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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「雨の木曜日」

2020-10-27 20:04:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月15日13:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「ただいまァ」
 高野:「お帰りなさい、先生」
 高橋:「お帰りなさいっス、先生!昼飯まだっスよね!?俺、今ホットドッグ作ってるところなんで」
 愛原:「ああ、すまないね。リサは?」
 高野:「家に帰りました。善場主任との面談も終了して、主任も帰られてます」
 愛原:「そうか。特に問題無かったのかな?」
 高野:「そのようですね。リサちゃん、『人間の姿が正しいのに、その姿が「第0形態」と呼ぶのはおかしい』って言い出しまして……」
 愛原:「そうなんだ。よほど人間に戻りたいんだな」

 元々は人間の姿が第1形態だったのだが、その後のウィルス活性化によって、今の第1形態(鬼娘のような姿)が自然体でいられる姿になり、人間の姿は意図的にそうしないとなれないようになってしまった為、人間の姿を『第0形態』と呼ぶようになったのではなかったか。
 鬼娘の姿を『第1形態』、人間の姿を『第2形態』と呼んでしまうと、元の姿が『第1形態』よりも恐ろしい『第2形態』という変な話になってしまうからだと善場主任から聞いた気がする。

 高野:「人間の姿を『第1形態』、鬼の姿を『第2形態』と呼んでもいいと思うんですよ。何だか変ですね」
 愛原:「そういうものだろう?」

 善場主任のことだから、ちゃんとリサには説明しただろう。
 何て説明したのか、後でリサに聞いてみよう。

 高橋:「お待たせしました、先生」
 愛原:「おー、サンクス」

 給湯室で作ったらしい。
 わざわざキャベツの千切りとウィンナーを炒め、背割りコッペパンに挟んでオーブンレンジで焼くという、まるで喫茶店のホットドッグのような作り方をする。
 ついでにコーヒーも持って来てくれた。

 愛原:「うん、美味い美味い」
 高橋:「あざっス!」
 高野:「料理の腕はいいのよね、マサは」
 愛原:「家事スキルは高い。ダテに少年院と少年刑務所に入っていなかったわけだ」
 高橋:「そうっスね」
 愛原:「昔、東京駅の警備員をしていた時、日本橋口に護送車がたまに来てな。そこから移送される受刑者達が、手錠と縄で繋がれて東京駅に入って来てたよ」
 高橋:「あー、たまにあるんスよね」
 愛原:「警察の留置場から移送される容疑者を乗せた護送車とかも来てさ……」
 高橋:「あれは別の事件で再タイーホされたもんで、その為に事件現場の所轄(警察署)へ世話になりに行く所だったんでしょうね」
 愛原:「詳しいな?」
 高橋:「俺の周りにも、そういうヤツがいたもんでェ……」
 愛原:「ま、いいや。後で聞くよ」
 高野:「それで先生、病院の方はどうでした?」
 愛原:「普通に静かだったよ。だけど、例のお嬢さんはダメだ。肩の傷が治って退院したら、必ずリサを倒しに行くと宣言している」
 高橋:「なかなか根性のある女みたいっスね。真珠と同じタイプなんスかね?」
 愛原:「霧崎さんはシリアルキラー的な要素を持っているが、彼女は違うよ。……いや、キル対象が人間かBOWかの違いだけで、基本は同じなのかも……」
 高橋:「一度会ってみたいっスね」
 高野:「霧崎さんに見られたら、『浮気はコロス』と言われるよ?」
 高橋:「浮気じゃねーし」
 高野:「霧崎さんの主観でそこは動くんだからね?先生に迷惑掛けるんじゃないよ」
 高橋:「おっと。さすがにそれはダメだな」
 高野:「それで先生、どうされます?今月中には退院なんだそうですね?」
 愛原:「一応、善場主任が介入してくれるらしい。日本刀を持ってるんだ。ややもすれば、銃刀法違反でしょっ引くんじゃないの?」
 高野:「でも一応、許可は取ってるんですよね?」
 愛原:「許可証程度の紙切れ1枚、国家権力でどうにでもなるってことだろ?司法、行政はその辺得意だからな。法律の条文も都合のいいように解釈したりして、白にでも黒にでもどうにでもできるってことさ。俺達のこれと一緒だよ」

 私は机の引き出しの中からハンドガンを取り出した。
 本来ならこれ、違法である。
 だけど善場主任達が国家権力でもって、黒を白にしてくれた。
 もちろん、ゾンビ無双以外で発砲しようものなら、さすがの主任達でも庇い切れないそうだが。

 高橋:「というと、あの姉ちゃんはどう動くつもりっスかね?」
 愛原:「『リサを殺す宣言を撤回しなければ、銃刀法違反でしょっ引く』と脅迫……もとい、警告するんだろうな」
 高野:「せっかく許可を取ってるのに、何だか可愛そうですね」
 愛原:「確か日本刀の所持許可だって、あくまでも所持しているだけならOKというものであって、持ち歩いて良いかどうかはグレーのはずなんだ。包丁と同じだよな。例えば包丁をホームセンターとかで買って、家に持って帰るまでの間、警察の職務質問に遭って所持品検査で見つかったら?」
 高野:「その状態だと梱包されてますし、持ち歩いている理由も明確なので、違反の対象外になるはずですが?」
 愛原:「善場主任はバックにある組織の権力を使って、その対象外を対象内にしてやるんだろうな、きっと」
 高橋:「あの姉ちゃん、怖いんスね?」
 愛原:「今頃気づいたのかよ。栗原さんの話だと、日本刀は、使うまで麻袋に入れて隠して持っているらしい。これだと剣道部員なら、竹刀なのか木刀なのか区別が付かない」
 高橋:「俺が昔、車に木刀積んでたら、サツがやたらうるさかったっスけど?」
 愛原:「そりゃ族車に木刀があったら、その木刀は何に使うのか想像するだけで、警察は逮捕しようとするだろうよ。だけど、剣道部員が持ち歩く分にはいいんだよ」
 高橋:「どうしてですか?」
 愛原:「じゃお前、木刀はどうして積んでたんだよ?」
 高橋:「ちょっと車飾っただけで、すぐ『チョーシこいてる奴』『イキがってる奴』と勝手に認定しやがって、煽り運転してくるヤツとかいるんスよ。そいつらに対する警告の為っス」
 高野:「はい、アウトー」
 愛原:「だけど剣道部員が持ち歩く理由は違う。もちろん、稽古の為だな。だからOKなんだよ」
 高橋:「あっ、ずりィ!差別ニダ!」
 愛原:「剣道は警察官の必須武道だからな。実際、学生時代からずっと剣道をやっていて、段まで持ってて、それで警察官になったという人も大勢いる。そんな人達から見れば、剣道部員が木刀持ち歩く理由は主観的に分かるから、それだけで御咎め無しなんだよ。でも、暴走族が木刀を持つのはアウト」
 高橋:「差別ニダ!謝罪と賠償を求めるニダ!」
 愛原:「話が脱線したが、さすがの栗原さんも、国家の関係者が出て来たら考え直してくれるだろう。早速今日、俺と入れ違う形で話をしてくれるそうだ」
 高野:「それで済んでくれるといいですね」
 愛原:「全くだ」

 うちのリサは善場主任の所属する組織が目を付けているから、たかが一個人に手出しをされたくないのだろう。
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“愛原リサの日常” 「リサと善場の面談」

2020-10-27 15:33:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月15日11:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 学校から帰ったリサはマンションではなく、事務所の方へ行った。
 雨が降っていて傘を差して来たのだが、リサの傘はどこにでもあるビニール傘。
 管理教育時代は傘の色、柄にまで指定があったらしいが、今は撤廃されている。

 高野:「お帰り。どうだった?」
 リサ:「レポート提出して来ただけ」
 高橋:「何だ。退学処分食らったかと思ったのによ~」

 高橋がニヤニヤ笑って言った。

 高野:「中学校に退学なんて無いよ」
 高橋:「学校停学は当たり前、高校クビになって初めてハクが付くもんよ」
 高野:「だけどそんなの暴力団事務所じゃ関係無いからね」

 高橋は偉そうなことを言っているが、実は高卒である。
 その為、高校中退者の多い少年院では羨望の目を向けられ、少年刑務所ではインテリ扱いされたとのことである。

 高野:「むしろ今は大卒者が喜ばれるってよ」
 高橋:「何だそれ……」
 高野:「お金の計算や、いかに警察に捕まらないようにするか、頭の回転のいい人材を求めてるのよ」
 リサ:「校長先生の言う事聞かないと、退学だって言われた」
 高野:「校長先生の言う事?」
 高橋:「校長と面談か。こりゃ、いよいよ退学の予感がするぞ」
 高野:「マサ!」
 リサ:「それより、先生はまだ帰ってない?」
 高野:「まだね。午後になったら帰って来るんじゃない」
 リサ:「そう……」

 愛原は栗原蓮華の見舞いに行っている。
 その病院、警察署のバイオハザード事件における警戒区域の中に入っていたらしいので、様子を見に行ったというわけだ。

 高橋:「おっ、来客だぞ?」

 エレベーターが5階に到着する音が聞こえた。
 高橋はサングラスを掛け、タバコを一本片手に持った。

 高橋:「『どなた?』って感じで出ればいいか?あ?」
 高野:「だから、ヤクザの事務所で1人留守番している若い組員みたいな感じになるなっての」

 そして、事務所の入口のドアが開く。

 高橋:「お客さん、先生ならお留守ですぜ?」

 とまあ、やっぱりヤクザ事務所で1人留守番している若い者の役をやりたがる高橋だった。
 が!

 黒服A:「何が?」

 高橋より背が高く、ガタイの良い黒スーツの男が高橋の威圧を全面的に受け止めた。

 高橋:「ピエッ?!」
 黒服B:「愛原所長への用件ではない」
 善場:「こんにちは」

 やってきたのは主任職にある善場であり、黒服の男2人は善場の部下だった。
 リサがこの組織に就職する頃には、課長くらいにはなっているのだろうか。
 役所関係だと、主任の上に係長とか課長代理とか、そういう役職があるので(古い組織だと、主事とか参事とかある)。

 高橋:「な、何だ。善場の姉ちゃんか。相変わらず、強面の奴ら連れてんなぁ……」
 善場:「場合によっては命懸けの仕事もありますのでね。今日はリサの面談に来ました」
 高野:「どうぞ。先生から聞いています。応接室を空けておりますので」

 高野が善場達を応接室に招き入れる。
 だが、黒服Aは応接室に入らず、応接室の外で立哨を始めた。
 黒服Bはスマホ片手に事務所を出て行く。
 恐らくAが護衛役、Bが連絡役であろう。
 この他にもCが運転役として、車の中で待機していると思われる。

 善場:「制服のままということは、学校から帰ってきたばかり?」
 リサ:「そんなところ」

 リサと善場は応接室で2人きりになり、テーブルを挟んでソファに向かい合わせに座った。
 すぐに高野が紅茶を持ってくる。

 高野:「リサちゃんにはジュースね」
 リサ:「ありがとう」
 善場:「お構いなく。それと、ついでに高野事務係にお尋ねしたいのですが、愛原所長は今、墨東病院に行っていますね?」
 高野:「それが、どうかしましたか?」
 善場:「愛原所長の見舞い相手は栗原蓮華、16歳。○×県霧生市出身で今は都内在住、現在、東京中央学園上野高校の1年生ですね?」
 高野:「そう言ってましたね」
 善場:「その栗原蓮華さん、リサのことは何て言っていましたか?」
 高野:「先生の話では、殺したいほど難い相手とのことです」
 善場:「そうですか」
 高野:「退院したら、リサちゃんを殺しに行くと宣言しているそうです」
 善場:「分かりました」
 高野:「もういいですか?」
 善場:「ええ」
 高野:「失礼します」

 高野は応接室を出た。

 リサ:「私、嫌われてるね」
 善場:「しょうがないわ。化け物が好きだって人間、そうそういないもの。ましてやあなたは、ついに人間を襲ってしまった。嫌われるのは当然だわ」
 リサ:「私、殺される?」
 善場:「私達の組織としては、そこまではしないから安心して。襲ったといっても、学校ではイジメに認定される程度のもので、実際あなたは相手を殺したわけでも、ケガさせたわけでもないからね。もしそうなら、さすがにちょっと私と一緒に来てもらうことになるけど」
 リサ:「先生がお見舞いに行ってる人、私に日本刀を振るって来た人だね」
 善場:「話の内容の通りだとすると、例え警察に逮捕されてでも、あなたに刃を振るおうとするでしょうね」
 リサ:「どうする?私、襲われても抵抗しちゃいけない?」
 善場:「そうねぇ……。そこは考えておくわ。私があなたに言っておきたいことは、今後は一切捕食は禁止。分かった?」
 リサ:「はい。因みにサイトーとコジマ、私の人間の友達なんだけど、自ら進んで私に『捕食』されたいみたいなんだけど、これは?」
 善場:「それもダメ。……いや」

 善場は少し考えた。

 善場:「あなたには人間に戻ってもらいたいの。そうすれば心置きなく私達の組織で働けるし、大好きな愛原所長とそれからもずっと一緒に暮らしていけるよ。その為には、常日頃から人間らしく生活することが必要だと思うのね。だけど、第一形態に変化したり、捕食行為をしたり、人間とかけ離れた行動をしたら、それだけ人間に戻りにくくなるかもしれない。だから、本当は私の言う事を絶対に守ってもらいたいところなんだけど……。もしガマンできないってなったら、その時はいいわ。あなたに捕食されたい人間に限定して、『老廃物のみ捕食』だけ黙認してあげる。ガマンできなくなって暴走されるよりはマシだと思うからね」
 リサ:「おー!」
 善場:「だから、新規に人間を『捕食』するのは禁止ってことね。あくまでも今言ったお友達に限定するなら……目は瞑っててもいいと思う」
 リサ:「分かった!」
 善場:「あと、学校の方はどう?」
 リサ:「えーと……」

 リサは今日、学校であったことを話した。
 校長から事件のことについて口止めされたことも。

 善場:「警察の捜査が手詰まりになって、BOWリサ・トレヴァーに殺されたことも分かってきた。学園にそんな化け物が出入りしたなんて、評判が更に落ちるから、隠しておきたいのね」
 リサ:「私もリサ・トレヴァーだけど……」
 善場:「あなたは人間として、正体を隠しているからいいの。正体が露見しないようにね」
 リサ:「はい」

 そこでリサは善場に1つの疑問を投げた。

 リサ:「あの、1つ質問いい?」
 善場:「なに?」
 リサ:「私のこの姿、第0形態って言うみたいだけど、どうして『第0形態』って言うの?」

 リサがこの質問を善場にしたのは、『第0形態』だの『第1形態』だのという呼称は、確か善場が先に使ってきたのを思い出したからだ。

 善場:「それはね……」
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