日々是好日

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天晴れ偽『医師』の快挙?

2005-12-06 21:23:39 | 社会・政治
偽医者8年、20カ所勤務 33歳の男逮捕 (共同通信) - goo ニュース

『立派な』偽医師がいたものである。医学教育を受けたわけでもなく定時制高校中退の経歴を持つ男性が医師免許証を偽造して8年間にわたり20カ所の医療機関で医師として働いていたそうである。私は騙された医療機関が100%悪いと思だけにこの『医師』をあまり責める気になれない。

病院などの医療機関が医師採用に当たって資格の有無を厳密に調査しておればこういう問題の起こるはずがない。それが関門をパスしたのが20カ所に及ぶとあっては何をか言わんやである。そのうえ医療機関は偽医師を雇い入れることで患者をも騙しているのだから併せて200%悪いとも云える。偽造構造設計を見逃してきた審査検査機関も唖然とするぐらいの大失態である。

それにしてもこの偽医師は私の好奇心を大いに刺激する。どのような診療行為をしていたのだろう。早い話がカルテなどどのように書き込んでいたのだろう。当然保険診療手続きなどで医療事務担当者の目に触れるであろうから、そこで不審を抱かれることが無かったのだろうか。

まさか外科手術などを行っていないと思うが診療科がどの領域にわたっていたのだろうか。それなりの処置を患者に施したのではと思うが注射や採血などを自分でやっていたのだろうか。それとも全てを看護師に任せていたのだろうか。またそうした日常の医療行為に看護師などが不審を抱くことがなかったのだろうか。周りの正規の免状を持った医師が何か異常に気がつかなかったのだろうか。最後を看取った患者がいるのだろうか。となると死亡診断書も書いをてそれで火葬なども行われたのだろうか。疑問は膨らむ一方である。

患者の反応はどうだったのだろう。患者から何らかかのクレームでも出されたことがあるのだろうか。8年間も『医者』を続けてこられたという事実から私は逆に患者には評判が良かったのではなかろうかと想像する。

8年の年月は重い。医学部での修業期間は6年にしか過ぎないからそれを上回っている。この『医者』は連日生身の患者を相手に研鑽を重ねたことだろうから医学の要諦を医学生以上に会得していたのかも知れない。

司法取引という制度が日本にも欲しいと思うのはこのような場合である。彼を単純に医師法違反などで処罰するのは勿体なさすぎる。確かに彼は法を侵したかも知れないが現実には患者を人助けしているのであろう。実質的に責められるところは無いのではないか。それより医療現場での数々の問題点を明らかにしまたそれを解決するなど取引をすることによって彼の体験を医療現場の改善に生かす方が遙かに社会には有用である。

ここで一例だけを取り上げよう。

彼の社会への一つの大きな貢献は『医師免許証』という『神聖な公文書』が年間2000万円も生み出す打出の小槌であることを示したことである。彼は傷口を縫い合わせることぐらいはしたかも知れないが、高度の手術をすることもなくただただ患者の相手となって「お大事に、すぐによくなりますよ」と励ますことに終始したのではなかろうか。私に云わせればこれは極めて理にかなっているのである。そもそも疾病の治癒力は患者の心身に備わっているもので、医者はその手助けをするに過ぎない。例外的に『切った貼った』も役立つだろうが風邪を例に取るまでもなく治癒力はあくまでも患者に備わっているのである。彼はそのことを実証したのではなかろうか。

心身の治癒力を手助けするだけなのに『医師免許証』があるというだけで年間2000万円の収入は多すぎると思うのが常識、これは稼ぎすぎである。不当利益であると思うからこそ必死に医師会などがその既得権益を守ろうとするのではないだろうか。これでは『やくざ』も顔負けである。

高齢者の医療費負担が大きな社会問題になっている。医療費高騰は確かに深刻であるが、入るを計る前に出るを制するのが焦眉の急であることは誰しも認めること。高齢者の負担を求めるに先立って医者の診療報酬を大幅に削減すべきである。なぜなら診療報酬の大部分が『医師免許証』という『神聖な公文書』のお墨付き料に過ぎないからだ。報酬ダウンでは医者になる気がしない、というのであるのならとっとと辞めていただいて結構。偏差値が異常に高いわけではないごく普通の、人の痛みを解する医者を目指す心優しい医学生が必ずその穴を埋めてくれるから何も心配することはない。

世間的にはいわばずぶの素人が『医師免許証』を振りかざすだけで年間2000万円の収入を得たことの意味、それをあらためて考えさせるこの偽『医師』の行為はそれなりの快(怪)挙と云えるのかもしれない。