[1月3日17:00.魔王城最下層・大水晶の間 稲生ユウタ、威吹邪甲、マリアンナ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、栗原江蓮]
魔王城最下層の大水晶の間に向かったユタ達。
キノは旧政府関係者の粛清に向かった。
「とっとと全員処刑しないから、こんな内戦が起こるんだよ。オレが全員処刑にしてきてやる」
とか何とか言っていたが、それはそれで禍根が残る方法ではある。
それに、新政府樹立の際、人材が殆どいなかった状態で、旧政府関係者を登用しないわけにはいかなかった経緯もある。
さて、大水晶の所まで行くと、先ほど江蓮が欠片を砕いた時とはだいぶ状況が異なっていた。
具体的には、あちこち亀裂が入って、今にも粉々になりそうだ。
「さ、ユウタ君。あなたがこの“魔王の杖”を持って水晶に触って。そしたら、この大水晶は砕け散る」
イリーナはユタの背中を押して言った。
「は、はい」
ユタは台座の上に上がると、白い大きな水晶に触った。
すると、水晶が強い光りを放ち、それが止まると、まるで流氷が溶け落ちるかのようにボロボロと砕け落ちて行った。
ユタは慌てて台座から離れる。
大水晶の中にいたのは、白い着物に緋色の袴を穿いた若い女性がいた。
「さくら……!」
威吹がフラフラと大水晶に近づく。
完全に大水晶が粉々になった時、中の女性が倒れて来た。
それを威吹が受け止める。
「さくら!さくら!」
威吹が声を掛けると、さくらと呼ばれた女性は目を開けた。
(この人がさくらさん……)
ユタは威吹の“獲物”の2代目。
初代の女性は初めて見た。
江戸時代前期では、写真も無いから当然だが。
「威吹……?」
「ケガは無いな!?助けに来たぞ!」
「…………」
「待って。やっぱり衰弱してるみたい」
と、そこへイリーナが割って入ってきた。
「療養した方がいいと思うから移動しましょう」
「移動って、どこへだ?」
「とにかく、地上に出ましょう」
[1月4日10:00.魔王城・謁見の間 ルーシー・ブラッドプール1世、安倍春明、ユタ、蓬莱山鬼之助、栗原江蓮]
まだあちこち焦げ臭く、血生臭い城内。
帰還した女王ルーシーと、安倍は勇者達を迎え入れていた。
安倍はそれまでのケガが嘘みたいに回復している。
それもそのはず。
ここぞとばかりに魔法薬師ポーリンが、たちどころに傷を癒す妙薬を持参したからである。
そして、弟子エレーナと共に魔界に舞い戻った。
「あなた達の大活躍、労いの言葉も感謝の言葉も見つかりません」
ルーシーが一時期、バァルに乗っ取られた玉座に座りながらユタ達に言った。
(僕はあまり何もしてないような……)
ユタは頭を下げながらそう思った。
この場に威吹はいなかった。
衰弱していたさくらの傍に付き添っているからである。
「蓬莱山鬼之助殿」
「へ、へい!」
「特にそなたの活躍ぶり、見事という言葉すら甘い。だが、それに応える形として、是非、正規軍の将軍に登用したいが、いかがだろうか?」
「いやー、アッシは地獄界の獄卒で十分っスよ。軍人になりたくて戦ったわけじゃないんで。……人間界と地獄界は、切っても切れない関係にあります。それが大魔王バァルに脅かされたんだから、刀を取って戦うのは当たり前でしょう。オレは目の前の敵に飛び込んで行っただけ。そんなヤツが、後ろで軍刀を振り回してるだけの将軍には向いてませんよ」
「そうか。ならば、閻魔庁に推薦状を送付するというのはどうだ?」
「推薦状?何の?もうオレは一応、復職はしてるんですがね……」
「聞けば地獄界もバァルの侵攻により、多くの人材を失ったと聞く。獄卒の幹部に登用してもらうよう、こちらから推薦するが?」
安倍も苦笑して続けた。
「色々と思惑もあっただろうが、結果的に王国を救ってくれた勇者に、陛下は何らかの感謝の印を送りたいんだよ。是非、受け取ってくれたまえ」
「そう、すか?じゃあ、推薦状送ってくだせぇ……」
この場にいない威吹もまた大活躍した英雄の1人ではあるが、後でユタが城内に設置された救護室に聞きに行った。
すると……。
「ボクはさくらと静かに暮らしたい。もしボクに褒美を取らせてくれるというのなら、その場所が欲しい」
と、こんなことを言った。
「さくらさんの具合はどう?」
「魔女達の世話になるのは何だか癪に障る感じだが、背に腹は代えられない。彼女らの回復魔法とやらで、だいぶ元気になったよ」
(“ホイミ”とか“ベホイミ”とかかなぁ……)
と、ユタは思った。
「人間界には来ないの?」
「あいにくとさくらも、今の人間界では暮らせまい。かといって、ボクも今さら“妖狐の里”には戻れない。魔界には人間も暮らしているし、逆にここに留まった方がいいのではないかと思う。バァルの存在も消えて、“霧”も晴れたしね」
「あっ、そうか!」
ユタが窓の外を見ると、“霧の都”たるアルカディアシティ名物の濃霧が無くなっていた。
「さくらは巫女だ。誰も参詣には来ないと思うが、褒美は何でも取らせてくれるというのなら、陛下の言葉に甘えさせて頂き、社でも建ててもらうさ」
(魔界に神社ねぇ……。面白い試みだ)
と、ユタは思った。
「それで、威吹は言ったの?『好きだ』って」
「……ああ。『一緒に暮らそう』って、誘ってみた」
「そしたら?」
「『何を今さら……』って」
「ふ、フラれた!?」
「『1度、私の方からそう言ったじゃないか』って睨まれたよ」
「え?」
「うーん……。そう言えば、封印前にそんなこと言われたような気がするんだよなぁ……」
「するんだよなぁ、じゃないよ。何だそれ」
「あの時は人喰いをやめるなんて考えもしなかったからさ、『何言ってんだ、このクソ女』って思ったよ」
威吹は街道の沿道に巣くい、旅人を襲ってはその血肉を食らう人喰い妖狐だった。
江戸からやってきたという巫女のさくらを襲って食おうとしたものの、返り討ちに遭い、人喰いをやめないとこのまま調伏するとまで言われた。
「何とか機会を伺って、食い殺してやろうと思って、四六時中隙を狙ったものだ」
(す、ストーカー!?)
「そしたら、情が出たんだろうなぁ……。『静かな所が見つかれば、そこで一緒に暮らそう』だって」
「おおーっ!」
だが、そうなると……。
「さくらさんと元気で再会できたってことは、ボクとの盟約は……」
「それなんだけど……」
妖狐の掟で、“獲物”は1人につき1人という決まりがある。
「僕はいいよ。さくらさんの方が出会いが先だったんだから」
「ごめん……」
「でも、小判は返さなきゃいけないかな」
「それはいいよ。ユタが“獲物”になってくれたことは、ボクにとっても大きかったから。むしろ、もっとお礼をしたいくらいだ」
「そう?」
「ボクが無事にさくらと再会できたのは、ユタのおかげでもある。本当に、ありがとう」
「いや、そんな……」
[1月4日11:00.静岡県富士宮市・市街地 藤谷春人&秋彦]
「春人!町の復興事業で、我が社の業績はうなぎ上りだぞ!大功徳だ!」
「それ、功徳って言うんかぁ……?少なからず、大石寺にも被害があったんだから、そっちと復旧契約取ればいいのによぉ……」
大石寺堂宇の修理関係については、全く契約の取れなかった藤谷組だった。
「本社側も都内の復旧事業で忙しいからな!こりゃ、御登山参詣の回数を増やさなきゃならんなー!今年1年間は休みが無いものと思え!」
「親父、それじゃ登山できねーじゃんかよ……」
呆れる藤谷春人だった。
(結局、稲生君は戻ってきそうにないな。さよならだ)
春人は溜め息をついた。
魔王城最下層の大水晶の間に向かったユタ達。
キノは旧政府関係者の粛清に向かった。
「とっとと全員処刑しないから、こんな内戦が起こるんだよ。オレが全員処刑にしてきてやる」
とか何とか言っていたが、それはそれで禍根が残る方法ではある。
それに、新政府樹立の際、人材が殆どいなかった状態で、旧政府関係者を登用しないわけにはいかなかった経緯もある。
さて、大水晶の所まで行くと、先ほど江蓮が欠片を砕いた時とはだいぶ状況が異なっていた。
具体的には、あちこち亀裂が入って、今にも粉々になりそうだ。
「さ、ユウタ君。あなたがこの“魔王の杖”を持って水晶に触って。そしたら、この大水晶は砕け散る」
イリーナはユタの背中を押して言った。
「は、はい」
ユタは台座の上に上がると、白い大きな水晶に触った。
すると、水晶が強い光りを放ち、それが止まると、まるで流氷が溶け落ちるかのようにボロボロと砕け落ちて行った。
ユタは慌てて台座から離れる。
大水晶の中にいたのは、白い着物に緋色の袴を穿いた若い女性がいた。
「さくら……!」
威吹がフラフラと大水晶に近づく。
完全に大水晶が粉々になった時、中の女性が倒れて来た。
それを威吹が受け止める。
「さくら!さくら!」
威吹が声を掛けると、さくらと呼ばれた女性は目を開けた。
(この人がさくらさん……)
ユタは威吹の“獲物”の2代目。
初代の女性は初めて見た。
江戸時代前期では、写真も無いから当然だが。
「威吹……?」
「ケガは無いな!?助けに来たぞ!」
「…………」
「待って。やっぱり衰弱してるみたい」
と、そこへイリーナが割って入ってきた。
「療養した方がいいと思うから移動しましょう」
「移動って、どこへだ?」
「とにかく、地上に出ましょう」
[1月4日10:00.魔王城・謁見の間 ルーシー・ブラッドプール1世、安倍春明、ユタ、蓬莱山鬼之助、栗原江蓮]
まだあちこち焦げ臭く、血生臭い城内。
帰還した女王ルーシーと、安倍は勇者達を迎え入れていた。
安倍はそれまでのケガが嘘みたいに回復している。
それもそのはず。
ここぞとばかりに魔法薬師ポーリンが、たちどころに傷を癒す妙薬を持参したからである。
そして、弟子エレーナと共に魔界に舞い戻った。
「あなた達の大活躍、労いの言葉も感謝の言葉も見つかりません」
ルーシーが一時期、バァルに乗っ取られた玉座に座りながらユタ達に言った。
(僕はあまり何もしてないような……)
ユタは頭を下げながらそう思った。
この場に威吹はいなかった。
衰弱していたさくらの傍に付き添っているからである。
「蓬莱山鬼之助殿」
「へ、へい!」
「特にそなたの活躍ぶり、見事という言葉すら甘い。だが、それに応える形として、是非、正規軍の将軍に登用したいが、いかがだろうか?」
「いやー、アッシは地獄界の獄卒で十分っスよ。軍人になりたくて戦ったわけじゃないんで。……人間界と地獄界は、切っても切れない関係にあります。それが大魔王バァルに脅かされたんだから、刀を取って戦うのは当たり前でしょう。オレは目の前の敵に飛び込んで行っただけ。そんなヤツが、後ろで軍刀を振り回してるだけの将軍には向いてませんよ」
「そうか。ならば、閻魔庁に推薦状を送付するというのはどうだ?」
「推薦状?何の?もうオレは一応、復職はしてるんですがね……」
「聞けば地獄界もバァルの侵攻により、多くの人材を失ったと聞く。獄卒の幹部に登用してもらうよう、こちらから推薦するが?」
安倍も苦笑して続けた。
「色々と思惑もあっただろうが、結果的に王国を救ってくれた勇者に、陛下は何らかの感謝の印を送りたいんだよ。是非、受け取ってくれたまえ」
「そう、すか?じゃあ、推薦状送ってくだせぇ……」
この場にいない威吹もまた大活躍した英雄の1人ではあるが、後でユタが城内に設置された救護室に聞きに行った。
すると……。
「ボクはさくらと静かに暮らしたい。もしボクに褒美を取らせてくれるというのなら、その場所が欲しい」
と、こんなことを言った。
「さくらさんの具合はどう?」
「魔女達の世話になるのは何だか癪に障る感じだが、背に腹は代えられない。彼女らの回復魔法とやらで、だいぶ元気になったよ」
(“ホイミ”とか“ベホイミ”とかかなぁ……)
と、ユタは思った。
「人間界には来ないの?」
「あいにくとさくらも、今の人間界では暮らせまい。かといって、ボクも今さら“妖狐の里”には戻れない。魔界には人間も暮らしているし、逆にここに留まった方がいいのではないかと思う。バァルの存在も消えて、“霧”も晴れたしね」
「あっ、そうか!」
ユタが窓の外を見ると、“霧の都”たるアルカディアシティ名物の濃霧が無くなっていた。
「さくらは巫女だ。誰も参詣には来ないと思うが、褒美は何でも取らせてくれるというのなら、陛下の言葉に甘えさせて頂き、社でも建ててもらうさ」
(魔界に神社ねぇ……。面白い試みだ)
と、ユタは思った。
「それで、威吹は言ったの?『好きだ』って」
「……ああ。『一緒に暮らそう』って、誘ってみた」
「そしたら?」
「『何を今さら……』って」
「ふ、フラれた!?」
「『1度、私の方からそう言ったじゃないか』って睨まれたよ」
「え?」
「うーん……。そう言えば、封印前にそんなこと言われたような気がするんだよなぁ……」
「するんだよなぁ、じゃないよ。何だそれ」
「あの時は人喰いをやめるなんて考えもしなかったからさ、『何言ってんだ、このクソ女』って思ったよ」
威吹は街道の沿道に巣くい、旅人を襲ってはその血肉を食らう人喰い妖狐だった。
江戸からやってきたという巫女のさくらを襲って食おうとしたものの、返り討ちに遭い、人喰いをやめないとこのまま調伏するとまで言われた。
「何とか機会を伺って、食い殺してやろうと思って、四六時中隙を狙ったものだ」
(す、ストーカー!?)
「そしたら、情が出たんだろうなぁ……。『静かな所が見つかれば、そこで一緒に暮らそう』だって」
「おおーっ!」
だが、そうなると……。
「さくらさんと元気で再会できたってことは、ボクとの盟約は……」
「それなんだけど……」
妖狐の掟で、“獲物”は1人につき1人という決まりがある。
「僕はいいよ。さくらさんの方が出会いが先だったんだから」
「ごめん……」
「でも、小判は返さなきゃいけないかな」
「それはいいよ。ユタが“獲物”になってくれたことは、ボクにとっても大きかったから。むしろ、もっとお礼をしたいくらいだ」
「そう?」
「ボクが無事にさくらと再会できたのは、ユタのおかげでもある。本当に、ありがとう」
「いや、そんな……」
[1月4日11:00.静岡県富士宮市・市街地 藤谷春人&秋彦]
「春人!町の復興事業で、我が社の業績はうなぎ上りだぞ!大功徳だ!」
「それ、功徳って言うんかぁ……?少なからず、大石寺にも被害があったんだから、そっちと復旧契約取ればいいのによぉ……」
大石寺堂宇の修理関係については、全く契約の取れなかった藤谷組だった。
「本社側も都内の復旧事業で忙しいからな!こりゃ、御登山参詣の回数を増やさなきゃならんなー!今年1年間は休みが無いものと思え!」
「親父、それじゃ登山できねーじゃんかよ……」
呆れる藤谷春人だった。
(結局、稲生君は戻ってきそうにないな。さよならだ)
春人は溜め息をついた。
スプリンクラーが作動しなさそうなので、恐らく、火災は延焼拡大するだろう。
速やかなる避難を勧告します。
私の先代ブログも、あんな感じだったかなぁ……。
もしあっつぁブログが稼働していたら、そこでも叩かれたかもしれない。
登場早々ご自身の功徳を発表されておられたが、沖浦さんのコア過ぎる内容と違い、とても励みになるものだった。
まことに、おめでたい限りである。
とは言うものの……。
セロリさんの例といい、やはり宗内でも晩婚化・非婚化・少子高齢化の波を大きく被っているというのが伺える。
知らない人が見たら、未だに私は退転者で怨嫉者ってことになるな。
「あれは誰の成り済まし」とか、物凄く滑稽だ。
因みに多摩準急先生と私が同一ではないかという疑惑もあったようなので、紹介者の方などには私と写る先生の写真を見せたり、直接電話に出たりしてもらったけどね。
疑惑の流布者、涙目www
とは言うものの……。
やっぱり、怨嫉の罰は漏れなく当たるのかねぇ……。
先生と最近、連絡が取れんのだ。