[19:30.戦闘場所から少し離れた所 ユタ、威吹、マリア]
「マリアさん、走れますか!?」
「き……気持ち悪い……」
「車でも拾えれば……。ん?ねぇ、ユタ!あれ見て!」
威吹は、まるで乗り捨てられているかのように更地に停車しているタクシーを見つけた。
「おおっ、正に御守護だ!」
ユタは歓喜して、タクシーに近づいた。
「すいません!乗せてくだ……って、あれ?誰もいない」
「なにっ!」
「どこに行ったんだろう……?」
「この車……」
マリアは口元を押さえながら言った。
「来る時に乗ったのと同じ……」
「ええっ!?」
「うん……。間違いない」
「僕達を待っててくれたのかな……」
しかしその時、誰も乗っていないはずの車が揺れた。因みにエンジンは掛かっていない。
「な、何だ!?」
威吹はフンフンと鼻を鳴らした。そして、トランクを指さす。
「ユタ、ここから人間の匂いがする」
「何だって!?」
威吹は無理やりこじ開けようとしたが、
「待って待って。確か、この車種だと、この辺に……」
ユタは運転席のドアを開けた。そして、レバーを引く。
「開いた」
果たしてトランクには、
「だ、誰だ、お前!?」
両手両足を縛られ、猿ぐつわをされている中年男性がいた。
「大丈夫ですか!?」
ユタは猿ぐつわを外した。
「た、助かったー!」
「もしかして……」
マリアが相変わらず口元を押さえて言った。
「あなたがこのタクシーの運転手?」
「そ、そうです!」
「ええーっ!」
そんなやり取りをしているのだから、いかにショベルカーの走行速度が遅いとはいえ、追いつかれそうなものである。
運転手が無線で個人タクシー協会事務所や警察に電話している間、ユタ達はそんな話題をしていた。
「ここで連中を迎撃しようかと思ったが……。待てど暮らせど来ない」
威吹は妖刀を鞘に収め、今度は脇差を抜いていた。人を斬る時は脇差を使う。
「何かあったのかな?」
「ミク、ちょっと見てきて」
マリアはミク人形に命じた。ミク人形はコクっと頷くと、空中を浮遊して現場に向かった。
「何気に自爆してたりして」
「すいません。警察を呼びましたので、よろしいでしょうか?」
本物の横田運転手が頭をかいて言った。
「運転手さん、ケガは?」
「無いです。でも一応、警察の方から救急車を呼ぶみたいで、病院に行くように言われました」
「そうでしたか」
ミク人形が戻ってくる。
「どうだった?」
ミク人形はマリアに耳打ちした。
「えっ?乱闘?」
「乱闘?」
ユタと威吹は同時に首を傾げた。
[19:45. さっきの戦闘場所 ユタ、威吹、マリア]
「この野郎、やっと見つけたぞ!」
「この前、うちの講員にケガさせやがって!」
ケンショーレンジャー達は、数人の男達に連れ去られようとするところだった。
「警察に突き出すからな!」
「あ、あの人は……」
リーダーシップを発揮している壮年の男。体格などは、藤谷にそっくりな……。
「藤谷地区長!」
ユタが声を掛けると、懐中電灯で照らされた。
「おおっ、稲生君!威吹君も一緒か!」
「何をしてるんです?」
「息子から電話があってね。こっちに君達が来て、おおかたケンショーレンジャー達と鉢合わせになるだろうから、何とかしてやってくれってさ。そこで君のケータイのGPSを追ってみたら、ここに来たじゃないか。横田君には大変な思いをさせてしまったがね」
「横田……君?」
「顕正会的には、まだ男子部所属になっているようだが、今ではうちの講員だよ」
「ええっ!?」
「藤谷さん!横田さん、向こうにいますよ!」
藤谷地区長の下にいると思われる地区員がやってきた。
「横田繋がりで、横田理事に接近してみたら、まさか車ごと奪われるとはな……。今度こそ、会館ガサ入れだけでは済まんぞー」
「ちょっと待った!ボク達は藤谷親子に踊らされただけですか!?」
威吹は開いた口が塞がらなかった。
「もう1つ!イリーナさんはどこ!?」
そこへユタのケータイが鳴った。
「はい、もしもし?」
{「あっ、稲生君?あたし、イリーナだけど」}
「あっ、イリーナさん、どうも。あの、今どこですか!?」
{「どこって、センダイにいるよ。長野の屋敷に連絡したんだけど、マリア知らない?」}
「マリアさんなら、ここにいますよ」
{「あなた達、今どこにいるの?」}
「仙台ですよ。イリーナさんこそ、仙台のどこにいるんです?」
{「センダイ駅前よ」}
「分かりました。じゃあ、今から駅に行きますから。駅のどこで、待ち合わせしますか?……西口ですね。じゃあ、着いたらまた電話します。この番号でいいですね?……分かりました。失礼します」
ユタは電話を切った。
「今から、駅に向かおう。イリーナさん、そこにいるって」
「全く。ボクは何回、この女達に振り回されればいいんだ?」
「まあまあ」
ユタは威吹をなだめた。
「駅まで行くのかい?それじゃ、送って行こう」
「あ、すいません」
藤谷地区長の誘導で、ゼロ・クラウンに乗り込む。
「この後、どうするの?今からなら最終の新幹線に間に合うけど?」
「ああ……。まずは、待ち合わせしている人に会ってから決めます」
「そうかい。もし市内に宿泊するんなら、私に連絡ちょうだい。私が顔を利かせるから」
「ありがとうございます」
車は産業道路に出て、西の市街地へ向かった。
この後、とんでもないオチが待っているとも知らず……。
「マリアさん、走れますか!?」
「き……気持ち悪い……」
「車でも拾えれば……。ん?ねぇ、ユタ!あれ見て!」
威吹は、まるで乗り捨てられているかのように更地に停車しているタクシーを見つけた。
「おおっ、正に御守護だ!」
ユタは歓喜して、タクシーに近づいた。
「すいません!乗せてくだ……って、あれ?誰もいない」
「なにっ!」
「どこに行ったんだろう……?」
「この車……」
マリアは口元を押さえながら言った。
「来る時に乗ったのと同じ……」
「ええっ!?」
「うん……。間違いない」
「僕達を待っててくれたのかな……」
しかしその時、誰も乗っていないはずの車が揺れた。因みにエンジンは掛かっていない。
「な、何だ!?」
威吹はフンフンと鼻を鳴らした。そして、トランクを指さす。
「ユタ、ここから人間の匂いがする」
「何だって!?」
威吹は無理やりこじ開けようとしたが、
「待って待って。確か、この車種だと、この辺に……」
ユタは運転席のドアを開けた。そして、レバーを引く。
「開いた」
果たしてトランクには、
「だ、誰だ、お前!?」
両手両足を縛られ、猿ぐつわをされている中年男性がいた。
「大丈夫ですか!?」
ユタは猿ぐつわを外した。
「た、助かったー!」
「もしかして……」
マリアが相変わらず口元を押さえて言った。
「あなたがこのタクシーの運転手?」
「そ、そうです!」
「ええーっ!」
そんなやり取りをしているのだから、いかにショベルカーの走行速度が遅いとはいえ、追いつかれそうなものである。
運転手が無線で個人タクシー協会事務所や警察に電話している間、ユタ達はそんな話題をしていた。
「ここで連中を迎撃しようかと思ったが……。待てど暮らせど来ない」
威吹は妖刀を鞘に収め、今度は脇差を抜いていた。人を斬る時は脇差を使う。
「何かあったのかな?」
「ミク、ちょっと見てきて」
マリアはミク人形に命じた。ミク人形はコクっと頷くと、空中を浮遊して現場に向かった。
「何気に自爆してたりして」
「すいません。警察を呼びましたので、よろしいでしょうか?」
本物の横田運転手が頭をかいて言った。
「運転手さん、ケガは?」
「無いです。でも一応、警察の方から救急車を呼ぶみたいで、病院に行くように言われました」
「そうでしたか」
ミク人形が戻ってくる。
「どうだった?」
ミク人形はマリアに耳打ちした。
「えっ?乱闘?」
「乱闘?」
ユタと威吹は同時に首を傾げた。
[19:45. さっきの戦闘場所 ユタ、威吹、マリア]
「この野郎、やっと見つけたぞ!」
「この前、うちの講員にケガさせやがって!」
ケンショーレンジャー達は、数人の男達に連れ去られようとするところだった。
「警察に突き出すからな!」
「あ、あの人は……」
リーダーシップを発揮している壮年の男。体格などは、藤谷にそっくりな……。
「藤谷地区長!」
ユタが声を掛けると、懐中電灯で照らされた。
「おおっ、稲生君!威吹君も一緒か!」
「何をしてるんです?」
「息子から電話があってね。こっちに君達が来て、おおかたケンショーレンジャー達と鉢合わせになるだろうから、何とかしてやってくれってさ。そこで君のケータイのGPSを追ってみたら、ここに来たじゃないか。横田君には大変な思いをさせてしまったがね」
「横田……君?」
「顕正会的には、まだ男子部所属になっているようだが、今ではうちの講員だよ」
「ええっ!?」
「藤谷さん!横田さん、向こうにいますよ!」
藤谷地区長の下にいると思われる地区員がやってきた。
「横田繋がりで、横田理事に接近してみたら、まさか車ごと奪われるとはな……。今度こそ、会館ガサ入れだけでは済まんぞー」
「ちょっと待った!ボク達は藤谷親子に踊らされただけですか!?」
威吹は開いた口が塞がらなかった。
「もう1つ!イリーナさんはどこ!?」
そこへユタのケータイが鳴った。
「はい、もしもし?」
{「あっ、稲生君?あたし、イリーナだけど」}
「あっ、イリーナさん、どうも。あの、今どこですか!?」
{「どこって、センダイにいるよ。長野の屋敷に連絡したんだけど、マリア知らない?」}
「マリアさんなら、ここにいますよ」
{「あなた達、今どこにいるの?」}
「仙台ですよ。イリーナさんこそ、仙台のどこにいるんです?」
{「センダイ駅前よ」}
「分かりました。じゃあ、今から駅に行きますから。駅のどこで、待ち合わせしますか?……西口ですね。じゃあ、着いたらまた電話します。この番号でいいですね?……分かりました。失礼します」
ユタは電話を切った。
「今から、駅に向かおう。イリーナさん、そこにいるって」
「全く。ボクは何回、この女達に振り回されればいいんだ?」
「まあまあ」
ユタは威吹をなだめた。
「駅まで行くのかい?それじゃ、送って行こう」
「あ、すいません」
藤谷地区長の誘導で、ゼロ・クラウンに乗り込む。
「この後、どうするの?今からなら最終の新幹線に間に合うけど?」
「ああ……。まずは、待ち合わせしている人に会ってから決めます」
「そうかい。もし市内に宿泊するんなら、私に連絡ちょうだい。私が顔を利かせるから」
「ありがとうございます」
車は産業道路に出て、西の市街地へ向かった。
この後、とんでもないオチが待っているとも知らず……。
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