報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 週末の魔道士達

2021-07-23 10:56:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月3日12:30.天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷2F書斎]

 イリーナ:「あらあら、あのコ達ったら……。家の中に誰もいないからって、昼食もそこそこに始めちゃって……。若いっていいわねぇ……」

 机の上に置かれたイリーナの大きな水晶玉には、稲生とマリアが【イチャラブ】するところが映し出されていた。

 ポーリン:「こりゃっ!そこでのんびり見とる場合か!」

 今度は別の水晶玉に、イリーナの姉弟子のポーリンが映った。

 イリーナ:「あら、姉さん。お久しぶり」
 ポーリン:「誰が姉さんじゃ!」
 イリーナ:「何かあったの?」
 ポーリン:「『シルバーフォックス』から矢のような催促じゃ。分かっておるな?」
 イリーナ:「いくら仕事とはいえ、あんな強欲共のお世話なんて、ストレスたまるわねぇ……」
 ポーリン:「『金も時間も十分につぎ込んだ。Covid騒ぎを起こしたのは、何も世界的イベントとしてではないぞ』などと嘯いておる」
 イリーナ:「ただの強がりよ。そんなに慌てなくても大丈夫」
 ポーリン:「イルミナティカードの通りにするつもりか?」
 イリーナ:「『時計台』はまだ『崩壊』してないわ」
 ポーリン:「しかし、『崩壊』してからでは遅い」
 イリーナ:「“魔女の宅急便”でも、時計台は破損しても崩壊はしなかったわ。今回も破損程度で収めておきましょう」
 ポーリン:「しかし、そう上手く行くのか?」
 イリーナ:「だーいじょーぶだって。そこは私に任せて」
 ポーリン:「お前に任せた結果が、第2次世界大戦の惨劇だ。今度はアドルフを屠るだけでは済まなくなるかもしれんぞ?」
 イリーナ:「さすがに3度も同じ失敗はしないから。それより、今は可愛い『子供達』が仲良くするのを見るのが楽しみなの。1000年以上も生きて、涙も枯れ果てて、笑えなくなって……」
 ポーリン:「分かった分かった。先生には私から言っておく」
 イリーナ:「ありがとう」

[同日21:51.天候:晴 埼玉県蕨市 JR蕨駅→京浜東北線2167A電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の電車は、21時51分発、各駅停車、磯子行きです。次は、西川口に止まります〕

 荷物を手に稲生家を後にした稲生とマリアは、夜の蕨駅にいた。

 マリア:「『ゆっくり』し過ぎて、マリアンナ人形に『糸を通す』時間が無くなっちゃったよ」
 稲生:「ゴメン……」
 マリア:「いいよ。屋敷に帰ってからにする」

〔まもなく1番線に、各駅停車、磯子行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。次は、西川口に止まります〕

 稲生:「クエスト、これで達成できたかな?」
 マリア:「このまま無事に帰れれば大丈夫」
 稲生:「何だか不安な言い方をするね?」
 マリア:「別に今のところ、私の予知能力では、変な予知をすることはないから大丈夫だと思うけど」

 隣の南浦和駅から、そこ始発の電車が入線してくる。
 週末に東京方面に向かう電車の、それも夜間で、隣の駅始発ということもあってか、車内はガラガラだった。

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます。次は、西川口に止まります〕

 2人は最後尾の車両に乗り込み、座席に座った。
 すぐに発車メロディが1コーラス鳴る。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車のドアとホームドアが閉まった。
 利用客も多く、その為、よく駆け込み乗車の多発する駅であるが、今回はそれは無かったもよう。
 電車はすぐに発車した。

〔次は、西川口です〕

 マリア:「まさか(コンドーム)一箱使い切るなんて……」
 稲生:「久しぶりだからつい……。でも、マリアもだよね?」
 マリア:「まあね……」
 稲生:「腰抜けてたもんね」
 マリア:「うん……」
 稲生:「今度はいつしようか?」
 マリア:「屋敷に帰ってからだね」
 稲生:「イリーナ先生、いるだろうなぁ……」
 マリア:「いや、師匠。明日か明後日から出かけるらしい」
 稲生:「そうなの」
 マリア:「久しぶりの大仕事だから、しばらく屋敷を開けることになるって」
 稲生:「それって……」
 マリア:「しばらく登用試験はお預けということに……」
 稲生:「うあー、そっかぁ!」
 マリア:「まあ、登用試験はそうでも、クエスト自体はこれから無事に帰れば自動的にクリアになるから、それはそれで……ね」

 このクエストは稲生がマスターに認定される登竜門の、最終関門の1つ手前の関門である。
 最終関門はその登用試験ということになるのだが、肝心の試験官達が多忙で実施できないようだ。

 稲生:「いつになったら、マリアと結婚できるんだろう……」
 マリア:「そのことなんだけど……」

[同日21:59.天候:晴 東京都北区赤羽 JR赤羽駅→埼京線2184K電車1号車内]

〔まもなく赤羽、赤羽。お出口は、右側です。埼京線、湘南新宿ラインと上野東京ラインはお乗り換えです〕

 電車は乗換駅である赤羽駅に到着した。

 稲生:「ここで乗り換えだよ」
 マリア:「うん……」

 マリアは立ち上がると、荷棚の荷物を下ろした。

〔あかばね、赤羽。ご乗車、ありがとうございます。次は、東十条に止まります〕

 マリア:「ちょっとさ、トイレ行ってきていい?」
 稲生:「いいよ。どうしたの?」

 マリアは家を出ると時、トイレを使用していた。
 それがまたトイレに行きたいとは……と、稲生は思ったのだ。

 マリア:「下着直してくる。ちょっと待ってて」
 稲生:「ああ、分かった」

 因みにその間、人形達の入ったバッグを稲生が預かることになる。
 今は賑やかな駅構内ということで、人形達もおとなしくしているが……。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の7番線の電車は、22時18分発、各駅停車、新宿行きです。次は、十条に止まります〕

 コンコースから埼京線ホームに上がって、先頭車の方に向かって歩く。
 バスタ新宿は新宿駅の南側にある為、1号車などの近くの車両に乗っておいた方が良いからだ。

〔まもなく7番線に、各駅停車、新宿行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。次は、十条に止まります〕

 稲生:「大丈夫だった?」
 マリア:「うん、何とか。ちょっと(下り物)シートが合わなくて。私はいいかな」
 稲生:「ふーん……?」

 京浜東北線とは色違いの電車がやってきた。
 埼京線にはまだホームドアが無いので、電車のドアはすぐに開く。

〔あかばね、赤羽。ご乗車、ありがとうございます。次は、十条に止まります〕

 先頭車は空いていた。
 京浜東北線のとは違い、モスグリーンのモケットが張られた座席に腰かける。

〔7番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 こちらもすぐに発車メロディが鳴った。
 ホームドアが無いので、電車のドアが閉まると、すぐに発車する。

〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです。次は十条、十条。お出口は、左側です。……〕

 稲生:「ねぇ、マリア」
 マリア:「なに?」
 稲生:「先生が出掛けるということは、その……屋敷には、僕達だけってこと?」
 マリア:「そうなるね。もっとも、師匠だけじゃなく、他の先生も忙しくなるらしいから、エレーナとかは遊びに来るかもしれないけど」
 稲生:「そっかぁ……」
 マリア:「弟子自体がもう弟子を取ってもいいような実力者なら、先生の助手が務まるから一緒に行くだろうけど、私達だとまだ足手まといだから」
 稲生:「そんなに難しい仕事なの?」
 マリア:「というより、師匠達が自分達でやって当然だと思ってるから。あとのことは魔法で何とでもできるし」
 稲生:「それっていいことなのか悪い事なのか……」
 マリア:「他の組はどうだか知らないけど、私達は師匠から頼まれたことだけやっていればいいから。そしてそれは、屋敷に帰ってみれば分かる」
 稲生:「なるほど。マリアは屋敷に帰ったら、何が待っていると思う?」
 マリア:「何も無いと思う。恐らく、『留守番よろしく』くらいのメッセージだろう」
 稲生:「他の組だと、何かしらの課題とかがあるだろうにねぇ……」
 マリア:「そういう人なの。うちの師匠は。まあ、そういうことだから、これの続きは帰ってから……ね」

 マリアは左手の親指と人差し指で輪っかを作り、右手の人差し指をその穴に何度も出し入れする仕草をした。

 稲生:「分かった!」

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1 コメント

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Unknown (雲羽百三)
2021-07-23 14:24:15
珍しいこともあるものだ。
まさか2日連続で“ふたりの海物語”が聴けるとはな!
ワリン、意外と演歌上手いな!
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