日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

「十八代目中村勘三郎襲名披露五月大歌舞伎」一幕見席にたどりつくまで

2005-05-31 13:09:01 | 旅行・ぶらぶら歩き
昨年11月、東京に遊びに出かけた折りに、たまたま歌舞伎座の前を通りかかった。「吉例顔見世大歌舞伎」がかかっており、人の行列が目に入った。よく見ると「一幕見席」というのがあって、そのチケットの売り出しを並んで待っているのだ。歌舞伎座の四階が全席自由席で、各演目ごとに開演の直前にチケットが売り出されるらしい。だから早めに並びさえすれば必ず観劇できることになる。これは有難いシステムだなと思い、その日は夜の部の「廓文章」を観ることにした。

発売開始の1時間ぐらい前には舞い戻ってきた甲斐があって行列は一番乗り。お陰で4階中央の前列の席に座ることができた。まさに天井桟敷。ところがいざ幕が上がると舞台全体を俯瞰できてすべての動きが目に入るのがなかなかいい。科白もよく通るし役者姿の小さいことだけを我慢すれば観劇になんの支障もない。気楽に鴈治郎、雀右衛門の「廓文章」を楽しむことが出来た。

今回は浅間温泉での高校のクラス会の後、東京に遊びに出ることにした。第一の狙いは歌舞伎座の「一幕見席」である。前もってインターネットで調べると、なんと勘三郎の襲名披露狂言がかかっている。しかし私が東京に着く翌27日が千秋楽なのである。一日のチャンスを絶対逃すわけにはいかない。27日の朝、宿を後にして歌舞伎座に向かった。昼の部の最後四幕目の「梅雨小袖昔八丈」か夜の部の最後「野田版研辰の討たれ」が狙いである。「梅雨小袖昔八丈」の売り出しが13:30からなので少々早いかなと思いつつ歌舞伎座に着いたのが10時半頃、ところが早くも長い行列が出来ている。その後尾に「夜の部 四階一幕見列 最後尾」の掲示板を手にした法被姿が立っているではないか。「夜の部」は即諦めた。残るは「昼の部」である。



嬉しいことに「昼の部」の行列は三幕目の「弥栄芝居賑」のためのもので、狙いの四幕目はまだ人がいない。ということを係員に確かめてまだ時間があるので早めの昼食を角のPRONTO東銀座店で済ませた。四幕目の先頭になることを期待して歌舞伎座に戻ってきた。念のため何処に並んだらいいかを係員に尋ねると、三幕目の行列の中に一緒に入って、チケットの売り出しが始まったら四幕目ということで新たな行列を作ればいいとのこと。そこで指示に従った。

チケットの売り出しが始まった。列が進むにつれて横に退く人がいる。四幕目への列ができはじめて、早いと思っていた私は辛うじて10番ぐらいになった。次の発売開始までまだまだ待たないといけない。そのうちに「座れる」「座れない」なんて話し声が耳に入り出した。先頭10人までぐらいだったらいいとかどうとか。いったいどういうことだろう、とちょっと不安になった。そして私の勝手な思い違いを悟ることになったのである。

私の思い込みではこうであった。四階自由席は各幕ごとに全席入れ替えなので、行列でその座席数分にはいっておれば必ず座れると。ところがそうでは無かったのである。三幕目のチケットの購入者の中には次の四幕のチケットを連続購入した人がいた。そのうえ既に入場している一幕見席の観客で、上で次の幕へのチケットを買い足しする人も居るとか。
そういうことを私は知らなかった。係員に行列のことで聞いた時に、三幕目と四幕目を引き続いてチケットが買えることを何故教えてくれなかったのだろう、と思ったのも後の祭り。さあ、座って観劇できるのかどうか心配になった。三幕目が終わり階段を下りてくる観客の数も思いなしか少ない。そしていよいよチケットの発売開始。席はほとんど空いていないから立ち見をご了承願います、との無情のアナウンスにガックリときた。

四階席に足を踏み入れる。入り口のすぐ前の端席が一つだけ空いている。空席!躊躇無く腰を下ろした。落ち着いて周りを見わたすと空席もある程度散在していたようだ。しかし後ろの手すりにもたれざるをえない人もかなり目立った。

そしていよいよ「梅雨小袖昔八丈」の開幕。勘三郎の小気味よい「髪結い新三」に『不良熟年』を重ね合わせてみたり、自分勝手な楽しみ方で大いに堪能した。でもその筋書きなどを述べるのは私の任ではないので話はこれでお終い。