日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

「福島第一原発汚染水処理が5時間で停止」 シャープレス遠心分離機の導入は?

2011-06-21 16:36:14 | 昔話
本稼働を始めた福島第一原発の高濃度放射能汚染水の浄化装置が5時間で停止してしまった。汚染水が入る最初の「吸着塔」の表面線量が毎時4ミリシーベルトになると吸着塔を交換する計画であったところ、稼働から5時間足らずで4.69ミリシーベルトに達したと言うのである。東電は当初高濃度汚染水に含まれる油や汚泥が予想より多く、放射性物質が早く溜まったと推測したが、20日になって、放射能測定計器が、吸着された放射性物質の線量のほか、装置を流れる汚染水の線量をも含む形で誤って検知していた可能性が高いと発表した。もしこれが本当なら、本体よりもかなり重い風袋を引き忘れたようなものでなにをか言わんやである。問題がこれで終わればよいが、なかなか一筋縄では行きそうもない。それよりも私が引っかかったのは、当初原因として疑われた高濃度汚染水に含まれる油や汚泥が予想より多く、放射性物質が早く溜まったの部分で、高濃度汚染水の外観・性状を想像させるからである。となると、そのような汚染水をどのような前処理で浄化装置で送り込んでいるのだろうと疑問が湧いてくる。

高濃度放射能汚染水はおそらく油まじりの泥水であろう。プールに貯留されている間に汚泥はかなり沈殿し、油は浮上すると思われる。しかしどの部分から汚染水を取り出しているのかは分からない。汚泥の大部分は有機汚泥ではなく無機汚泥と思われるが、もしこれが浮遊物質として定義されるものなら直径2mm以下の粒子状物質ということになり、汚染水にどの程度含まれているのかその濃度にもよるだろうが、透明な水のように浄化装置をスイスイ通り抜けて行くとは想像しがたい。浄化装置が詰まるのを防ぐためにもこの汚泥を出来る限り取り除いておくにこしたことはないが、どのような前処理がなされているのか不明であるが、浄化装置が停止した際にまず疑われたのが高濃度汚染水に含まれる油や汚泥が予想より多く、放射性物質が早く溜まっただとすると、有効な前処理が行われているとは考えにくい。凝集沈殿装置なども含めておそらく幾つもの手段があることだろうが、ここで私が思い浮かべたのが遠心分離による浮遊物質の除去である。大学院生だった頃の経験を思い出したからである。

遠心分離機は遠心力を利用しては微細粒子も含めて固形物を液体から分離する装置である。たとえばジュースミキサーでりんごジュースを作り、それを数本のボトルにバランス良く分注し遠心機にかける。適当な回転数で一定時間回すと固形物がボトルの底に溜まり、液体部分から綺麗に分離出来る。酵素の精製などには欠かせない手段であるが、ジュース(あくまでも例として)が数リッター程度なら遠心分離を繰り返せばよいが、これが何十、何百リッターとなるとことである。ところが遠心分離機を連続運転したままジュースを連続的に遠心機に注入すると固形物が分離機内に残り、液体のみが外部に出てくるような装置がある。シャープレス型連続遠心分離機もしくは簡単にシャープレス遠心分離機と呼ばれるものである。当時私の聞いた話ではオイルタンカーが原油を運んでくる際に、その原油からタンカーに設置されたシャープレス遠心分離機で重油を分離し、それを燃料にしながら船を走らせると言うことであった。いずれにせよ分離機内に残る固形物はジュースを流せば流すだけ増えてくるので、そのうちに分離機を止めて固形物を取り出さないといけないが、一度にかなり大量のジュースを処理することが出来る。私が所属していた研究室は微生物学講座で微生物の培養はお手の物であり、大量に培養しては菌体を集め実験に必要な酵素などを精製していた。大量の培養液から集菌するためにこのシャープレス遠心分離機の導入が上の方で検討されたのである。

ある日恩師のOK先生から、四国の観音寺にある阪大の微生物学研究所(現在は一般財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所としてワクチンなどを製造しているようである)に出かけるようにとお達しがあった。そこではシャープレス遠心分離機が実際に使われているのでよく見せて貰い、研究室でも使い物になるかどうかよく調べて報告せよとのことであった。おそらくメーカーの人が同行したのではないかと思うが、四国へは連絡船で渡る時代で車窓を楽しんだ覚えはある。実際に動いている様子を見せて貰い、性能をはじめ扱いやすさなどいろいろと問題点を話し合い、導入可の報告を済ませた。OK先生は新しい実験機器の導入にはきわめて前向きの方であったが、それだけに実際に役立ちうるかをきわめて慎重に判断された。当時としては珍しいことに理学部の一研究室に1トン(1000リッター)の微生物培養タンクが設置され、集菌にこのシャープレス遠心分離機が活躍することになった。

かりに油、汚泥混ざりの高濃度放射能汚染水からこれらをシャープレス遠心分離機で可能な限り取り除き、透明度の増した汚染水として浄化装置に注入すれば、浄化装置の負担を大きく軽減出来ることは間違いなかろう。ただ問題は遠心分離機に溜まった固形物が恐らく高い放射能を帯びていることゆえ、人手で簡単に固形物を除去出来るとは考えにくいことである。しかし人智を傾ければなんとかなるもので、この際、微粒子を含む夾雑物まじりの高濃度放射能汚染水を全自動で処理して夾雑物を取り除く装置を開発出来ないものかと思う。昔話まじりにふとこんなことを考えた。


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