日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

ボストン・ローガン国際空港で交通渋滞に巻き込まれた時の「プルプル」

2011-04-04 17:54:35 | 海外旅行・海外生活
原子力発電所「Yankee Rowe」の静かな終焉とくらべてで「Bridge of Flowers」を最後に訪れたのが2000年9月であったと述べたが、これはニューイングランド・ドライブ旅行の途上であったのである。

その頃は母を自宅で介護していたが、停年退職した千葉にいる次弟がしばらく母の世話をするからと申し出てくれたので、われわれ夫婦で10日間ほどのドライブ旅行に出かけることにした。弟がわが家にやって来るのと入れ替えに出発して、個人美術館巡りをはじめとしてニューイングランドの風物を満喫した。日ごろの緊張と束縛感からから解放されて思う存分羽を伸ばせたことが、どれほどわあれわれを元気づけてくれたことか、母の最後を自宅で看取る原動力にもなったと言える。この時の旅行のことはほとんで記録していないので、また折に触れてブログにまとめようと思うが、今日取り上げるのはそのドライブ旅行の最後の最後に経験した貴重な?体験談なのである。

到着したボストン・ローガン国際空港でレンタカーを借り、ドライブ旅行を終えた後もローガン空港で車を返却してニューヨーク行きの飛行機に乗る予定だった。そしてその日、少しゆとりをもって空港に到着するつもりだったが、高速道路で思いがけず時間を取って空港の近くにたどり着いた時は夕方の5時ごろであったと思うが、渋滞で車が動かなくなったのである。次から次へと何本もの道路が合流するものだからほとんど動かない。動いたとしても文字どおり一寸刻みである。そしてまた止まる。飛行機の時間は夜遅くなので慌てなかったが困ったことに尿意を催しだした。もちろんトイレがどこにあるかも分からないし、分かったとしてもこの渋滞をかいくぐってそこまで行くのは不可能である。最初はなんとかなるさと鷹揚にかまえていたが、時間が経つにつれて真剣に考えざるを得ない羽目に陥った。いよいよ「プルプル」の出番である。これまでも旅行の際は持ち歩いていたが使ったことはなかった。その使い初めである。助手席の妻にそれを取り出させ、外を向いているように厳命して車が動かないのを幸いに、ハンドルから手を離してなんとか用を足すことが出来た。渋滞ならではの芸当である。あまりの心地よさに、つい目のあった隣の車の女性に微笑みかけてしまった覚えがある。その「プルプル」の片割れが残っていたのでお目にかける。


200円の値札を見ると当時京都河原町通りにあった丸善で買ったのであろう。この袋の中に粉末剤が入っていて水分を吸収すると膨潤して固体状になるのである。燃えるゴミとして処理出来るとのことだったので、レンタカーを返却するときにゴミ箱に捨てて一巻の終わりとなった。ここまでくるとなぜ私がこの話を持ち出したかはお分かりいただけよう。そう、この記事をご覧あれ。

投入したポリマーって? 水吸い膨らむ粉、おむつにも

 福島第一原発2号機の取水口付近にある作業用の穴(ピット)の亀裂から出ている汚染水を止めるため、東電は3日に、化学物質ポリマー(吸水樹脂)を上流に投入した。水を吸い込んで膨らむ物質だ。紙おむつや保冷剤、園芸用の保水材、携帯用トイレなどにも使われている。

 ポリマーは水がないときは体積が小さくさらさらとした粉状だ。一方、水を含むと風船のようにふくらみ中に水を蓄える。水をぐんぐん吸い込みゼリーのようになり固まる。水を吸うと元の粉の体積の20倍、重さは70倍になるという。

 3日には8キログラム分のポリマーのほかに、水を含ませてかさを増させるため、おがくず60キロや新聞紙なども投入した。
(asahi.com 2011年4月4日0時29分)

原発ピットの亀裂を防ぐためにこの吸水性の粉末剤を使ったというニュースから連想したのである。ただ亀裂をふせぐという目的から考えるとその効果について私は懐疑的なのである。というのも製品の性質が公表されていないので同じかどうか分からないが、似たような粉末剤を私はかって実験に使っていたからである。

商品名をSephadex(セファデックス)といったが、この粉末剤も水を吸収すると膨潤する。これをゲルと呼ぶが、底に溶融ガラス製の円形篩板で封じたガラスの細長い筒(これをカラムという)に積めて、何種類ものタンパク質を含んだ溶液を注ぎ入れると水分だけは下に流れてタンパク質がゲルに吸着して残る。そこで適当な展開液を上から流すとタンパク質の分子量に応じて大きなものほど先に下から流れ出てくる。このようにして分子量の異なるタンパク質が分離されるのであるが、この技術をゲルろ過クロマトグラフィーと呼んでいる。生化学実験に欠かせない手法なのである。

この粉末剤は水分を吸収すると膨潤して固形状になる、と述べたが、決して板やレンガのような硬い固形体になるのではない。明太子を想像して頂くとよいかと思う。小さな卵一粒一粒が水で膨潤した粉末粒子に相当すると思えばよい。粒子同士が接着しているわけでもないので型に填めるのならともかく、それだけで形のある構造体を作れない。だからちょっとした水流で流されてしまうだろう。また上のカラムも実はゲルの詰め物を通って水分が通過していく。その性質を利用出来るからこそのクロマトグラフィーなのである。だからかりにこの材料で亀裂を塞いだとしても少しの水圧で水分は容易に通過していく。これでは水の漏れを止めることはできない。

これはあくまでも私の現役時代の経験に基づく推測であるが、恐らく実情は大きくはかけ離れていないだろう。それよりも強力な磁力を帯びた2枚の鉄板で亀裂を挟み込めばその方が効果的なのではなかろうか。東京電力のすることなす事、口を挟むのも詮方ないこと思いながら、また口を出してしまった。





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