:「アテが外れたみたいだ。戻ろう」
 高橋:「先生、次の列車、13時21分っすよ?」
 愛原:「はあ!?」
 高橋:「さすが田舎の路線っすねぇ……。どうします?」
 愛原;「少し早いが、ここで昼飯食って駅の中の温泉に入ろう。それで時間潰せるだろう」
 リサ:「おー!魚食べたい!」
 愛原:「ああ。そうしよう」

[同日13:00.天候:晴 JR女川駅(日帰り温泉“ゆぽっぽ”)]

 昼食を食べ終えた私達は駅に戻ると、そこの温泉施設に入った。
 震災前から温泉施設はあったが、震災による大津波で駅舎と一緒に流されてしまった。
 地震の影響で温泉が枯れてしまった所が散見される中、ここの温泉はそこまでの被害は無かったらしい。
 しかし、温泉が枯れてしまった所がある反面、逆に湧き出て来た所もあるようだが、そういう所では新しい入浴施設が出来たりしたのだろうか。

 愛原:「はい、もしもし?」

 施設内の休憩所で休んでいると、公一伯父さんから電話が掛かってきた。

 公一:「今、どこにおる?」
 愛原:「女川駅だよ」
 公一:「そこで何か有力な情報は掴めたかね?」
 愛原:「いや、まだだよ。港に行ったけど、このカードのことについて知っている人は誰もいなかった」
 公一:「そうか。ならば、石巻の鮎川に行ってみるといい」
 愛原:「ああ。金華山行きの船は、そこからも出てるって話でしょ?だけど、今日はもうその船は終わったってよ」
 公一:「違う。そのカードのことについて知ってる者がいるんじゃ。ワシの知り合いで、海洋生物の研究者がおる。その者が石巻に住んでおるから、そいつに聞いてみると良い。ワシが話を付けておいてやる」
 愛原:「さすが伯父さん!頼りになるぅ!」
 公一:「ワシのかわいい甥っ子の為じゃ。頑張るのじゃぞ」

 有力な情報を掴めるなら、ありがたいことだ。
 私は電話を切った。
 そして高橋達に次の行き先を伝えたのだった。

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