日々の暮らしに輝きを!

since 2011
俳人杉田久女(考)、旅行記&つれづれ記、お出かけ記など。

高橋 治 著 『風の盆恋歌』

2011年09月11日 | 読書

きっかけは憶えていませんが、17、8年前に高橋 治さんの小説『風の盆恋歌』を読みました。それ以来この小説の舞台になっている越中八尾に行ってみたいと、ずっと思っていましたが、今回行ける事になったので、本箱からこの本を取り出して、再読しました。

Photo <表紙>

この小説が単行本として出版されたのは昭和60年だそうですが、小説の発表により「風の盆」が全国に知られる様になったのだそうです。私の手元にあるのは新潮文庫の平成5年度版です。

若い頃出会った二人は、その頃の思いを心の内に秘めながら長い年月を別々の環境で生きてきました。二十数年の歳月を経て、それぞれ家庭のある身でパリで再会した二人は急速に近づき、その二人の心模様のもどかしさを、「風の盆」やひなびた八尾の風景描写を背景に、巧みな筆力で描いています。

許せない部分があるにもかかわらず、この小説にはある種のかぐわしさ、清冽さがあり、いつの間にか引き込まれてしまいました。二人の行く末を象徴する花、酔芙蓉や往復書簡、ヒロイン「えり子」が詠う短歌などは、物語にある種の品格を与えている様に思われ、これは恋愛小説の傑作なのではとも思います。

そして静けさ漂う「おわら風の盆」の洗練された踊りの美しさが何度も語られ、作者の「風の盆」に寄せる思いの深さが伝わってきます。

小説の中で “大野 林火” という俳人の句として紹介されている

   「日暮れ待つ 青き山河よ 風の盆」

は、日暮れに近い、「風の盆」たけなわになる前の、期待に満ちた八尾のたたずまいを彷彿とさせる素敵な句で、数ある「風の盆」を詠んだ句の中では私が一番好きな句です。

作者の高橋 治さんは作家であり脚本家、映画監督です。この小説は歌にも歌われ、テレビや舞台で演じられもしたそうですが、映画化だけは未だの様ですね。素人考えでは、すぐにでも映画化出来そうな小説だと思うのですが、そうならないのを不思議に思います。

にほんブログ村 シニア日記ブログ 60歳代へ
にほんブログ村←ランキングに参加中! クリックよろしく~(^-^)

.

.

.