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俳人杉田久女(考)、旅行記&つれづれ記、お出かけ記など。

田辺聖子 姥シリーズ

2015年03月26日 | 読書

田辺聖子さんの作品に姥シリーズというのがあります。『姥ざかり』『姥ときめき』『姥うかれ』『姥勝手』がそれですが、主人公の歌子さんの痛快で颯爽とした人生観が心地よく楽しい小説です。

田辺さんが最初の『姥ざかり』を発表したのは30年以上前の昭和56年だそうで
、田辺さんによると、それが読者に喜ばれ力を得て『姥ときめき』『姥うかれ』と続けて書き、平成8年の『姥勝手』が最終巻とのことです。

私が最初に読んだのは40代半ばでしたが、『姥ざかり』を読んで、
なんて素敵なおばあちゃんなんだろうと瞬く間に歌子さんを好きになり、たちまち一冊読んでしまったのをよく覚えています。

『姥ざかり』では3人いる子供とは同居せず、東神戸の海の見える高級マンション8Fに独り暮らす歌子さんは76才。頭の回転が速くお洒落でかっこいい。そして毎日が楽しくて仕方がない。


枯淡の境地などまっぴらゴメン。周りに煙たがられようと言いたい放題、やりたい放題。そして「清く正しく美しく」の精神で、きれいなもの、明るいものにあこがれ、誰はばかることなく我が道をゆく歌子さん。

2作目の『姥ときめき』になると、歌子さんは77才になっている。でもおばあちゃんという雰囲気ではない。シルバーレディがぴったり。


戦後、船場の御寮さんとして頑張り子供たちを育て上げ、自身の資産もきっちり持ち、健康にも問題なし。今は優雅な一人暮しの歌子さんは、今日も色々の人と会い、珍事件も起きる。彼女の好奇心と周りの人の狼狽やお節介が面白く、いつまでもときめく心を忘れない歌子さんの大活躍が楽しい。

『姥うかれ』になると、歌子さんは78才になっている。彼女は相変わらず絶好調、とにかく忙しくカレンダーはいつも予定ありの赤丸付き。


が、しかし「姥蛍」という章では友人の春川夫人がポックリ亡くなり、つい最近まで元気に笑っていた人がもうこの世にいないという不思議さには、いつまでたっても馴れることはないという言葉が出てきて、『姥ざかり』『姥ときめき』とはちょっと趣が異なってきた様にも...。

4作目の『姥勝手』の表紙は、それまでのメルヘンチックな歌子さんから、パンツスーツを颯爽と着こなす熟年レディになっているのも楽しい。この変化は作品が書かれた時代の流行をそれとなく表しているのかも。


『姥勝手』では歌子さんは80才になっている。好きなローズ色のシルクデシンの洋服の着心地のめでたさ、やがて花咲く桜の春を待つ心はずみ、今月の宝塚の新しい出し物、など生き生き元気な暮らしぶりは変わらない歌子さん。

が、一緒に船場で苦労した前沢番頭、女衆のお政ドン、古い友人などが、櫛の歯が抜けるように旅立ち、
宝塚好きの叔母さんも大往生したらしい。

無情の嵐は、生き生き元気溌剌な歌子さんにも吹き付け、この巻はそれまでの巻にはない味わいになっている。

スタート時の『姥ざかり』では76才だった歌子さんも最終巻の『姥勝手』では80才。まだまだ元気で痛快な生き方は変わらない。

40代の半ばに最初にこの姥シリーズを読んだ時は、なんて魅力的なお年寄りかしらと熱烈な歌子ファンでした。それから何回も読みましたが、だんだん歌子さんの年令に自分が近づいて来るにつれて、自分の生き方を考えるバイブルの様な本になって来ました。

田辺さんの本は押しつけがましいところがなく、普通の人の普通の日常を描きながら、そこに人生の真実が含まれているというか、生き方を学んでしまう、そんな作品が多いですね。

ここまでくれば、ぜひ田辺さんに姥シリーズの第5巻を書いていただいて、80代の歌子さんを覗いてみたいものです。
 

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