報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「自粛明け」

2020-06-18 14:58:51 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月10日19:00.岩手県盛岡市中央通 某居酒屋 視点:稲生勇太]

 稲生:「あっ、雨が上がってる」
 イリーナ:「良かったじゃない」

 今日は1日中雨ということだが、稲生達が夕食に出かけようとした時には雨が上がっていた。
 空は雲が多かったが、所々青空が見えている。

 稲生:「それじゃ、行きましょうか」
 マリア:「この近くか?」
 稲生:「そうです」

 今のマリアとアンナは、学校制服のような服ではなく、Tシャツにジーンズというラフな格好をしている。
 もっとも、これから一杯やりに行くのに、未成年に見える恰好をして行ってはダメだろうというアナスタシアからの指摘。
 とはいえ2人とも小柄で童顔なので、それでも怪しまれるかもしれない。
 こう見えてもこの2人、実年齢は【お察しください】。
 これは契約悪魔の影響による。
 せっかくの契約相手たる魔道士を少しでも長く生かす為、寿命の水増しを行っているのである。
 結果、体の成長も老化も極端に遅くなるのだという。
 但し、全ての悪魔がそういうわけではない。
 たまたま稲生達が契約してる悪魔が、そういう思考なだけである。
 中には契約相手をとっかえひっかえ、新規契約料稼ぎを行っている悪魔もいるので。

 アナスタシア:「久しぶりに魚を食べるわ」
 アンナ:「うちの組、肉しか食べませんからねぇ……」

 で、向かった先は居酒屋。
 チェーン店ではない。
 結局チェーン店以外いい所が見つからなかった稲生は、ホテルのフロントに紹介を頼んでみた。
 ホテルはどこでも、旅行客からそのような質問や依頼を受けることが多々ある。
 稲生達のホテルも例外ではなかったようで、フロント係はすぐさま近所の居酒屋を何軒か紹介してきた。
 稲生が頼んだのは居酒屋の紹介であったが、ホテルによっては他にも遊興施設や風俗店などの『夜のお店』まで紹介していることもある。

 店員:「いらっしゃいませー!」
 稲生:「すいませーん。5名で予約した稲生です」
 店員:「稲生様ですね。どうぞ、こちらへ」

 座敷が押さえられていた。

 マリア:「イブキの家みたいだな」
 稲生:「日本料理屋ですから」

 靴を脱いで上がると、店員がおしぼりを持ってくる。

 イリーナ:「はい、遠慮しないで食べていいよ。ナスっちの奢りだから」
 アナスタシア:「アタシにタカるな!」
 イリーナ:「ここ、カード使える?」
 店員:「はい。大丈夫ですよ」
 イリーナ:「……だって。良かったね」
 アナスタシア:「いや、だから……」
 イリーナ:「あなたはブラックカード持ってるじゃないの」
 アナスタシア:「普段は持ち歩かないって。それはアンタもでしょ」
 イリーナ:「飲み放題にしてくれる」
 店員:「飲み放題ですね」
 イリーナ:「日本酒、何かオススメはある?」
 店員:「今ですと、こちらの純米大吟醸酒が……」
 稲生:「僕はビールでいいかな……」
 マリア:「ハイボール」
 アンナ:「レモンチューハイ」

 弟子達は控えめである。

 店員:「お待たせしましたー!」

 注文した酒と一緒に御通しもやはり来た。

 マリア:「テーブルチャージが現物で来るのが日本のバー」
 稲生:「しかも、後でまとめて支払います」
 アンナ:「何その取って付けたような説明?」

 それでまずは乾杯する。

 アナスタシア:「たまにウォッカが飲みたくなるんだけど、この店には無いようね」
 稲生:「あ、すいません。今度探しておきます」
 イリーナ:「いいじゃない。こっちの酒も美味しいわよ」
 アナスタシア:「だから、たまにはよ」
 イリーナ:「今の若いコ、ウォッカあまり飲まないみたいよ」
 アンナ:「そうですねぇ……」
 稲生:「若い日本人が、日本酒や焼酎をあまり飲まなくなったのと同じですかね。ま、カクテルやチューハイとしてなら少しは飲むといったところですか」
 イリーナ:「じゃんじゃん頼んじゃって」
 稲生:「はい、頂きます!」

 とはいえ、イリーナ達も結構食べるのである。

 マリア:「師匠、飲み過ぎないでくださいよ」
 イリーナ:「だーいじょうぶだって!ね?ナスっち!」
 アナスタシア:「いや、だからその呼び方やめなって」

 イリーナとアナスタシアは歳も近く、入門時期もそんなに離れていないので気楽なのだろう。
 もっとも、我こそエリートたらんとするアナスタシアには、そうではないイリーナの絡みは多少ウザいかもしれないが。

 稲生:「飲み過ぎて不幸な目に遭った人の怖い話とかは無いの?」
 アンナ:「お望みなら、話してあげる」
 マリア:「せっかくのディナーが不味くなるからやめろ」

 しかも聞いた側がヘタしたら呪い殺されるというアンナの魔法。

[同日21:00.同市内 ホテルドーミーイン盛岡 視点:稲生勇太]

 稲生:「先生方、御馳走さまでした」
 アナスタシア:「稲生君は心配しなくていいよ。この借りは後でイリーナに返してもらうから」
 イリーナ:「また勇太君に美味しいお店探してもらうわよぉ」
 稲生:「はあ……。それは構いませんが」
 アンナ:「先生。勇太の部屋に行ってもいいですか?」
 マリア:「私も行く!」

 マリアとアンナは師匠2人以上に顔と体を赤くしていた。

 アナスタシア:「そうねぇ……。じゃ、こうしましょう。私がイリーナと同じ部屋で寝るわ。どうせまだ話は終わってないし」
 イリーナ:「えー?アタシ、もう眠いんだけど……」
 アナスタシア:「たまには一徹しなさい。まだ、魔界での話、終わってないんだから」
 アンナ:「だったら、勇太が私の部屋に来ればいいじゃない。ツインなんだから、部屋が広いよ」
 マリア:「私も行く!」
 稲生:「お、お邪魔します……」
 マリア:「映画観るだけだからね!今度はJapanese Horror!」
 稲生:「“私立探偵 愛原学”もホラーアクションだと思うけど……」
 マリア:「あれは日本人がハリウッドの真似をしてるだけでしょ?」
 アンナ:「確かにJapanese Horrorは、私の呪術の参考になるかもね。ちょっと観てみたい気はする」
 稲生:「分かった。分かりましたよ」
 アンナ:「このホテル、ポップコーンとコーラは売ってる?」
 稲生:「ホラー映画って、ポップコーン片手に観るようなヤツかなぁ……?コーラは自販機で売ってるけど、ポップコーンはさすがに無いよ。ピーナッツとかならあるかもしれない」
 マリア:「いくら日本料理がヘルシーだからって、あれだけ食べた後でピーナッツとか食べたら太るよ」
 稲生:「とにかく、自販機まで行ってみましょう」
 イリーナ:「仲良く観るのよ」
 アナスタシア:「ダンテ先生に、後で怒られるようなことはしないように」

 稲生達は師匠2人の言葉を背に、先にエレベーターに乗り込んだ。

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