星のひとかけ

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メスキータ展 東京ステーションギャラリー

2019-08-16 | アートにまつわるあれこれ


東京ステーションギャラリーでの「メスキータ展」 18日までです。 先週末に行って来ました。

メスキータ展のことは 5月に行った目黒美術館での 「世紀末ウィーンのグラフィック」展(>>) で知りました。 時代がほぼ重なっていて クリムトらのウィーン分離派、 一方 メスキータはオランダの画家、版画家、デザイナー。 今回は日本初の回顧展になります。 このようにひとりのアーティストをまとめて紹介する回顧展はめったに機会が無いので ぜひ行きたいと思っていたのです。

東京ステーションギャラリー メスキータ展>>

美術手帖 エッシャーが命懸けで守った画家、メスキータとは何者か?>>


↑こちらのコピーにある「エッシャーが命懸けで守った」という文言に導かれて、 エッシャー経由で関心を持った若い方が多いようでした。 エッシャーは、 メスキータが教師をしていた美術学校の教え子だそうです。 でも、 《命懸けで守った》のはメスキータの作品の数々で、 ユダヤ人であるメスキータの命を守ることは出来ませんでした。 1944年、 オランダを占領していたゲシュタポに連行され メスキータは妻や息子ともども アウシュヴィッツで殺されます。

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上のリンク先の図像でも メスキータの代表的な版画作品が見られますが、 エッチング、 木版、 油彩、 素描、などある中で、 やはり 木版のインパクトは圧倒的でした。

輪郭線を彫らずに 丸刃の彫り線の太さや間隔や密度によって、 人の肉体の凹凸や丸みを創りだしたり、 顔の表情や陰影も彫り線だけで表わすテクニックの見事さ。 
「うつむく女」のように、 まるで切り絵のように 最小限の白と黒のラインで表情から 感情まで表現するインパクト。 これは一度見たら記憶に強烈に焼き付けられますね。。

メスキータは 装飾デザインや本の装丁などもやっていたようですが、 アール・ヌーボーからロシア・アバンギャルドに繋がっていく モダンでシンプルで洗練されたデザイン感覚も、 版画作品ならではの研ぎ澄まされた魅力がありました。

特に、 「ウェンディンゲン」という 建築と美術の統合をめざした芸術誌の表紙を手掛けたものは、 正方形という本の形や 日本の和綴じを採用した装丁もモダンで、 この古書がもしあったら手に入れてみたいなぁ… とすごく素敵な本のかずかずでした。。
「wendingen mesquita」で画像検索すると たくさん見られますので、 その美しいデザインをぜひ見てみて。。


一方、 版画ではなく ドローイング作品になると、 不思議とルドンのような幻想性のある作品が多く、 削ることでいろんなものを削ぎ落して凝縮していく版画と、 イマジネーションのままに心理描写を膨らませていくドローイングとの その違いもまた面白く感じました。

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今回の「メスキータ展」 評判もすごくて、 図録も当初は通販の受付をしていたのですが、 申し込みが多すぎて 途中から来館者のみへの販売になったのですよね。 私もいつ観に行こうか、 迷っていてツイートなどを検索してみたら、 グッズの絵葉書なども売り切れが出ていたりして、、 ほんとに人気が高いのだなぁと思っていました。

先週末出かけた折には 絵葉書も全部そろっていたし、 Tシャツやノートやマスキングテープとかのグッズも あの独特の版画作品のデザインなので どれもカッコ良くて…
、、印象派展とかではまず買うことはないTシャツ、、 今回は買ってしまいました。 このインパクトある若者の顔は、 メスキータの息子ヤープだそうです。


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メスキータからはちょっと脱線しますけど、、
先日まで読んでいた ロバート・ゴダードのミステリ 1919年三部作(>>)、、 最後の『宿命の地』は日本が舞台で、 英国の諜報員や ドイツのスパイや 日本の特高警察などが 丸の内や銀座や新橋などに出没して、 東京駅や東京ステーションホテルや いろんな現実の場所がいっぱい登場するのです。。

そんな百年前のただずまいを残したステーションホテルや ステーションギャラリーという場所で、 ふたつの大戦にはさまれた百年前に活動し、 そしてアウシュヴィッツで命を落としたメスキータや その作品を命懸けで守ったエッシャーに想いを馳せる… 

先日も書きましたけれど、 百年前は決して過去として忘れ去られるものではなく、 現在へと繋がっている、、。 時代がどう揺れ動き、 人々がどんなふうに巻き込まれ 引きずられていったのか、、 そして そんな時代のさなかでも どんなふうに芸術や音楽や文学は生まれていったのか、、

しばらく そのことを考えていたいと、 そんなふうにも思っています。



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