[12月30日18時00分 天候:曇 栃木県日光市某所 某民泊施設]
夕食の時間になり、座卓にはカセットコンロが置かれていた。
愛原「さすがに、すき焼きだけじゃなかったか」
高橋「一応、特売してた総菜とかも買っておきました」
愛原「さすがだな」
高橋「あざーす!」
焼き魚や刺身もあった。
愛原「それじゃ、いただきまーす」
リサ「いただきまーす!」
調査は一旦終了して、夕食を囲む。
尚、今回は調査の為に泊まるわけだから、ビールは無しである。
アルコールは慰安旅行の明日以降である。
高橋「それで先生、何か分かりましたか?」
愛原「全然ダメだ。家を隅から隅まで探してみたが、全く何も見つからない!これじゃ、栗原さん達に報告のしようがないよ」
高橋「いいんじゃないっスか?『何もありませんでしたー』で」
愛原「いや、しかしだね……」
パール「愛原先生。すき焼き、取りましょうか?」
愛原「え?ああ、済まんね」
高橋「リサ、そっちの肉は煮えてねーぞ」
リサ「生くらいがちょうどいいんだよ」
高橋「そういう問題じゃねぇ!」
尚、カセットコンロは2つ使用している。
鍋も2つ。
大きい方は、私と高橋、パールの大人用。
やや小さい方の鍋は、リサと絵恋用にした。
愛原「地下室説はハズレみたいだな」
高橋「そうっスか……」
それにしても、夢で見たあの和室は何だったのだろう?
この家の事ではないだろう。
この家の和室は、この大広間だけだ。
しかし、内装が全く異なる。
まず、夢の中に出て来た和室は10畳一間といった感じ。
それに対して、この部屋は8畳二間である。
また、窓も四方に小さな窓が1つずつあるだけだった。
しかし、この部屋は縁側に向かって大きな窓がある。
愛原「なあ、リサ」
リサ「ふぁに?」
リサはすき焼きの肉を頬張っていた。
愛原「あの夢の中で見た和室って、一体どこなんだろうな?」
リサ「そうだねぇ……。広さ的には、天長園みたいだね」
愛原「天長園!?」
明日、泊まりに行くホテル天長園のことである。
リサ「10畳間でしょ?だいたい、ホテルの客室の部屋くらいじゃない?」
愛原「そうかぁ……。いや、でも、おかしいぞ。夢の中の和室は、四方に窓があった。だけど、天長園みたいなホテルの客室なんて、だいたい大きな窓が1つあるだけじゃないか?」
リサ「まあ、そうだね……」
愛原「確かに、あのホテルも山の中にあるから、窓から山が良く見えるけど……」
リサ「この家だってそうじゃん」
愛原「そうだけど、夢の中の山並みは、もっと高い位置から……ん?」
その時、私はふと気づいた。
夢の中の私は、何故か身長が低かったような気がする。
目線が、例の少年を見下ろす形ではなく、それと同じくらいの目線だったのだ。
でも、窓はそんなに高い位置にあるわけでもない。
まるで、屋根裏部屋のような雰囲気だった。
愛原「屋根裏……?」
私は屋根を見上げた。
愛原「飯を食ったら、もう1度、家の周りを確認するぞ」
高橋「は、はい」
[同日19時00分 天候:雪 同民泊]
夕食を終えた私は、片づけを高橋とパールに任せた。
調査の手伝いは、リサにさせることにした。
リサの方が夜目が利くからである。
もちろん、私はマグライトを持って来ている。
LEDの明るい光が夜空を照らしてくれるほどの明るさを持つ。
リサ「先生、雪が降ってきたよ?」
愛原「ただの小雪だろ。吹雪になるほどでは……」
ヒュウッ!
愛原「うっ!」
リサ「風が強いんだよ!」
愛原「くそっ、こんな時に……!」
私は玄関を出ると、ライトを点けて家の上の方を照らした。
もしもこの家に屋根裏部屋があるというのなら、どこかに窓があるはずだし、仮に改築の際に埋められたとしても、その痕跡があるはずだ。
屋根にも5cmほどの雪が積もっていたが、調査の妨げにはならないはずである。
愛原「っと、あの小さな窓は……」
リサ「物置部屋だよ、先生」
愛原「何だ、そうか。びっくりした。屋根裏部屋の窓かと思ったよ……えっ!?」
その時、私は足をピタリと止めた。
リサ「どうしたの、先生?」
愛原「そういえばさ、リサ……」
リサ「ん?」
私はふと気づいた。
物置部屋だけ、天井が高いことを……。
そして、もう1つ疑問が湧く。
物置部屋には、高窓がある。
私は最初、採光と換気の為にある窓だと思っていた。
例えば、採光の為だけならはめ殺しでもいいだろう。
しかし、あの窓、開閉式になっていた。
それは換気の為であろうと思っていた。
だったら、どうして高窓にする必要があったのだろう?
愛原「ちょっと、物置部屋を確認するぞ」
リサ「うん」
私達は家の中に戻った。
高橋「先生、何か見つかりましたか?」
愛原「屋根裏部屋があったと思われる痕跡を見つけた」
高橋「マジっすか!?どこっすか!?」
愛原「あれだよ」
私は物置部屋に向かい、そこの照明を点けた。
高い天井からコードがぶら下がり、そこに電球が1つだけ点いている。
それもLED電球になっていた。
高橋「あの窓が何か?」
愛原「そこに脚立があるな……」
私は脚立を使い、それで窓に近づいてみた。
愛原「あー、やっぱり……」
脚立を上って窓に近づく。
そして、窓から見た景色が、正に夢の中で見た窓からの景色によく似ていた。
脚立を使わないと近づけない窓は、何故か他の窓のように、互い違いの引き戸式の開閉窓になっている。
脚立が無いと近づけない構造になっているのがおかしい。
そして、脚立を階段に見立てると、ようやく納得した。
愛原「この物置部屋……階段室だったんだ!」
高橋「ええっ!?」
愛原「ここに階段があって、あの窓の辺りには踊り場があった。それから、折り返して更に上に上ると2階があったんじゃないか!?」
リサ「まさか、その2階こそが……」
愛原「夢に出て来た10畳間だろうな」
身長が低いように思われた理由も納得が行く。
多分、階段を上った先はすぐに10畳間になっていたのだろう。
2階というよりは、本当に屋根裏部屋みたいな感じだったのかもしれない。
夢の中の私は、階段の途中に立っていて、あの少年を見ていたのではないか。
愛原「あくまでも推理だ。確認しないと」
高橋「でも、2階建てを平屋にすることってあるんスか?」
愛原「無いことは無いらしいぞ。減築って言うんだ」
高橋「ゲンチク?」
愛原「増築の対義語だ」
高橋「でも、どうしてそんなことをしたんスかね?」
愛原「ここが『鬼の棲む家』だったことを、隠す為じゃないかな?鬼はこの家の2階に棲んでいた。その証拠を完全に抹消する為に」
減築によって、階段は当然不要になり、撤去された。
そして、空いた元・階段室を物置部屋に改装したのではないか。
その際、踊り場にあった窓は埋められたり、他の窓に換えられることなく、そのまま物置部屋の窓として流用された。
愛原「もしもし、蓮華さん?ちょっとさ、日光の家のことについて聞きたいんだ。年末休みの、しかも夜に悪いんだけど、不動産屋さんに繋げてもらえないかな?」
直接、不動産屋に電話をすることは可能だ。
しかし、恐らく私が直接電話しても、年末休みだとか、夜間で時間外だからと対応してもらえないと思い、身内の力を借りることにした。
蓮華「私から聞きますよ。何ですか?」
愛原「私達が泊まっている民泊施設って、元は2階建てだったんじゃないかって質問だよ。或いは、屋根裏部屋があったとか……。そういうことを確認したいんだ」
蓮華「分かりました。少しお待ちください」
一旦、電話が切られた。
果たして、私の推理は当たっているのだろうか?
これでもし違ったら、もう万事休すである。
夕食の時間になり、座卓にはカセットコンロが置かれていた。
愛原「さすがに、すき焼きだけじゃなかったか」
高橋「一応、特売してた総菜とかも買っておきました」
愛原「さすがだな」
高橋「あざーす!」
焼き魚や刺身もあった。
愛原「それじゃ、いただきまーす」
リサ「いただきまーす!」
調査は一旦終了して、夕食を囲む。
尚、今回は調査の為に泊まるわけだから、ビールは無しである。
アルコールは慰安旅行の明日以降である。
高橋「それで先生、何か分かりましたか?」
愛原「全然ダメだ。家を隅から隅まで探してみたが、全く何も見つからない!これじゃ、栗原さん達に報告のしようがないよ」
高橋「いいんじゃないっスか?『何もありませんでしたー』で」
愛原「いや、しかしだね……」
パール「愛原先生。すき焼き、取りましょうか?」
愛原「え?ああ、済まんね」
高橋「リサ、そっちの肉は煮えてねーぞ」
リサ「生くらいがちょうどいいんだよ」
高橋「そういう問題じゃねぇ!」
尚、カセットコンロは2つ使用している。
鍋も2つ。
大きい方は、私と高橋、パールの大人用。
やや小さい方の鍋は、リサと絵恋用にした。
愛原「地下室説はハズレみたいだな」
高橋「そうっスか……」
それにしても、夢で見たあの和室は何だったのだろう?
この家の事ではないだろう。
この家の和室は、この大広間だけだ。
しかし、内装が全く異なる。
まず、夢の中に出て来た和室は10畳一間といった感じ。
それに対して、この部屋は8畳二間である。
また、窓も四方に小さな窓が1つずつあるだけだった。
しかし、この部屋は縁側に向かって大きな窓がある。
愛原「なあ、リサ」
リサ「ふぁに?」
リサはすき焼きの肉を頬張っていた。
愛原「あの夢の中で見た和室って、一体どこなんだろうな?」
リサ「そうだねぇ……。広さ的には、天長園みたいだね」
愛原「天長園!?」
明日、泊まりに行くホテル天長園のことである。
リサ「10畳間でしょ?だいたい、ホテルの客室の部屋くらいじゃない?」
愛原「そうかぁ……。いや、でも、おかしいぞ。夢の中の和室は、四方に窓があった。だけど、天長園みたいなホテルの客室なんて、だいたい大きな窓が1つあるだけじゃないか?」
リサ「まあ、そうだね……」
愛原「確かに、あのホテルも山の中にあるから、窓から山が良く見えるけど……」
リサ「この家だってそうじゃん」
愛原「そうだけど、夢の中の山並みは、もっと高い位置から……ん?」
その時、私はふと気づいた。
夢の中の私は、何故か身長が低かったような気がする。
目線が、例の少年を見下ろす形ではなく、それと同じくらいの目線だったのだ。
でも、窓はそんなに高い位置にあるわけでもない。
まるで、屋根裏部屋のような雰囲気だった。
愛原「屋根裏……?」
私は屋根を見上げた。
愛原「飯を食ったら、もう1度、家の周りを確認するぞ」
高橋「は、はい」
[同日19時00分 天候:雪 同民泊]
夕食を終えた私は、片づけを高橋とパールに任せた。
調査の手伝いは、リサにさせることにした。
リサの方が夜目が利くからである。
もちろん、私はマグライトを持って来ている。
LEDの明るい光が夜空を照らしてくれるほどの明るさを持つ。
リサ「先生、雪が降ってきたよ?」
愛原「ただの小雪だろ。吹雪になるほどでは……」
ヒュウッ!
愛原「うっ!」
リサ「風が強いんだよ!」
愛原「くそっ、こんな時に……!」
私は玄関を出ると、ライトを点けて家の上の方を照らした。
もしもこの家に屋根裏部屋があるというのなら、どこかに窓があるはずだし、仮に改築の際に埋められたとしても、その痕跡があるはずだ。
屋根にも5cmほどの雪が積もっていたが、調査の妨げにはならないはずである。
愛原「っと、あの小さな窓は……」
リサ「物置部屋だよ、先生」
愛原「何だ、そうか。びっくりした。屋根裏部屋の窓かと思ったよ……えっ!?」
その時、私は足をピタリと止めた。
リサ「どうしたの、先生?」
愛原「そういえばさ、リサ……」
リサ「ん?」
私はふと気づいた。
物置部屋だけ、天井が高いことを……。
そして、もう1つ疑問が湧く。
物置部屋には、高窓がある。
私は最初、採光と換気の為にある窓だと思っていた。
例えば、採光の為だけならはめ殺しでもいいだろう。
しかし、あの窓、開閉式になっていた。
それは換気の為であろうと思っていた。
だったら、どうして高窓にする必要があったのだろう?
愛原「ちょっと、物置部屋を確認するぞ」
リサ「うん」
私達は家の中に戻った。
高橋「先生、何か見つかりましたか?」
愛原「屋根裏部屋があったと思われる痕跡を見つけた」
高橋「マジっすか!?どこっすか!?」
愛原「あれだよ」
私は物置部屋に向かい、そこの照明を点けた。
高い天井からコードがぶら下がり、そこに電球が1つだけ点いている。
それもLED電球になっていた。
高橋「あの窓が何か?」
愛原「そこに脚立があるな……」
私は脚立を使い、それで窓に近づいてみた。
愛原「あー、やっぱり……」
脚立を上って窓に近づく。
そして、窓から見た景色が、正に夢の中で見た窓からの景色によく似ていた。
脚立を使わないと近づけない窓は、何故か他の窓のように、互い違いの引き戸式の開閉窓になっている。
脚立が無いと近づけない構造になっているのがおかしい。
そして、脚立を階段に見立てると、ようやく納得した。
愛原「この物置部屋……階段室だったんだ!」
高橋「ええっ!?」
愛原「ここに階段があって、あの窓の辺りには踊り場があった。それから、折り返して更に上に上ると2階があったんじゃないか!?」
リサ「まさか、その2階こそが……」
愛原「夢に出て来た10畳間だろうな」
身長が低いように思われた理由も納得が行く。
多分、階段を上った先はすぐに10畳間になっていたのだろう。
2階というよりは、本当に屋根裏部屋みたいな感じだったのかもしれない。
夢の中の私は、階段の途中に立っていて、あの少年を見ていたのではないか。
愛原「あくまでも推理だ。確認しないと」
高橋「でも、2階建てを平屋にすることってあるんスか?」
愛原「無いことは無いらしいぞ。減築って言うんだ」
高橋「ゲンチク?」
愛原「増築の対義語だ」
高橋「でも、どうしてそんなことをしたんスかね?」
愛原「ここが『鬼の棲む家』だったことを、隠す為じゃないかな?鬼はこの家の2階に棲んでいた。その証拠を完全に抹消する為に」
減築によって、階段は当然不要になり、撤去された。
そして、空いた元・階段室を物置部屋に改装したのではないか。
その際、踊り場にあった窓は埋められたり、他の窓に換えられることなく、そのまま物置部屋の窓として流用された。
愛原「もしもし、蓮華さん?ちょっとさ、日光の家のことについて聞きたいんだ。年末休みの、しかも夜に悪いんだけど、不動産屋さんに繋げてもらえないかな?」
直接、不動産屋に電話をすることは可能だ。
しかし、恐らく私が直接電話しても、年末休みだとか、夜間で時間外だからと対応してもらえないと思い、身内の力を借りることにした。
蓮華「私から聞きますよ。何ですか?」
愛原「私達が泊まっている民泊施設って、元は2階建てだったんじゃないかって質問だよ。或いは、屋根裏部屋があったとか……。そういうことを確認したいんだ」
蓮華「分かりました。少しお待ちください」
一旦、電話が切られた。
果たして、私の推理は当たっているのだろうか?
これでもし違ったら、もう万事休すである。
twitterの行く末を案じるtwitter民は散見されるが、もしもダメになったら、またここに戻ってこよう。
こういう時、他のSNSを確保していると安心だ。
できるのは、リツイートとフォロー先とのDMだけだ。
一体、何だったんだろう?