[10月15日13:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
愛原:「ただいまァ」
高野:「お帰りなさい、先生」
高橋:「お帰りなさいっス、先生!昼飯まだっスよね!?俺、今ホットドッグ作ってるところなんで」
愛原:「ああ、すまないね。リサは?」
高野:「家に帰りました。善場主任との面談も終了して、主任も帰られてます」
愛原:「そうか。特に問題無かったのかな?」
高野:「そのようですね。リサちゃん、『人間の姿が正しいのに、その姿が「第0形態」と呼ぶのはおかしい』って言い出しまして……」
愛原:「そうなんだ。よほど人間に戻りたいんだな」
元々は人間の姿が第1形態だったのだが、その後のウィルス活性化によって、今の第1形態(鬼娘のような姿)が自然体でいられる姿になり、人間の姿は意図的にそうしないとなれないようになってしまった為、人間の姿を『第0形態』と呼ぶようになったのではなかったか。
鬼娘の姿を『第1形態』、人間の姿を『第2形態』と呼んでしまうと、元の姿が『第1形態』よりも恐ろしい『第2形態』という変な話になってしまうからだと善場主任から聞いた気がする。
高野:「人間の姿を『第1形態』、鬼の姿を『第2形態』と呼んでもいいと思うんですよ。何だか変ですね」
愛原:「そういうものだろう?」
善場主任のことだから、ちゃんとリサには説明しただろう。
何て説明したのか、後でリサに聞いてみよう。
高橋:「お待たせしました、先生」
愛原:「おー、サンクス」
給湯室で作ったらしい。
わざわざキャベツの千切りとウィンナーを炒め、背割りコッペパンに挟んでオーブンレンジで焼くという、まるで喫茶店のホットドッグのような作り方をする。
ついでにコーヒーも持って来てくれた。
愛原:「うん、美味い美味い」
高橋:「あざっス!」
高野:「料理の腕はいいのよね、マサは」
愛原:「家事スキルは高い。ダテに少年院と少年刑務所に入っていなかったわけだ」
高橋:「そうっスね」
愛原:「昔、東京駅の警備員をしていた時、日本橋口に護送車がたまに来てな。そこから移送される受刑者達が、手錠と縄で繋がれて東京駅に入って来てたよ」
高橋:「あー、たまにあるんスよね」
愛原:「警察の留置場から移送される容疑者を乗せた護送車とかも来てさ……」
高橋:「あれは別の事件で再タイーホされたもんで、その為に事件現場の所轄(警察署)へ世話になりに行く所だったんでしょうね」
愛原:「詳しいな?」
高橋:「俺の周りにも、そういうヤツがいたもんでェ……」
愛原:「ま、いいや。後で聞くよ」
高野:「それで先生、病院の方はどうでした?」
愛原:「普通に静かだったよ。だけど、例のお嬢さんはダメだ。肩の傷が治って退院したら、必ずリサを倒しに行くと宣言している」
高橋:「なかなか根性のある女みたいっスね。真珠と同じタイプなんスかね?」
愛原:「霧崎さんはシリアルキラー的な要素を持っているが、彼女は違うよ。……いや、キル対象が人間かBOWかの違いだけで、基本は同じなのかも……」
高橋:「一度会ってみたいっスね」
高野:「霧崎さんに見られたら、『浮気はコロス』と言われるよ?」
高橋:「浮気じゃねーし」
高野:「霧崎さんの主観でそこは動くんだからね?先生に迷惑掛けるんじゃないよ」
高橋:「おっと。さすがにそれはダメだな」
高野:「それで先生、どうされます?今月中には退院なんだそうですね?」
愛原:「一応、善場主任が介入してくれるらしい。日本刀を持ってるんだ。ややもすれば、銃刀法違反でしょっ引くんじゃないの?」
高野:「でも一応、許可は取ってるんですよね?」
愛原:「許可証程度の紙切れ1枚、国家権力でどうにでもなるってことだろ?司法、行政はその辺得意だからな。法律の条文も都合のいいように解釈したりして、白にでも黒にでもどうにでもできるってことさ。俺達のこれと一緒だよ」
私は机の引き出しの中からハンドガンを取り出した。
本来ならこれ、違法である。
だけど善場主任達が国家権力でもって、黒を白にしてくれた。
もちろん、ゾンビ無双以外で発砲しようものなら、さすがの主任達でも庇い切れないそうだが。
高橋:「というと、あの姉ちゃんはどう動くつもりっスかね?」
愛原:「『リサを殺す宣言を撤回しなければ、銃刀法違反でしょっ引く』と脅迫……もとい、警告するんだろうな」
高野:「せっかく許可を取ってるのに、何だか可愛そうですね」
愛原:「確か日本刀の所持許可だって、あくまでも所持しているだけならOKというものであって、持ち歩いて良いかどうかはグレーのはずなんだ。包丁と同じだよな。例えば包丁をホームセンターとかで買って、家に持って帰るまでの間、警察の職務質問に遭って所持品検査で見つかったら?」
高野:「その状態だと梱包されてますし、持ち歩いている理由も明確なので、違反の対象外になるはずですが?」
愛原:「善場主任はバックにある組織の権力を使って、その対象外を対象内にしてやるんだろうな、きっと」
高橋:「あの姉ちゃん、怖いんスね?」
愛原:「今頃気づいたのかよ。栗原さんの話だと、日本刀は、使うまで麻袋に入れて隠して持っているらしい。これだと剣道部員なら、竹刀なのか木刀なのか区別が付かない」
高橋:「俺が昔、車に木刀積んでたら、サツがやたらうるさかったっスけど?」
愛原:「そりゃ族車に木刀があったら、その木刀は何に使うのか想像するだけで、警察は逮捕しようとするだろうよ。だけど、剣道部員が持ち歩く分にはいいんだよ」
高橋:「どうしてですか?」
愛原:「じゃお前、木刀はどうして積んでたんだよ?」
高橋:「ちょっと車飾っただけで、すぐ『チョーシこいてる奴』『イキがってる奴』と勝手に認定しやがって、煽り運転してくるヤツとかいるんスよ。そいつらに対する警告の為っス」
高野:「はい、アウトー」
愛原:「だけど剣道部員が持ち歩く理由は違う。もちろん、稽古の為だな。だからOKなんだよ」
高橋:「あっ、ずりィ!差別ニダ!」
愛原:「剣道は警察官の必須武道だからな。実際、学生時代からずっと剣道をやっていて、段まで持ってて、それで警察官になったという人も大勢いる。そんな人達から見れば、剣道部員が木刀持ち歩く理由は主観的に分かるから、それだけで御咎め無しなんだよ。でも、暴走族が木刀を持つのはアウト」
高橋:「差別ニダ!謝罪と賠償を求めるニダ!」
愛原:「話が脱線したが、さすがの栗原さんも、国家の関係者が出て来たら考え直してくれるだろう。早速今日、俺と入れ違う形で話をしてくれるそうだ」
高野:「それで済んでくれるといいですね」
愛原:「全くだ」
うちのリサは善場主任の所属する組織が目を付けているから、たかが一個人に手出しをされたくないのだろう。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
愛原:「ただいまァ」
高野:「お帰りなさい、先生」
高橋:「お帰りなさいっス、先生!昼飯まだっスよね!?俺、今ホットドッグ作ってるところなんで」
愛原:「ああ、すまないね。リサは?」
高野:「家に帰りました。善場主任との面談も終了して、主任も帰られてます」
愛原:「そうか。特に問題無かったのかな?」
高野:「そのようですね。リサちゃん、『人間の姿が正しいのに、その姿が「第0形態」と呼ぶのはおかしい』って言い出しまして……」
愛原:「そうなんだ。よほど人間に戻りたいんだな」
元々は人間の姿が第1形態だったのだが、その後のウィルス活性化によって、今の第1形態(鬼娘のような姿)が自然体でいられる姿になり、人間の姿は意図的にそうしないとなれないようになってしまった為、人間の姿を『第0形態』と呼ぶようになったのではなかったか。
鬼娘の姿を『第1形態』、人間の姿を『第2形態』と呼んでしまうと、元の姿が『第1形態』よりも恐ろしい『第2形態』という変な話になってしまうからだと善場主任から聞いた気がする。
高野:「人間の姿を『第1形態』、鬼の姿を『第2形態』と呼んでもいいと思うんですよ。何だか変ですね」
愛原:「そういうものだろう?」
善場主任のことだから、ちゃんとリサには説明しただろう。
何て説明したのか、後でリサに聞いてみよう。
高橋:「お待たせしました、先生」
愛原:「おー、サンクス」
給湯室で作ったらしい。
わざわざキャベツの千切りとウィンナーを炒め、背割りコッペパンに挟んでオーブンレンジで焼くという、まるで喫茶店のホットドッグのような作り方をする。
ついでにコーヒーも持って来てくれた。
愛原:「うん、美味い美味い」
高橋:「あざっス!」
高野:「料理の腕はいいのよね、マサは」
愛原:「家事スキルは高い。ダテに少年院と少年刑務所に入っていなかったわけだ」
高橋:「そうっスね」
愛原:「昔、東京駅の警備員をしていた時、日本橋口に護送車がたまに来てな。そこから移送される受刑者達が、手錠と縄で繋がれて東京駅に入って来てたよ」
高橋:「あー、たまにあるんスよね」
愛原:「警察の留置場から移送される容疑者を乗せた護送車とかも来てさ……」
高橋:「あれは別の事件で再タイーホされたもんで、その為に事件現場の所轄(警察署)へ世話になりに行く所だったんでしょうね」
愛原:「詳しいな?」
高橋:「俺の周りにも、そういうヤツがいたもんでェ……」
愛原:「ま、いいや。後で聞くよ」
高野:「それで先生、病院の方はどうでした?」
愛原:「普通に静かだったよ。だけど、例のお嬢さんはダメだ。肩の傷が治って退院したら、必ずリサを倒しに行くと宣言している」
高橋:「なかなか根性のある女みたいっスね。真珠と同じタイプなんスかね?」
愛原:「霧崎さんはシリアルキラー的な要素を持っているが、彼女は違うよ。……いや、キル対象が人間かBOWかの違いだけで、基本は同じなのかも……」
高橋:「一度会ってみたいっスね」
高野:「霧崎さんに見られたら、『浮気はコロス』と言われるよ?」
高橋:「浮気じゃねーし」
高野:「霧崎さんの主観でそこは動くんだからね?先生に迷惑掛けるんじゃないよ」
高橋:「おっと。さすがにそれはダメだな」
高野:「それで先生、どうされます?今月中には退院なんだそうですね?」
愛原:「一応、善場主任が介入してくれるらしい。日本刀を持ってるんだ。ややもすれば、銃刀法違反でしょっ引くんじゃないの?」
高野:「でも一応、許可は取ってるんですよね?」
愛原:「許可証程度の紙切れ1枚、国家権力でどうにでもなるってことだろ?司法、行政はその辺得意だからな。法律の条文も都合のいいように解釈したりして、白にでも黒にでもどうにでもできるってことさ。俺達のこれと一緒だよ」
私は机の引き出しの中からハンドガンを取り出した。
本来ならこれ、違法である。
だけど善場主任達が国家権力でもって、黒を白にしてくれた。
もちろん、ゾンビ無双以外で発砲しようものなら、さすがの主任達でも庇い切れないそうだが。
高橋:「というと、あの姉ちゃんはどう動くつもりっスかね?」
愛原:「『リサを殺す宣言を撤回しなければ、銃刀法違反でしょっ引く』と脅迫……もとい、警告するんだろうな」
高野:「せっかく許可を取ってるのに、何だか可愛そうですね」
愛原:「確か日本刀の所持許可だって、あくまでも所持しているだけならOKというものであって、持ち歩いて良いかどうかはグレーのはずなんだ。包丁と同じだよな。例えば包丁をホームセンターとかで買って、家に持って帰るまでの間、警察の職務質問に遭って所持品検査で見つかったら?」
高野:「その状態だと梱包されてますし、持ち歩いている理由も明確なので、違反の対象外になるはずですが?」
愛原:「善場主任はバックにある組織の権力を使って、その対象外を対象内にしてやるんだろうな、きっと」
高橋:「あの姉ちゃん、怖いんスね?」
愛原:「今頃気づいたのかよ。栗原さんの話だと、日本刀は、使うまで麻袋に入れて隠して持っているらしい。これだと剣道部員なら、竹刀なのか木刀なのか区別が付かない」
高橋:「俺が昔、車に木刀積んでたら、サツがやたらうるさかったっスけど?」
愛原:「そりゃ族車に木刀があったら、その木刀は何に使うのか想像するだけで、警察は逮捕しようとするだろうよ。だけど、剣道部員が持ち歩く分にはいいんだよ」
高橋:「どうしてですか?」
愛原:「じゃお前、木刀はどうして積んでたんだよ?」
高橋:「ちょっと車飾っただけで、すぐ『チョーシこいてる奴』『イキがってる奴』と勝手に認定しやがって、煽り運転してくるヤツとかいるんスよ。そいつらに対する警告の為っス」
高野:「はい、アウトー」
愛原:「だけど剣道部員が持ち歩く理由は違う。もちろん、稽古の為だな。だからOKなんだよ」
高橋:「あっ、ずりィ!差別ニダ!」
愛原:「剣道は警察官の必須武道だからな。実際、学生時代からずっと剣道をやっていて、段まで持ってて、それで警察官になったという人も大勢いる。そんな人達から見れば、剣道部員が木刀持ち歩く理由は主観的に分かるから、それだけで御咎め無しなんだよ。でも、暴走族が木刀を持つのはアウト」
高橋:「差別ニダ!謝罪と賠償を求めるニダ!」
愛原:「話が脱線したが、さすがの栗原さんも、国家の関係者が出て来たら考え直してくれるだろう。早速今日、俺と入れ違う形で話をしてくれるそうだ」
高野:「それで済んでくれるといいですね」
愛原:「全くだ」
うちのリサは善場主任の所属する組織が目を付けているから、たかが一個人に手出しをされたくないのだろう。