日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

これは嬉しいユーチューブ

2008-04-09 15:45:53 | 学問・教育・研究

京都大学が「ユーチューブ」で授業映像などの公開を始めたとの朝日朝刊の記事を見て、早速「KYOTO-U OPEN COURSEWARE」にアクセスしてみた。「Playlists」を開いてみるとすでに数多くのビデオが登録されている。そのなかに「湯川秀樹・朝永振一郎生誕百年記念」という京大基礎物理研究所長 九後太一教授の講演があった。最近、小沼通二編「湯川秀樹日記」を読んだことでもあるので、この話を聴いてみた。

演題は「湯川理論から朝永くりこみ理論、そして標準理論へ」で、講演が三本のビデオに収められている。それぞれの録画時間が一般投稿の制限時間10分を遙かに超えた50分強である上に、最初のビデオを再生し終わったかなと思ったら、自動的に二本目の再生に入っていた。なんとも便利なことである。最初のビデオでは湯川理論の解説がされており、学生に戻った気分で話を聴かせていただいた。

湯川さんの中間子理論が、中性子と陽子を結びつける核力の源として、電子の200倍の質量をもつ粒子の存在を予言したことにある、と言うようなことを九後さんの話から理解できたように思う。かなり一般的な聴衆を対象とされたのだろうか、簡明な話しぶりで分かりやすく、さらに湯川さんがいかに強運の科学者であったか、というようなゴシップめいた話も面白かった。なんせ学位論文でもあった1935年発表の第一論文が、2年後には世界的に注目されることになり、早くも1940年には学士院賞恩賜賞を、1943年にはまだ予言した粒子が発見もされていないのに文化勲章を貰ったというだけでも異例である。そして1947年に予言通りの粒子、パイ中間子が発見されて、それが1949年のノーベル物理学賞につながったと言うのだから、確かに運の強いお方であったと頷いてしまう。それにしてもこのような話まで「ユーチューブ」聴けるとは、なんと有難いご時世なんだろう。

こうした講演を「ユーチューブ」というメディアを通じて公開するとの発想がこれまた嬉しい。頭をシャキッとさせたくなったら、このサイトを訪ねるつもりだ。実は九後さんの講演もノートを取りながら聴いたのである。勉強した気分にさせられるのも実によい。これからますますライブラリーの内容を充実させていただきたいものである。

ただ、全般的に映像の出来が良くないのが気になった。多分スライドを示しながら話をされたのを撮影したのであろうが、画面がほとんど真っ暗で、暗闇の洞穴をこうもりが舞っているような映像が多かった。熱のこもった演者の講演に応える意味でもテレビ局顔負けの機材を揃え、撮影もプロはだしの人材を動員していただけたらと思う。


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