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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「高橋のギミック」

2024-11-17 20:47:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月12日10時15分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所⇔愛原家]

 私が高橋からの手紙を開けると、そこには確かに高橋の字による文章が書かれていた。
 あいつ、何気に達筆なのである。

 愛原「『俺の机の引き出しの整理をお願いします』だと?」

 私は高橋の事務机を見た。
 あいつの机の上には、パソコンくらいしか無かったと思うが?
 私は席を立って、高橋の事務机の引き出しを確認した。
 案の定、引き出しには殆ど何も入っていなかったが、袖箱の1番上の引き出しだけ、あいつがよく吸っている銘柄のタバコの箱がギッシリと詰まっていた。
 これを整理しろと言うのだろうか?
 タバコの箱を全部取り出すと、その奥底に1枚のメモ用紙があった。

 愛原「1822?何の暗証番号だ?」

 私はパールを見た。
 あいつの銀行の口座番号か?

 パール「もしかして、部屋のロッカーじゃないでしょうか?」

 パールは3階を指さした。

 愛原「ロッカー?ああ、前の事務所で使っていたヤツか」

 今の事務所は収納も多いので、特に必要は無いと思って処分したのだ。
 そしたら、パール達が自分の部屋で使いたいというので譲ったのだった。

 愛原「あれ、暗証番号なんてあったっけ?」
 パール「マサが4桁の番号のシリンダーキーを付けたんです。私にも番号を教えてくれませんでした」
 愛原「そうだったのか」

 他に心当たりが無い以上、試して見る必要がある。

 善場「私も御一緒して宜しいのですか?」
 愛原「構いませんよ」
 リサ「乗り掛かったバスだもんね!」
 愛原「乗り掛かった舟、だろ?」
 リサ「あっ……」
 善場「本当に学校の成績、優秀なんですか?」
 リサ「いざとなったら、わたしの寄生虫を使って……」
 善場「寄生虫?確か、もう死滅したはずでは?」
 リサ「ギクッ!」
 善場「これは……後でヒアリングする必要がありそうですね」
 リサ「ご、午後から出かけないとォ……」
 善場「関係ありません。午後の予定は全てキャンセルして頂きます。あなたの体内の状況を、よく確認しませんとね」
 愛原「静岡事務所で確認したのでは?」
 リサ「そーだよ!」
 善場「どうも地方の事務所は精度が悪いので。改めて確認する必要がありそうですね」
 愛原「だってさ?」
 リサ「えー……」

 リサの寄生虫は本当に恐ろしかった。
 『魔王軍』を結成できたのも、それが大きい。
 ただ、電撃が使えるようになってから、寄生虫は感電して死滅したとか聞いたが?
 とにかく、私達はエレベーターで3階に移動した。

 パール「ここです。散らかっていて、申し訳ありません」
 善場「こちらこそ、急な事なので、申し訳無いです」

 パールと高橋の部屋に入る。
 ややタバコ臭いのは、2人が喫煙者だからだろう。
 ここで喫煙する際は換気をするようにと言っているのだが、どうしても臭いが付いてしまうようだ。
 そして、部屋の隅にロッカーはあった。
 一般家庭内にオフィス用のロッカーが置いてあるのは、何となく不自然だ。
 ロッカーは2つあって、1つをパール用と分けているらしい。
 もちろんこれとは別に、クロゼットもあるのだが。
 高橋用のロッカーには、確かに4桁の暗証番号のシリンダーキーが付いていた。

 パール「いざとなったら、チェーンカッターで壊せばいいと思ってましたが……」

 パールはそう言って、自分のロッカーからチェーンカッターを取り出した。

 愛原「もしこの番号で開かなかったら、宜しく頼むよ」
 善場「分かっているとは思いますが、無闇に持ち歩くと軽犯罪法違反となりますので、ご注意ください」
 パール「も、もちろんです」

 私が番号を合わせると、どうやらチェーンカッターの出番は無さそうだった。

 愛原「開いた!」
 パール「良かったですね」
 愛原「では、開けます!」
 リサ「中からゾンビが出て来たりして?」
 愛原「ラクーンシティか!」

 すると善場係長、スーツの中からハンドガンを取り出した。

 善場「万が一ということもありますので、準備は致します」
 パール「私も、お任せください」

 パールはロッカーの中から、コンバットナイフを取り出した。

 リサ「わたしも任せて!」

 リサは鬼形態に戻ると、右手の爪を長く鋭く伸ばした。

 愛原「では、開けます」

 私はロッカーの扉をガチャッと開けた。

 ゾンビ?「アァア……!」
 愛原「えっ!?」

 すると、中から本当に呻き声のような物を上げて私に倒れ掛かって来る人のような物が!
 まさか、本当にゾンビ!?

 善場「所長、伏せて!!」

 パーン!パンパンパーン!と、家中に善場係長のハンドガンの銃声が響く。
 まずいことに、タバコの臭いを外に出す為に窓を開けていたので、近所中に発砲音が響き、通報されたかもしれない。

 パール「こ、これは……!?」

 部屋中に舞い散る綿。
 係長の銃弾が当たった所には穴が開き、そこから血しぶきが上がったのではなく、何故か綿が舞い上がったのだ。

 リサ「全然、血の臭いも腐った肉の匂いもしないよ!?」
 愛原「これは、人形だ!?」
 善場「えっ?」

 マネキンに肉襦袢を着せ、あとはハロウィン用のコスプレ衣装を着せただけの人形。
 ハロウィンのコスプレの中にはゾンビのヤツもあるから、それだろう。
 動かすと、ゾンビのような呻き声を上げるという仕掛けが施されていた。

 愛原「何だよ!紛らわしい!!」
 善場「この人形と、ロッカーの中を確認しましょう!」
 リサ「ロッカーの中に何かあったよ!?」
 愛原「なに!?今度は何だ!?」

 リサはロッカーの中から、18歳未満視聴禁止のエロDVDのケースをいくつも取り出した。

 リサ「えっちぃDVD。観ていい!?」

 リサは鼻息を荒くして聞いてきた。

 愛原「そういうのは18歳になってからね?」
 リサ「えー……」
 パール「待ってください!そのケース、何か挟まってますよ?」
 リサ「えっ?」

 パールが指さした所を見ると、リサが抱えているDVDケースの中から、1枚のメモ用紙が挟まっているのが見えた。

 愛原「まだ何かあるのか?」

 どうやら高橋のヤツ、私達にクエストをクリアさせるつもりらしい。
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“私立探偵 愛原学” 「月曜日の朝」

2024-11-17 16:08:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月12日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 

 リサ「おーはよー」

 朝食の時間になり、リサは4階の自室から降りて来た。
 私の気を引く為、相変わらずの体操服とブルマである。
 いつもと違うのは、ハンディタイプのファンを持っていたことだった。

 愛原「おはよう。……ってか、もうそれ使ってるのか?」
 リサ「だって暑いんだもん」
 パール「今年も猛暑になるらしいですからねぇ……」
 リサ「ゲッ!ヤッダ!」
 愛原「それはそうだが、まだそこまで暑くないような気がするんだが……」

 ただ、梅雨に入ったことで蒸すことは蒸すので、私の部屋ではエアコンの『除湿』を使うことはしばしばだった。
 リサはもう『冷房』にしているらしい。
 鬼は暑がりだというが、リサも例外ではないらしい。

 リサ「ラムちゃんが常に虎柄ビキニなのも分かるよ。わたしもあれにしようかなぁ……」
 愛原「あれ、宇宙人だぞ?」

 私がそうツッコミながらダイニングテーブルの椅子に座ると、パールが朝食を持って来た。
 もっとも、パール自身も、エプロンの下は黒いタンクトンプにベージュのショーパンだったが。

 愛原「パール。高橋が出所したら、2人で住む場所探してみるか?」
 パール「マサが嫌がると思うので、私からは何とも言えないです」
 愛原「あー、そうか」
 パール「それより、今日は善場係長がお見えになられるのでしたね?」
 愛原「ああ。高橋の手紙を見にな。そもそも、高橋の手紙がいつ届くかだぞ?本当に今日届くかどうか……」

 本人が直接ポストに入れたわけではなく、まずは刑務官に手紙を渡して、あとは拘置所で手紙が検閲され、合格したら郵便局に引き渡されるという仕組みのはずだ。
 もしも不合格だったら、届かないか、或いはヤバい箇所だけ黒塗りにされるんだったっけか?

 愛原「何で面会の時に言わないんだろうなぁ……?」
 パール「看守さんが立ち会いますから、聞かれたらヤバい内容なのかもしれませんね」
 愛原「だったら手紙でもヤバいと思うけど?」
 パール「ですねぇ……」
 愛原「まあ、とにかく、予定通り、パールは高橋の面会に行ってくれ。差し入れ持参でな」
 パール「池田屋さんで買うのが間違い無いらしいですね?」
 愛原「そう」

 高橋には事務所での給料を差し入れとして渡している。
 収容者は拘置所内の売店でも買い物できるが、当然現金が無いと買えない。
 尚、買い物できるといっても、牢屋から出してもらって買いに行けるのではなく、メニュー表みたいなものがあって、それを担当刑務官に頼んで買ってきてもらうという方式らしい。

 

 今日の朝食は御飯食。
 今朝の魚は鮭。
 そんなに骨があるわけではないが、リサの場合は鋭い牙で骨までも食べてしまう。
 骨が多いアジの開きなんか出た時には、本当にバリボリ食べてしまう。

 リサ「じゃ、今日はわたしが先生の助手だね!」
 愛原「そうだな。事務所に入るには、その体操服から着替えないと」
 リサ「分かってるよ」

 リサは大きく頷いた。

[同日09時30分 天候:晴 愛原学探偵事務所2階]

 リサ「あっ、郵便局の人、来たー!」

 体操服ブルマから私服に着替えたリサが、鬼の尖った耳を澄まして言った。
 鬼形態になると五感が鋭くなるのが、リサの特徴だ。
 もっとも嗅覚は、他の感覚と同様、優れているものの、犬みたいに嗅ぎ分ける能力までは無いみたいで、他の強い臭いに紛れてしまうと利かなくなるという欠点がある。

 愛原「よく分かったな?」

 私が窓から下を覗くと、確かにバイクに乗った郵便配達員がポストに郵便物を投函するところだった。
 今日は受領印のいる物は無かったもよう。

 リサ「取って来る!」

 リサが私服の黒いプリーツスカートを靡かせ、事務所の玄関から外に出てポストの中身を回収した。

 愛原「ありがとう」

 リサが持って来た郵便物を受け取り、それを確認する。

 愛原「あー……あった」

 高橋からの手紙は確かに投函されていた。
 ということは、検閲で引っ掛かることはなかったということか。
 私は善場係長に、高橋の手紙が届いた旨を報告した。
 メールでの報告だったが……。
 それでも、了解の旨の返信は来た。

[同日10時00分 天候:晴 愛原学探偵事務所]

 予め開けておいたガレージに、1台の車が入って来る。
 デイライト東京事務所が所有する黒塗りのミニバンだ。
 私はリサにお茶の用意をするよう伝えると、エレベーターで1階に下りた。

 愛原「善場係長、おはようございます」
 善場「愛原所長、おはようございます」

 車から降りて来たのは善場係長だけだった。
 運転手はいつもの白峰主席なのかどうかは不明だが、運転手は基本的に車で待機していることになっているらしい。
 主席というと、偉そうな役職に聞こえるが、デイライトでは、ヒラの1つ上の役職だという。
 デイライトでは主席→主任→係長→課長代理(もしくは担当課長?)→課長……と出世していくとのこと。

 愛原「高橋からの手紙が届いてございます。どうぞ、上に」
 善場「ありがとうございます」 

 私と係長はエレベーターに乗った。

 善場「中身は確認されましたか?」
 愛原「いえ、まだです。まだ、開封していません」
 善場「そうですか」

 そして、エレベーターが2階に到着する。

 リサ「おはようございます」

 一応、リサもエレベーターまで出迎えた。

 善場「おはよう。あれから暴走していないみたいで何よりですね」
 リサ「せ、先生にこれ以上、迷惑は掛けられないし……」
 善場「良い心掛けです」

 私は応接コーナーに案内すると、自分の机に置いてあった手紙を持って来た。

 愛原「これがそうです」
 善場「なるほど。葉書ではなく、封書で郵送しましたか」
 愛原「開封しても?」
 善場「お願いします」

 リサがコーヒーを持って来る。
 私は2人の前で、高橋からの手紙を開封した。
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