日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

悪魔の出た地下酒場

2004-10-08 15:18:57 | 海外旅行・海外生活
旅に出て楽しみの一つは食事である。その土地の美味しい料理を味わう期待感に胸はふくれるものの、それを満たすのは必ずしも容易ではない。始めて訪れた不案内の土地で、どのお店のどの料理が美味しいものやら分かるはずがない。ガイドブックのレストラン案内が参考にはなるけれど、これまでの経験から当たりはずれが必ずあるし、それよりなにより、地図を片手にそのお店を探し出すのが一苦労ということが多い。

今回のドイツ・チェコ旅行でぜひ訪れなくちゃ、と探し探し求めたレストランはただ一つ、ライプチッヒのアワーバッハス・ケラーである。ゲーテが学生時代によく出入りし、森鴎外も留学中に頻繁に通ったといわれるレストランである。ライプチッヒの目抜きのアーケード商店街、その入り口にある地下への階段を下りたところにある。「地下に」とは思いもしなかったので最初は見過ごしてしまい、同じ場所をぐるぐる回ったあげく人に尋ねて、なーんだ、と分かった次第である。ケラーとは地下酒場のこと、とようよう思い当たった。

地下階段の入り口に銅像が建っていて、台座に銘板が埋められている。それによると「ファウスト」にこの酒場が出てきて、そこにメフィストが登場するのであろう。銅像はメフィストとファウストであろうか、怖さを感じさせない親近感のある悪魔である。だからこそ本当は怖いのだろうか・・・・。手前に姿を現しているのは現代の「赤衣の小悪魔」である。この銅像が目に入らなかったのはどうかしている。まさか酒場がこんな高尚なシンボルを掲げているとは思いもしなかったし、赤提灯の雰囲気が地下に姿を潜めていたからである。

通されたのはだだっ広いホール、お昼時をかなり過ぎていたせいか客はまばらである。階段を下りたところでこちらのホールに入ったが、その対面にもドアがあり、そちらは閉じられていた。なにか秘密の扉のような趣があるので、多分その奥にメフィストが出没したのであろう。料理はサラダにシチューのようなものを注文したが、味は可もなく不可もなく、ビールの酔いが回るにつれ魂は幻想の世界に彷徨い出た。

最新の画像もっと見る